第78回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成23年5月27日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
 (茨城県つくば市竹園2丁目-20-5)
 [交通案内 (研究交流センター)
  ※敷地内北側に駐車場があります]
 tel. 029-851-1331
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1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 第17回藤崎優次郎賞授賞式、受賞記念講演 (13:30~14:00)                                         座長:津田知幸(動衛研)  
                                                                                出口栄三郎 (鹿児島大学)
3. 演 題
高病原性豚繁殖・呼吸障害症候群(Highly pathogenic PRRS) (14:00~14:30)                        座長:矢原芳博(日清丸紅飼料)
高木道浩、井関 博、川嶌健司、芝原友幸、恒光 裕 (動物衛生研究所)
 2006年、中国において高熱を主徴とし、どの発育ステージにおいても高致死率を示す豚疾病が発生した。当初は、“Pig high fever disease”と呼ばれ、中国国内で瞬く間に流行して40万頭以上が死亡したと報告された。その後、本疾病の罹患豚よりPRRSウイルスが分離されたことから高病原性PRRSと呼ばれるようになった。2007年以降、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ラオス、タイでも同様の発生が報告されている。我が国では現在まで発生は確認されていないが、侵入防止のため国際的な監視活動が必要である。本講演では、高病原性PRRSの概要、JICAプロジェクトによるベトナムでのPRRS調査および感染実験の成績を紹介する。

備蓄用口蹄疫ワクチン等の選定ー使用の流れについて (14:30~15:00)                                座長:深井克彦(動衛研)
石丸雅敏(動物医薬品検査所)
                                                                            
 我が国において口蹄疫が発生した場合の防疫措置の一環として農林水産省は口蹄疫不活化ワクチンについては30年余、不活化濃縮抗原(いわゆるワクチンバンク)については平成14年から継続して備蓄している。この備蓄用ワクチン等の選定にあたっては、毎年度「口蹄疫予防液備蓄検討会」を開催し、ワクチンの備蓄状況、国外での発生状況、我が国への畜水産物の輸入状況等を検討の上、購入することとしており、さらに購入するワクチン等については、製造所への立入調査を実施、国内検査を行うことによりその品質確保がなされる仕組みとなっている。本発表ではその概要を説明するとともに、使用に関し2010年4月に発生した宮崎県での対応措置として初めてのワクチン接種決定に至るまでの対応を紹介する。

[休憩  15:00~15:15]

オーエスキー病清浄化について(15:15~16:30)                                                座長:鈴木 亨(動衛研)                                                                                               
①オーエスキー病の清浄化対策について(15:15~15:45)
山本健久(農水省消費・安全局動物衛生課)
 豚の伝染性疾病対策において、オーエスキー病は豚コレラに次いで重要な伝染病であるといえる。豚コレラについては、強力なワクチンを用いて清浄化が進められた結果、平成19年には国際的にも清浄国として認定された。一方、オーエスキー病については、平成3年に「オーエスキー病防疫対策要領」が策定され清浄化対策が開始された。オーエスキー病の清浄化にあたっては、病原体の特性やワクチンの効果など、豚コレラとは異なる点がいくつかあるため、このことを踏まえて対策を進める必要がある。ここでは、現在実施されている清浄化の戦略とこれまでの進捗状況などについて紹介したい。

②茨城県鹿行管内におけるオーエスキー病清浄化対策取組状況(15:45~16:15)

都筑智子、榊原裕二、佐野元彦(茨城県鹿行家畜保健衛生所)
 茨城県はオーエスキー病浸潤県であり,特に鹿行家保管内は養豚密集地域であることから、その清浄化対策に長年苦慮し、いわばオーエスキー病と共存してきた実態があった。しかし、管内生産者の意向をきっかけに、平成19年度から、生産者と共にオーエスキー病清浄化対策に取り組み、その後、平成20年のオーエスキー病防疫対策要領の改正に伴い、県内全域新体制下でオーエスキー病清浄化対策を進めてきた。取組みを開始して4年、未だオーエスキー病清浄化達成には至らないものの、この数年でオーエスキー病清浄化の兆しが少し見え始めてきたので、本発表会では現状とその取組状況を紹介する。

③総合討論(16:15~16:30)
第5回APVS(タイ)の報告((16:30~16:50)                                                     座長:宗田 吉広(動衛研)
鈴木 亨(動物衛生研究所)
 第5回APVSが3月7日から9日にかけてタイ国パタヤ市で開かれました。日本、中国、韓国、フィリピン、ベトナム、タイなど23カ国の豚産業に関わる産学官有識者(総勢約850人)が一堂に会して、アジアにおける豚産業の更なる発展に向けた研究・開発について活発な議論を行いました。タイ国農林大臣の挨拶に始まり、アジア各国の豚産業を取り巻く現状の報告へと続いて、最終的に3日間でシンポジウム計6題、ワークショップ計2題、口頭発表計73題、ポスター発表計147題という数字が表すように多くの話題・問題が提起され、連日朝早くから夜遅くまで討議をかわす密度・内容ともに充実したプログラムでした。また、学会あるいは参画企業主催のディナーやサテライトシンポジウムも連日にわたって開催され、各国の方々と交流を深めるあるいはタイ国の文化を堪能し、頭を休める機会も用意されていました。そんな大盛況の上に閉会した本学会について報告します。                           
閉会(16:50~17:00) 
   研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
         ~懇親会について~
       時 間:17:30~19:30
       場 所:レストラン エスポワール(つくば国際会議場内); 研究集会会場より徒歩 約10分
            〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3  TEL:029-850-3266
        http://www.epochal.or.jp/access/index.html
        会 費:4,000円

第77回日本豚病研究会・平成22年度日本豚病臨床研究会・平成22年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会は終了いたしました。

第77回日本豚病研究会・平成22年度日本豚病臨床研究会・
平成22年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会を下記の要領で開催いたしました。
 

事務局:日本豚病研究会事務局(動物衛生研究所内)
Tel./Fax. : 029-838-7745
e-mail:tonbyou@ml.affrc.go.jp

日 時: 平成22年11月22日(月) 9:00~17:00
      
場 所: つくば国際会議場(エポカルつくば)大ホール [http://www.epochal.or.jp/access/index.html]
 〒茨城県つくば市竹園2-20-3  
 Tel. 029-861-0001 Fax. 029-861-1209
研究集会参加費:会員・学生は無料です (会員の年会費は1500円です)。
            非会員は1500円です(当日受付で参加費1500円を納入してください)。
           (非会員の方は事前申し込みなくても大丈夫です。) 
駐車場のご案内:
南4A駐車場 をご利用ください。研究会受付で、サービス券(1日券 609円、1時間券 135円)を販売します。駐車場を出るときにその券で精算してください。
日  程
開 会(9:00~9:15)
 
シンポジウム 2010年 宮崎で発生した口蹄疫について(9:15~10:45)
  座長:吉田和生・深井克彦(動衛研)

口蹄疫発生に伴う諸問題と再建への取組みについて

志賀 明((有)シガスワインクリニック)

4月20日に宮崎県児湯郡都農町で発生報告された口蹄疫は、隣町の川南町を中心に4市6町で約29万頭もの多くの殺処分を余儀なくされた。殺処分や消毒等に加え、初めての口蹄疫ワクチンの使用等の懸命な防疫措置によって初発生報告から4ヵ月余後の8月27日に終息宣言が出された。今回の口蹄疫は宮崎県中部の有数の畜産密集地域での発生で、また国内初の豚での発生もあり、感染が爆発的に広がり、被害は甚大なものとなった。一方、初動防疫や殺処分体制、防疫措置等において様々な問題点が浮き彫りになった。今回、発生の状況や防疫措置の諸問題、また感染爆発の要因等を考察するとともに、牛と豚が1頭もいなくなった児湯地域の地域ぐるみでの養豚の再建への取り組み等についてその概要を報告する。 

宮崎県で発生した口蹄疫発生状況を追って
廣瀬和彦(明治製菓(株))

2010年4月20日に宮崎県で発生した口蹄疫の発生拡大状況を日々農場毎、畜種別に地図上にスポット・マップにてプロットし、更に気象庁による風速・風向情報も書き加えた資料について紹介する。日々の発生状況に影響する要因についてそれら資料を元に現地滞在中に意見交換したことや更にGoogle Map(写真)を拡大印刷し、そこにもスポット・マップにて発生農場をプロットし、地形の影響についても検討を試みた。スポット・マップは「疫学の父」と呼ばれるジョン・スノウ(1813~1858)が用いた古くからの方法であるが、全体の動きを知るには非常に有効な方法であった。

渦中からみた防疫業務–教訓として活かすために                                                             
                                                                             末吉益雄(宮崎大学)                                                                               

今回の口蹄疫防疫対策業務では、当学本部、県本部、新富町本部、家保での病性鑑定班、発生地での患畜殺処分班、農水の疫学調査班および堆肥モニタリング班に身を置き活動した。8月27日の終息宣言後も、動物慰霊祭、各種報告会、防疫演習などに参加した。それらの渦中からみて、今回の防疫経験を教訓として活かすためには省庁間連携(農水、厚労、防衛、警察、国運、文科など)、獣医組織連携(県、NOSAI、開業、大学、獣医師会など)、畜産・獣医連携(JA、商系)、牛・豚飼育連携などの組織力の強化が必要と考えられた。現在、眼前の現地産業復興、発生地周辺の家畜診療業務の防疫などについて活動している。

[休憩 10:45~11:00]
ワークショップ1  養豚におけるアニマルウェルフェア(11:00~12:05)
 座長:佐藤真澄(動衛研)

アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針について

菅谷公平(農林水産省生産局畜産振興課)

 欧州においては、1960年代に、密飼い等の近代的な畜産のあり方についてその問題点が提起され、英国で提唱された「5つの自由」を中心に“Animal Welfare”の概念が普及し、現在ではEU指令として、“Animal Welfare”に基づく飼養管理の方法等が規定されている。また、国際獣疫事務局(OIE)においても、アニマルウェルフェアに関する基準(ガイドライン)の検討が始まり、2005年には輸送やと畜に関するガイドラインが策定され、現在、畜舎や飼養管理に関するガイドラインの検討が進められている。
 一方で、我が国において、経済のグローバル化による輸入畜産物の増加に対応しつつ、消費者のニーズに合った安全・安心な国産畜産物を供給することにより、今後とも畜産が安定的に発展していくためには、家畜の生産性の向上を図っていくことが重要な課題である。家畜の管理を行う上で、アニマルウェルフェアに対応し、家畜を快適な環境で飼うことは、家畜が健康であることによる安全・安心な畜産物の生産につながり、また、家畜の持っている能力を最大限に発揮することにより、生産性の向上にも結びつくものと考えられる。 
 本発表では、海外のアニマルウェルフェアをめぐる状況とともに、我が国においてとりまとめられた「アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針」の概要について報告する。

豚のストレスと異常行動について―尾かじり被害低減について―  
渡邊哲夫1、沼野井憲一1、塚原均2、青山真人3

(1.栃木県畜産試験場、2.栃木県畜産振興課、3.宇都宮大学) 

 豚の異常行動の一つに、同居豚の尾をかじる尾かじり行動がある。この行動はストレスによって起こるとされている。尾かじりが起こると、発育遅延や、噛み傷から侵入した細菌等による感染症の発生など、養豚経営に対し悪影響を及ぼす。
 今回の研究はストレスを低減するような飼養管理法を確立することを目的としている。その中で、まずはストレスと関連があるとされている尾かじり行動に着目し、尾かじりの被害を低減する方法について検討を行った。

豚の非侵襲的ストレスマーカーの確立を目指して                                                                  
宗田吉広((独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)

 昨年3月に、(社)畜術協会により、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」が示された。この指針では「アニマルウェルフェア」を「快適性に配慮した家畜の飼養管理」と定義しており、家畜への不要なストレスを避け、家畜を快適な環境下で飼養することが求められるため、家畜のストレスを科学的かつ定量的に評価する手法の開発や確立が望まれる。そこで、我々は豚における非侵襲的なストレス測定法の開発およびそのストレスマーカーの開発を目指し、豚の急性ストレスである拘束ストレスをモデルとして、唾液中のサイトカイン等についてストレスマーカーとしての有用性の検討を行った。また現在、農研機構・交付金プロジェクト研究「健全性・収益性両立型養豚のための技術開発」で行っている研究課題についてもその概要を紹介する。

[昼休み(幹事会) 12:05~13:30]
ワークショップ2 豚コクシジウム症と新たな薬剤(13:30~14:15)
   座長:末吉益雄(宮崎大)

豚コクシジウム症総論
志村亀夫((独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)

 豚を終宿主(固有宿主)として寄生するコクシジウムには、Eimeria属、Isospora属およびCryptosporidium属のものがあり、中間宿主とするものにトキソプラズマ、ネオスポラ、サルコシスティスがある。従来、豚を終宿主とするコクシジウムの病原性については、様々な議論があったが、近年その中のIsospora suis感染による哺乳豚の下痢症が問題となってきた。わが国でも1970年代には既に発生の報告があり、その後散発的に症例が報告されてきた。しかし、本感染症は、オオシストが糞便中に出現する以前に感染豚が死亡することあり、診断が難しいことから養豚現場では本病への関心が低かった。最近、本病に対して有効な薬剤が発売され、現場においてその重要性が認識されるようになった。ここでは、I. suis感染症を中心に豚のコクシジウム症について解説する。 

新しく承認された薬剤の野外評価
島田隆男(千葉県農業共済組合連合会北部家畜診療所)

哺乳豚のIsospora suisによるコクシジウム病に対するトルトラズリルの有効性を野外で検討した。I.suisの重度浸潤が認められた3養豚場、計15頭の母豚から出生した0~5日齢の哺乳豚153頭を同腹単位で1対1の割合で2群に分け、投薬群は試験薬剤トルトラズリルを20㎎/㎏単回強制経口投与した。無処置群では67.7%が発症したのに対して、投薬群では発症は認められなかった。異常便の排泄頻度は、投薬群で27.1%、無処置群で82.4%と処置群が有意(p<0.05)に低かった。投薬後7~14日の1日平均増体量は投与群229.87±63.45g、対照群195.16±77.02gで群間に有意差(p<0.05)が認められた。以上の結果から、哺乳豚にトルトラズリルを20mg/kg単回経口投与することは、投与後2週間にわたりコクシジウム病の発生の防御に有効であることが示された。                                                           ワークショップ3  生産衛生管理の高度化(14:15~14:55) 座長:石川弘道(サミットベテリナリーサービス) 2009年JASVベンチマーキング結果 伊藤 貢((有)あかばね動物クリニック) JASVでは、2004年から正会員のコンサルタント先の生産データを元に毎年集計事業を実施している。2009年の、平均母豚飼養頭数は534頭(中間値265頭)、平均枝肉単価378円、平均飼料単価は45.0円、平均FCRは3.38、平均年間出荷頭数は20.6頭、ワクチンと抗生物質費は1,597円、離乳後事故率6.6%であった。   一方、PRRS陰性農場の成績は、平均出荷頭数は23.0 頭、ワクチン衛生費は808円、事故率は5.1%で、PRRSウイルスによる被害が、大きいことが再確認された。   この事業は、6年目を迎え、多くのデータが集積されてきている。今年は、宮崎での口蹄疫の影響を受けて、参加農場が減ったが、今後も継続することにより、日本の養豚の現状と変化を把握できるような指標となるよう、今後も事業に進めて行きたい。 養豚場における農場HACCPの取り組み                                      古市朋大((有)豊浦獣医科クリニック) 食の安全・安心に対する国民の関心が高まり、農林水産省は「農場生産衛生管理技術等向上対策事業」において農場HACCP認証基準の策定やHACCPを活用した衛生管理の普及・啓発を行っている。フードチェーンの最初の段階である生産現場(養豚場)での生産物(豚肉)の安全性確保のため、農場HACCPでは生産者自らがHACCP方式を活用した衛生管理に取り組む事で豚肉の危害を管理し予防する。演者らは数年前から農場HACCPの前提条件でもある健康な豚を育てるための一般的衛生管理プログラムの構築と、HACCP導入を同時進行で整備してきている。多くの養豚場が農場HACCPに取り組み易いようにソフト面の整備とPDCAサイクルによる発展型を特徴とした取り組みをしているので、その概要を紹介する。                                                                                      [休 憩 14:55~15:10] ワークショップ4 細菌による常在性疾病の現状(15:10~16:10) 座長:中村高志(豊浦獣医科クリニック) 北東北で確認された豚丹毒について 岡村雄司(おかむらアニマルクリニック) 豚丹毒は以前、多くの農場ではワクチン接種が実施されておりほぼ制圧されていた疾病であったが、近年はワクチン非接種農場の増加により散発的に確認されるようになっていた。平成21年後半から22年前半にかけて、当方が巡回する北東北の養豚場やその周辺農場において豚丹毒の発生が集中し、ワクチン接種の再開、ワクチンの種類の変更(生から不活化)、接種方法の変更(接種日齢・接種部位)、飼養環境の適正化等により一応の終息を見た。  現在の農場の豚丹毒に対する考え方や対策方法が十分でない部分も多く見られ、これらの認識不足が発生増加の一因にもなっていると考えられるので、臨床獣医師による啓蒙活動も重要になってくると考えられる。  今回は4農場で発生した豚丹毒の発生要因、実際に実施した対応方法、対策中に確認された問題点についてまとめたので報告する。 肥育農場におけるサルモネラ コレラスイスの発生と生産成績および生産コストの変化 吉川康宏(グローバルピッグファーム(株)福島農場) サルモネラ症は長年、豚の消化管と人の食中毒への関与する疾病として、養豚現場を悩ませ続けている。 最近では、豚サーコウイルス2型(PCV2)ワクチンの普及により、呼吸器疾病は減少しているが、消化管疾病は増加しており養豚現場での重要疾病となっている。  本報告では、母豚1200頭規模の肥育農場に発生したサルモネラ コレラスイス症の発生から終息までを、生産成績の変化・細菌および抗体検査・各種対策としてまとめた。更に経済損失額の算出を行い、対策費用対効果および生産コストの変化を中心に報告する。 クライアント養豚場におけるApp15型による豚胸膜肺炎の発生例 渡辺一夫((株)ピグレッツ) 千葉県内のクライアント農場において、豚胸膜肺炎(APP)の罹患豚からApp15型が検出された。2008年App発生8農場のうち10件、2009年12農場のうち2件、2010年(1-6月)7農場のうち5件のApp15型が検出された。症状は活力低下、食欲不振、40℃~41℃の発熱、被毛粗造および肺炎呼吸を呈し、急性ないし慢性の経過をとった。剖検所見は肺に境界明瞭な暗赤色の膨隆・硬化した出血部とその周囲の小葉間水腫が顕著で、免疫染色でAppの抗原が検出された。分離App15型株は多剤感受性であり、特にABPC、XNL、NFLXおよびFPに高い感受性を示し、抗生物質の治療効果は高く、本症の対策は早期発見・早期治療が有効であった。 ワークショップ5 ウイルスによる常在性疾病の現状(16:10~16:50) 座長:恒光 裕(動衛研) 肥育期の豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)症例 江口 修(JAあいち経済連畜産部養豚担当) 豚サ―コウイルス関連疾病(PCVAD)は、一般に離乳後2~4カ月齢の子豚でみられる疾病であるが、出荷直前の肉豚でのPCVAD症例を発表する。2009年末に母豚500頭一貫農場の肉豚舎で出荷直前の肉豚の斃死が多いことから病性鑑定を実施した。リンパ節の腫大、胃潰瘍および胃出血、肺炎、肝炎などの解剖所見および臓器からの遺伝子検出からPCVADと診断した。またサーコ不活化ワクチンを母子ともに取り入れている農場であることから、原因を調査したところ、ワクチン接種の方法や従業員への教育などが表面化され、その対策後、死亡数減少の改善があった。 PRRS抗体保有状況の推移-日本でのPRRS浸潤状況はどう変化したか- 矢原芳博(日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ) 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、この20年以上の間、世界の養豚業界において特別な疾病として存在し続けている。 ここ数年は、豚サーコウイルス2型(PCV2)ワクチンの上市により、豚呼吸器病症候群(PRDC)の影響は軽減されつつあるが、現時点においてもPRRSのコントロールが養豚生産のコスト低減における最重要課題である事には変わりない。  当研究所では1993年より間接蛍光抗体法(IFA)、1998年より固相酵素抗体法(ELISA)により抗体検査を実施しているが、今回は抗体検査開始時より現在までの抗体調査成績の推移をまとめた。この間の抗体陽性率の動向、PCV2ワクチン接種による離乳後事故率低減の前後での抗体保有状況の推移について報告する。    閉 会(16:50~17:00) 〈お知らせ〉 ・研究集会終了後、懇親会 を予定しております。ふるってご参加ください。 懇親会について 時 間: 18:00~20:00             場 所: ホテルグランド東雲 本館有明の間            会 費: 5000円  参加人数把握のため、参加可能な方は、下記どちらかへメールでご連絡ください。  11月10日(水)までにお願い致します。 参加者連絡先: ベネット 中村節子 venet@nifty.com  あるいは   日本豚病研究会事務局 tonbyou@ml.affrc.go.jp   尚、参加は当日も受け付けております。

第76回日本豚病研究会研究集会は中止となりました。

第76回日本豚病研究会研究集会は中止となりました。

日 時: 平成22年5月24日(月) 13:00~17:00(中止します。)
場 所: 東京大学弥生講堂一条ホール [http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/]
(東京都文京区弥生1-1-1、東京大学農学部内)
Tel. 03-5841-8205 Fax. 03-5841-5028
◆◆◆◆◆
第76回日本豚病研究会研究集会中止のお知らせ

  平成22年5月24日(月)東京大学弥生講堂一条ホールにて予定されておりました、第76回日本豚病研究会研究集会を中止することをご連絡致します。
宮崎県 での口蹄疫発生にあたっては、多くの養豚獣医師および関係者がその防疫対応に従事しているところですが、会員の皆様におかれましても防疫に専念していだくために、事務局により研究集会の中止を決定致しました。
 ご出席の準備をされていたところ大変恐縮ではございますが、ご理解いただければ幸いです。  
 秋の研究集会につきましては、あらためて事務局よりご案内致します。

日本豚病研究会会長 柏崎 守

1.定期総会
2.演 題
 1)養豚におけるアニマルウェルフェア(13:15~15:00)座長:佐藤真澄

①アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針について 13:15~13:50
 農林水産省生産局畜産振興課  松本隆志
②豚のストレスと異常行動についてー尾かじり被害低減についてー 13:50~14:25
栃木県畜産試験場  渡邊哲夫
③豚の非侵襲的ストレスマーカーの確立を目指して14:25~15:00
動物衛生研究所宗田吉広
 
  [休 憩 15:00~15:10]

 2)豚コクシジウム症と新たな薬剤(15:10~16:20)座長:末吉益雄

①豚コクシジウム症総論 15:10~15:45
動物衛生研究所志村亀夫
②新しく承認された薬剤の野外評価15:45~16:20
千葉県農業共済組合連合会北部家畜診療所  島田隆男

 3)一般演題(16:20~17:00)  座長:下地善弘

①新生豚における先天性過骨症の発生報告 16:20~16:40 
  ピグレッツ早川結子
②浮腫病由来株の性状  16:40~17:00
沖縄県家畜衛生試験場  又吉正直

  
※研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
研究集会参加費:会員・学生は無料です (会員の年会費は1500円です)。
非会員は1500円です。

第75回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成21年5月22日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
 (茨城県つくば市竹園2丁目-20-5)
 [交通案内 (研究交流センター)
  ※敷地内北側に駐車場があります]
 tel. 029-851-1331
1. 定期総会 (13:00~13:15)
2. 第16回藤崎優次郎賞授賞式、受賞記念講演 (13:20~14:00)
 
     (座長)下地 善弘

受賞記念講演
河合 透、牛島稔大 ((財)化学及血清療法研究所)
3. 演 題
    (座長)志賀 明

南九州における豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)とワクチン使用後の効果 (14:00~14:30)
藤原孝彦 (藤原動物病院)
 豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)は全国的に大きな問題になっていた。特に一昨年(2007年)にはその被害は爆発的な広がりとなった。2008年3月にPVC2不活化ワクチンが日本で始めて上市され、被害の集中する地域より使用可能になる。現在では子豚用母豚用あわせ3種類の不活化ワクチンが使用可能となっている。今回養豚密集地域である南九州におけるPCV2ワクチン使用後の現場での反応や生産性の推移を検討したのでその結果を報告する。

農場の病原体にPCV2ワクチンが与えた影響 (14:30~15:00)
金田正彦、岡田宗典、鷺谷敏一、佐々木隆志(全農家畜衛生研究所)
 あるPCVAD発生農場でPCV2ワクチン使用前後の斃死豚からの病原体検出状況を調査したところ、使用前はPCV2、サルモネラ、PRRS、マイコプラズマなど多様な病原体が検出されていたが、使用後はPCV2とサルモネラが検出されなくなった。当所の検査結果集計でもPCV2陽性率(血清、肺)、サルモネラ陽性率(肺)は2008年に減少している。このことから、PCV2ワクチンは的確に使用すれば農場のPCV2だけでなくサルモネラなど一部の病原体の動きに影響を与えることが分かった。しかしながら、PRRSやマイコプラズマなど検査結果に大きな変化が認められない病原体もいることから、PCV2ワクチン接種後も衛生対策の重要性は変わらない。

農場でのPCV2ワクチン接種による血清中ウイルス量の変化 (15:00~15:30)
鈴木孝子1、矢光潤2、 島田隆男2、 芦澤尚義3、伊藤尚志3、佐藤岳彦3、平野和則4、恒光裕1 (1動物衛生研究所 ウイルス病研究チーム、2千葉県農業共済連合会 北部家畜診療所、3千葉県中央家畜保健衛生所、4千葉県海匝農林振興センター)
 3農場において豚サーコウイルス2型(PCV2)関連疾病(PCVAD)の流行前、流行時および子豚用ワクチン使用時の3時点で発育ステージ別血清を採取し、リアルタイムPCR法でPCV2量を測定した。3時点いずれにおいてもPCV2の感染は確認されたが、60-120日齢の血清中PCV2量はPCVAD流行時で高値を示し、ワクチン接種時には流行前のレベル以下に減少した。離乳後事故率は血清中PCV2量と同様の推移を示し、ワクチン接種時には流行前と同程度まで低下した。次に、PCVAD発生が確認されていない1農場でワクチン接種子豚と非接種子豚を継時的に採血し、血清中PCV2量を比較した。その結果、両群とも120日齢でPCV2量は増加したが、接種群のウイルス量は非接種群に比べて極めて低値を示した。これらの結果から、血清中PCV2量の測定はワクチン効果を確認する一指標になることが明らかとなった。

休憩 (15:30~15:40)
(座長)河合 透、津田知幸

豚丹毒菌ワクチンベクターを利用した経口投与型多価ワクチンの開発 (15:40~15:55)
小川洋介1、大石英司2、佐野陽之2、 宗田吉広1、下地善弘1, 3 ( 1動物衛生研究所、2(株)微生物化学研究所、3岐阜大学大学院連合獣医学研究科)
 動物用ワクチンは注射による投与が主流であるが、接種時には1頭ずつ保定しなければならず、多大な労力を必要とする。そこで、最も省力化が期待できる経口投与型の多価ワクチンを開発するため、Mycoplasma hyopneumoniaeの付着因子であるP97蛋白を豚丹毒菌Koganei 65-0.15株の菌体表層に発現させた。この株を人工乳に混ぜSPF豚に給餌後、豚丹毒菌強毒株、ならびに、M. hyopneumoniae強毒株による感染実験を行った。豚丹毒菌攻撃に対して、菌を含まない人工乳を飲ませた対照群は臨床症状を呈したが、免疫群は臨床症状も示さず生存した。さらに、M. hyopneumoniaeによる肺炎の病変形成の割合は、対照群と比較して免疫群では有意に低かった。これらの結果から、P97発現豚丹毒菌の経口投与は、豚丹毒菌および豚マイコプラズマ肺炎に対する防御効果を誘導することが示唆された。

粘膜ワクチンによるブタ浮腫病予防法の開発に向けて (15:55~16:10)
川本恵子1、刈屋晴子1、澤田和敏2、瀧田英司2、松尾健史2、加藤晃2、牧野壮一1 ( 1帯広畜産大学大動物特殊疾病研究センター・食品有害微生物分野、2出光興産株式会社 先進技術研究所 環境・バイオ研究室、3奈良先端科学技術大学院大学)
 ブタ浮腫病(ED, edema disease)は、腸管に定着した志賀毒素産生大腸菌(STEC, Shiga toxin-producing Escherichia coli)の産生する外毒素Stx2eにより引き起こされる毒血症である。離乳後1−2週の子豚で発症し、死亡率が高く、再発や発育不良などにより、生産性の低下を招き、経済的損失も少なくない。浮腫病はここ数年全国的に発生が増加しているが、原因菌の多剤耐性化が報告されるなど、抗生物質に替わる予防法または治療法の早期開発が望まれている。本病のように腸管粘膜が感染の場である疾病の予防法としては、粘膜ワクチンが有望視されており、我々は“食べるワクチン”による豚浮腫病の制御を目指している。今回、最近我々が行った粘膜免疫の豚臨床試験の結果について報告し、ブタ浮腫病粘膜ワクチンの有用性と課題について報告する。

豚における口蹄疫 (16:10~16:30)
大橋 誠一 (動物衛生研究所 国際重要伝染病研究チーム)
 口蹄疫の疫学を考える上で感染動物の疫学的役割を考えることは重要である。牛と豚を比較した場合、牛は豚に比べ十分の一以下の接種量で感染・発症する。しかし、感染豚の排泄量は牛の千倍以上になるといわれている。日本のような飼育密度の高い養豚形態のところで口蹄疫が発生すると、爆発的な感染が起こり、短期間のうちに感染が拡大する。今回は豚に焦点を当てて口蹄疫について概説する。 口蹄疫の発生は畜産だけの問題ではなく、社会や経済に与える影響も大きい。侵入防止、早期発見体制の強化および早期撲滅の実施が迅速かつ正確に実行できるよう日ごろからの防疫活動のシミュレーションを行うことはいざという時に役立つであろう。

豚における抗ウイルス剤による口蹄疫ウイルスの排泄抑制 (16:30~16:45)
深井克彦1、大橋誠一1、小野里洋行1、森岡一樹1、山添麗子1、吉田和生1、坂本研一1、高橋和美2、古田要介2 (1動物衛生研究所 海外病研究施設、 2富山化学工業株式会社 綜合研究所)
 豚が口蹄疫ウイルスに感染した場合、その排泄量は牛の1000~2000倍と報告されている。そのため、ワクチン非接種清浄国において豚で口蹄疫が発生した場合、大流行となる可能性が高い。一方、感染豚のウイルス排泄量を抑制する方法を開発した場合、口蹄疫の防圧に有用であると考えられる。そこで、ワクチンとは異なり即効性が期待できる抗ウイルス剤を用いた口蹄疫ウイルスの排泄抑制法について検討した。in vitroの実験において口蹄疫ウイルスに増殖阻害作用を示した化合物を用いて豚における排泄抑制効果を調べた。本講演においては、2000年のわが国における口蹄疫発生時に分離されたO/JPN/2000株および1997年の台湾における口蹄疫発生時に分離され、豚に対して高い親和性を示すO/Taiwan/97株に対する抗ウイルス剤の排泄抑制効果の概要を報告する。

第74回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

第74回日本豚病研究会研究集会の概要

日 時: 平成20年10月20日(月) 13:00~17:25
場 所: 東京大学弥生講堂・一条ホール
 (東京都文京区弥生1-1-1 東京大学農学部内) [http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/]
 Tel. : 03-5841-8205 Fax. : 03-5841-5028
演 題:
(座長)小林秀樹

豚胸膜肺炎(13:00-13:45)
動物衛生研究所 伊藤博哉
 豚胸膜肺炎は、線維素性壊死性胸膜肺炎を主徴とする豚の重要な細菌性呼吸器系疾病の一つである。本病の罹病率及び致死率は高く,養豚産業に与える経済的被害は大きい。その重要性から、本病及びその起因菌Actinobacillus pleuropneumoniaeの研究は、世界的に幅広くかつ詳細に実施されてきている。今回はA. pleuropneumoniaeの細菌学的知見を中心として、豚胸膜肺炎に関する現在までの知見を紹介する。

多臓器に膿瘍の見られたアクチノバチルス症の1例(13:45-14:15)
動物衛生研究所 久保正法、芝原友幸
 Actinobacillus pleuropneumoniae(App)は、通常は肺に特徴的な病変を形成する。今回は、多臓器に膿瘍を形成した変わったApp感染症を紹介する。  患畜は約50日齢の子豚で、削痩、被毛粗剛のため鑑定殺された。剖検では、肺の前葉から中葉にかけて肝変化し、微小膿瘍も見られた。肝には全体的に点状出血と微小膿瘍が見られた。ソケイリンパ節は腫大し水腫様であった。細菌学的には、肺からAppとPasteurellaが分離され、肺門リンパ節からPasteurellaとHaemophilus parasuisが分離された。組織学的には、肝、脾、肺、リンパ節、膀胱に中に菌塊を含む多発性膿瘍が見られた。抗App 2型による免疫染色により、菌は陽性に反応した。

と畜場搬入豚におけるActinobacillus pleuropneumoniae 2型による多発性肉芽腫性肝炎(14:15-15:15)
富山県食肉検査所1、動物衛生研究所2、宮城県仙台家畜保健衛生所3 ○大場剛実1、芝原友幸2、小林秀樹2、高島阿里子1、名越雅高1、長内利佳2,3、久保正法2
 多発性結節性肝炎と病原体の関連を明らかにするために、42農場由来66,894頭のと場搬入豚の肝臓を肉眼的に検査したところ、19頭(10農場由来)の多発性肝炎を検出した。組織学的に11頭(3農場由来)にアステロイド小体を伴う肉芽腫がみられ、小体内にグラム陰性菌を認めるものもあった。免疫組織化学的にこの細菌はA. pleuropneumoniae (App)2型抗体に反応した。類似する所見が、肺(7/7頭)、脾臓(1/5頭)、リンパ節(1/9頭)でもみられた。細菌学的にApp 2型が、肝臓(7/11頭)、肺(7/7頭)と脾臓(1/6頭)から分離された。これらの結果から、App 2型が肥育後期の豚に肺炎を伴う多発性肉芽腫肝炎、脾炎、リンパ節炎を引き起こすことが分かった。

(座長)高木道浩

PRRSの発生による経済的な損失評価(15:25-15:55)
動物衛生研究所1、バリューファーム・コンサルティング2、サミットベテリナリー サービス3     ○山根逸郎1、呉克昌2、石川弘道3 、高木道浩1、吉井雅晃1、沖永龍之1、宮崎綾子1、鈴木孝子1、芝原友幸1、久保正法1、小林秀樹1、恒光裕1
 PRRSの発生による経済損失の報告は少ない。今回、過去にPRRSの発生があった5農場の経済損失を、発生期と非発生期の6項目(流産や事故率等)の生産指標の差から計算し、PRRS発生期間中の1母豚1ヶ月当たりの項目ごとの平均損失額を算出した。全国の養豚農家(n=116)を対象に、アンケートを用いて過去2年間のPRRS発生と、発生に伴う上記の6項目の損耗の有無を調べ、前述した項目ごとの平均損失額を当てはめ、発生による損失を算出した。この結果と全国の母豚数との比率より、全国の養豚場のPRRS発生による年間損失は約400億円と推定され、流産(34.9%)、離乳期の事故率の増加(24.2%)、肥育期の事故率の増加(22.2%)による損失割合が高かった。

PRRSから学ぶ養豚疾病対策の将来像(15:55-16:55)
スワイン・エクステンション&コンサルティング、 ミネソタ大学豚病撲滅センター 大竹 聡
 豚繁殖呼吸障害症候群(PRRS)は、その経済被害の大きさから現在の世界養豚産業において最も重要視されている疾病である。アメリカではPRRSを克服するための様々な研究と現場検証が行われ結果を出してきている。かたや日本ではPRRSという名前だけが一人歩きしているような状態で必ずしも正しい情報が浸透していないのが現状であり、その認識と対策に非常に大きなギャップを感じる。今回は演者の国内外における知見・経験をもとにPRRSの実態とその対策法について明らかにしたい。アメリカのPRRS対策の取り組みの歴史と今後の展望を垣間見ることで、業界全体としての養豚疾病対策の本来あるべき姿が浮かび上がってくる。

(座長)津田知幸

オーエスキー病防疫対策要領の改正について(16:55-17:25)
農林水産省消費・安全局動物衛生課 荻窪恭明
 オーエスキー病については、平成3年度から「オーエスキー病防疫対策要領」に基づき、発生状況等に応じ、地域区分を設け、清浄化対策を進めてきました。これまでの取組の結果、本病の浸潤の拡大は阻止してきたものの、浸潤地域の清浄化は、一部に止まっている状況にありました。本病の清浄化に向けた更なる対策を図るため、昨年6月にオーエスキー病防疫技術検討会を設置し、本病対策のあり方について検討を行い、本年6月には、この検討結果等を踏まえ、本要領を改正したところです。遅くとも本年11月中までにはオーエスキー病の早期の清浄化に向けた新たな防疫対応を推進していくこととしています。

第73回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

第73回日本豚病研究会研究集会は下記の要領で開催いたしました。

日本豚病研究会事務局
(動物衛生研究所内)
tel./fax. : 029-838-7745

陽春の候,会員の皆様には益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて,春の研究集会を下記の要領で開催しますのでご案内いたします。
尚、開始時間は12:00となっています。

日 時: 平成20年5月16日(金) 12:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
 (つくば市竹園2丁目20-5)
 [交通案内 (研究交流センター)
  ※敷地内北側に駐車場があります]
 tel. 029-851-1331
1. 定期総会 (12:00~12:15)
2. 第15回藤崎優次郎賞授賞式、受賞記念講演 (12:20~13:00)
 
(座長)志賀 明

受賞記念講演
養豚コンサルタント 山下哲生
3. 演 題
(座長)鈴木孝子

千葉県における豚サーコウイルス2型感染症 (13:00~13:25)
千葉県中央家畜保健衛生所 佐藤岳彦
 平成17年秋頃より、県内養豚密集地域において事故率が30%を超える農場が増加している。1農場で病性鑑定を実施した結果、2頭からPCV2 Group1の遺伝子を検出した。Group1は近年北米において甚大な被害が報告されており、浸潤状況を調査するためPCV2が関与し事故率が上昇していると思われた16農場で病性鑑定を実施した。その結果、9農場でGroup1を検出した。病理学的検査において、Group1を検出した個体の肺では、他のPCV2遺伝子型よりも多くのPCV2抗原が認められた。千葉県では、平成20年度から豚の慢性疾病対策を目的とする各種事業を実施予定である。これらの事業や病性鑑定結果からPCV2の対策を検討していきたい。

インゲルバック® サーコフレックスのドイツでの臨床試験 (13:25~13:50)
ベーリンガーインゲルハイムベトメディカジャパン株式会社 ○山口猛、宮下マリ
 豚サーコウイルス2型(PCV2)に対するワクチンであるインゲルバック®サーコフレックスのドイツでの臨床試験成績を報告する。試験を実施した農場はPRRS陽性農場で、試験開始前、呼吸器症状を中心としたPRDCにより多くの被害が見られていた。供試子豚は約3週齢の子豚で、ワクチン群754頭、対照群765頭の合計1,519頭を用いた。その結果、対照群と比べてワクチン群では増体重の改善、一日平均増体重の改善、発育不良豚の発生頻度の減少、臨床症状の減少及び死亡率の低下が見られた。同時にウイルス血症陽性率及び血中ウイルス量の低下が見られた。 以上のことから、インゲルバック®サーコフレックスはウイルス血症を有意に低下させることによりPCV2感染による種々の症状を低減することが分かった。

豚サーコウイルス2型(PCV2)に対する母豚ワクチネーションの概念とその有効性について (13:50~14:15)
メリアルジャパン株式会社 ○徳山桂理、古井丸広行、柴 成宏、松本 哲、杉山美樹、小野恵利子
 離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の発病機構に関しては未解明の点が多いが、①発病に大量のウイルスが必要、②PCV2は口・鼻・糞などへ排出される、③生後間もない段階から感染が始まる、などといった知見が知られている。また、十分な抗体があればある程度のPCV2感染防御が可能であり、移行抗体にもその効果があることが示されている。しかし、繁殖豚群のPCV2に対する抗体レベルは不安定であることが多いため、上述のすべての点を念頭においた場合、繁殖母豚へのワクチン接種はPCV2制御のツールのひとつとして有効であると思われる。事実、海外や国内で実施された繁殖豚群へのワクチン接種試験では、斃死率および増体に関して大幅で有意な改善が証明されているので、有効性や安全性、利便性の観点からも繁殖母豚ワクチンはPCV2対策に大きく貢献できるものと考えられる。

休憩 (14:15~14:30)
豚サーコウイルス不活化ワクチンの概要 (14:30~14:55)
株式会社インターベット ○種子野 章
 インターベット インターナショナル社(IVI)において開発された、豚サーコウイルス2型(PCV2)感染症に対するワクチンは、PCV2のORF2蛋白を発現する、組替えバキュロウイルスを主成分とする油性アジュバント加不活化サブユニットワクチンである。 日本においても2005年以降にPCV2の感染に起因すると思われる事故率の増加が認められ、予防対策としてのワクチンの開発・上市が強く要望されている。 今回は、IVIが実施したカナダでの野外試験及び第145回日本獣医学会学術集会で発表した安全性と有効性の成績について報告する。

Suvaxyn® PCV2 One Doseの海外における評価成績 (14:55~15:20)
Fort Dodge Animal Health Biological Research & Development 竹村 香里、Zhichang (Zach) Xu、Hsien-Jue (Steve) Chu
フォートダッジ株式会社 ○井上剛光、岸 雅恵
 Fort Dodge Animal Health社の単回投与PCV1 -2型キメラ不活化ワクチン、Suvaxyn® PCV2 One Doseは非病原性PCV1の基盤構造にPCV2の表面構造を組み込んだユニークなキメラ構造により、PCV2の免疫系刺激作用と非病原性PCV1の安全性との組み合わせ効果を発揮する。米国での4週齢子豚による有効性評価試験では、ワクチン投与群は非投与群と比較し、ウイルス血症、リンパ球減少、組織球の置換およびPCV2の免疫組織学的染色において有意な減少が認められた。免疫持続試験では、単回投与から最低4ヶ月はPCV2ウイルス血症の予防およびPCV2によるリンパ球減少の抑制が実証された。1,100頭の豚を使用して実施された米国野外安全性試験では、投与後2週間、局所および全身性反応いずれも全く認められず十分な安全性が確認された。

(座長) 石川弘道、恒光 裕

アメリカにおけるPCV2関連疾病(PCVAD)の状況とワクチンの効果 (15:20~16:20)
イリノイ州養豚専門開業獣医師 Joseph F. Connor
 以前は大きな問題となっていなかったPCV2関連疾病(PCVAD)が、アメリカでは2005年ごろから養豚密集地帯を中心に広がりを見せ、2006年には多くの養豚地帯で大きな被害を見せた。この広がりの原因について疫学的な知見やウイルス株の違いと病原性などについて説明する。さらに、アメリカの生産現場でのPCV2不活化ワクチンの接種の実情やその効果について詳述するとともに、ワクチン接種後の養豚衛生や養豚業界全体への影響を説明する。また、ワクチン接種の効果に影響を与える要素について言及することにより、その効果を最大限に発揮させるための要件を検討する。

総合討論 (16:20~16:45)
研究集会終了後の懇親会は予定していません。
一部タイトルを修正しました。(平成20年4月30日修正)

第72回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

第72回日本豚病研究会は下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成19年10月15日(月) 13:00~17:00
場 所: 東京大学弥生講堂・一条ホール
 (東京都文京区弥生1-1-1 東京大学農学部内) [http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/]
 Tel. : 03-5841-8205 Fax. : 03-5841-5028
演 題:
(座長)下地善弘

豚丹毒生ワクチンの安全性の再評価
松研薬品工業株式会社 天野健一
化学及血清療法研究所 本田 隆
科学飼料研究所    小川哲夫
北里研究所      瀧川義康
共立製薬株式会社   山崎康人
日生研株式会社    染野修一
京都微生物化学研究所 大石英司
 近年、野外発病例や食肉検査所の分離株の中に豚丹毒生ワクチン(LV) 株と類似の性状を呈する株の存在が報告され、LVの安全性を再評価することが求められた。そこで、その一環として豚を用いたLV 接種試験、野外におけるLV の使用状況と食肉検査所での豚丹毒(SE)の発生状況調査をLVの製造販売を行なっている7所社で協同して実施した。その結果、LV 接種試験では、接種後臨床的な異常を呈する豚は認められず、出荷時の剖検でも主要臓器からSE菌は分離されなかった。野外調査では、LV 接種によりSE による廃棄率を有意に低下しうることが確認された。本成績から、豚丹毒生ワクチンの安全性が再確認された

(座長)岡田宗典

臨床現場から見た南九州における肥育豚の斃死状況について
宮崎県 (有)シガスワインクリニック 志賀 明
 養豚の生産性を左右する肥育豚の斃死率は、近年上昇の一途である。その原因はさまざまだが、特に昨年来斃死率が急増している農場ではサーコウィルス関連疾病(PCVAD)が猛威をふるっていると言われている。
 斃死率増加の原因はPCVADだけではなく、豚繁殖・呼吸障害症候群や豚胸膜肺炎、連鎖球菌症、グレーサー病等による呼吸器複合感染症も多い。一方、腸管感染症は腸管毒血症性大腸菌症による損耗が多く、また、増殖性腸炎やサルモネラ症等も発生しており、これらの複合感染症も見られる。さらに、呼吸器病と腸管感染症との複合感染症も散発しており、対策をより難しくしている。
 今回、南九州における肥育豚の斃死の現状を、筆者の関わる農場と他の臨床獣医師への聞き取り調査による結果を報告する。

鹿児島県における豚病清浄化の取組
鹿児島県農政部畜産課 北野良夫
 本県の繁殖雌成豚の飼養頭数は124,800頭(平成17年度)であるが,肉豚出荷頭数は197万5千頭であり,推定事故率は約24%となる。この数値を平成2年度と比較すると約13ポイント悪化している。この原因は平成2年度に本県に侵入が確認されたオーエスキー病,平成5年度以降侵入が確認された豚流行性下痢症,PRRS,PCV2感染症などの病気の侵入に伴う複合感染症である。事故率上昇は経営の悪化はもとより,食肉処理場など地域経済への影響も甚大である。本県では,豚病清浄化を図り,地域経済の浮揚を狙うため,全国に先駆けて,平成19年4月に家畜保健衛生所を中心とした「豚病清浄化プロジェエクトチーム」を立ち上げた。当該チームでは,清浄化対象農場12戸を選定し,抗体検査やヒネ豚の病性鑑定等による事故原因の究明,飼養衛生管理や食肉検査成績等の実態調査を行っているところであり,今後具体的な清浄化対策を確立し,県下全養豚農家に普及することにしている。

(座長)恒光 裕

わが国における離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の特徴と診断
農水省農林水産技術会議事務局 川嶌健司
 多くの農場の飼養豚からブタサーコウイルス2型(PCV2)の特異抗体が検出されたことから,PMWSがわが国の豚農場に広く浸潤していると推定された。しかしながら、30%を越える死亡率の発生農場がある一方で、成績のよい農場でも罹患豚は認められ、PMWSについては診断や病原性に関わる未確定な部分が多い。このため、PMWSの診断法や対策法策定に向けて,家畜保健衛生所ならびに動物衛生研究所では,農林水産省動物衛生課所管の診断予防技術向上対策事業を2000年より実施している。本講演では,事業成績から個体ならびに農場でのPMWSの有病率,PMWSの診断およびPCV2の農場内動態と農場の事故率との関連を紹介する。

オーエスキー病の現状とその清浄化に向けて
動物衛生研究所海外病研究施設 山田俊治
 オーエスキー病は、昭和56年に国内ではじめて発生がみられてから今年で26年になる。この間に養豚衛生分野において100余年も悩まされ続けてきた豚コレラを撲滅するなど明るい出来事があったが、近年PRRSやPMWSなど複合的な呼吸器疾患が顕著化してきている。これら疾病の関連病原体はすでに全国の豚に広く浸潤しており、撲滅や清浄化といった根本的な対策以前に発症をコントロールすることが肝要で、適正飼養密度の確保や飼養管理の改善といった基本対策が功を奏することが少なくない。オーエスキー病についてもこうした基本対策やワクチネーションによって発症をコントロールできるものの、浸潤地域と清浄な地域とに分かれている状況では浸潤地域への集中的な対策を講じなければこの膠着した状況が続くか、さらに悪化するものと考えられる。事実、浸潤都県は増加することはあっても減少に転じていない。平成18年、浸潤地域を擁する17都県に比して発生はわずか3県3農場の報告のみで、ヘルペスウイルスに特徴的な潜伏感染の様相が如実に表れている。豚コレラのように感染すれば必ず発症する疾病では発症豚を摘発淘汰することで感染豚やその病原体を同時に絶つこととなるが、オーエスキー病のように感染豚の多くが潜伏感染となる疾病では感染と発症の関係がイコールとならないため発症豚を摘発淘汰するだけでは感染源の根絶とはならない。オーエスキー病の根本的対策は一見健康に見える潜伏感染豚の排除といっても過言ではない。
 ここではオーエスキー病の特徴や現状について今一度整理し、その清浄化を進める上で必要な事項を技術的な観点からお話ししたいと思う。

*研究集会終了後の懇親はを予定していません。

第71回日本豚病研究会研究集会

第71回日本豚病研究会研究集会のお知らせ

日本豚病研究会事務局
(動物衛生研究所内)
tel./fax. : 029-838-7745

陽春の候,会員の皆様には益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて,春の研究集会を下記の要領で開催しますのでご案内いたします。

日 時: 平成19年5月21日(月) 13:00~17:00
場 所: 研究交流センター
 (つくば市竹園2丁目20-5)
 [交通案内 (研究交流センター)
  ※交流センターの建物の北側に駐車場があります。]
 tel. 029-851-1331
1.定期総会
2.演 題
(座長)小林秀樹

養豚場におけるサルモネラ汚染状況
動物衛生研究所  木嶋眞人
 豚のサルモネラ感染症は、豚の生産性を阻害するだけでなく、人畜共通感染症として公衆衛生上も重要な疾病である。本症は、1)敗血症型、2)下痢症型、3)無症状型、の3つに大別されるが、無症状型であっても公衆衛生上の重要性は、敗血症型や下痢症型と同様である。そのためデンマークをはじめとして、EU各国では農場のサルモネラ低減化を目指した息の長い取り組みがなされている。しかしながら、わが国では、養豚場の汚染実態さえ明らかにされていないことから、以下の調査を実施した。
 (1) 市販のELISAキットを用いて、1999年から2002年において、27カ所の養豚場で飼育されている821頭の豚の血清を採取して検査した結果、127頭(15.5%)が抗体陽性であり、24農場(88.9%)で飼育されている豚の1頭以上が抗体を保有していた。また、10頭の子豚について、分娩1週後から31週後の間に血清を採取して抗体産生状況を調べた。分娩後1週目に採取した血清中には移行抗体が存在していたが、3週目には消失した。分娩後10週目から15週目頃には感染抗体が徐々に上昇し、27週目には殆どの豚が抗体陽性となった。
 (2) 2003年から2005年にかけて、5,393頭の豚の糞便を培養した結果、169頭から172株のサルモネラを分離した。分離株について特徴的であったのは、型別不能なO4,12:d,-が50株(29.1%)と最も多数を占めていたことである。  以上の成績から、わが国における養豚場のサルモネラ汚染は、EUよりも軽微であると考えられたが、今後更に抗体保有率と排菌率の関係等の基礎的調査を継続する必要があると思われる。

食肉処理場と農場において摘発されている豚サルモネラ症
群馬県中部家畜保健衛生所  高橋泰幸
 食肉処理場(と畜場)において、Salmonella Choleraesuis (SC)による豚サルモネラ症の摘発件数が激増。農場では出荷した豚に臨床症状は認められていない。と畜場で分離された14農場25株と病性鑑定により分離された13農場18株の性状を比較したところ、全ての株が薬剤感受性試験でOTC、SM、SDMXに耐性を示し、50kbの血清型特異病原性プラスミドを保有。薬剤感受性、プラスミドプロファイルおよびXbaⅠとBlnⅠを用いたPFGEのRFLPはほぼ同一で、と畜場由来株と発生農場由来株に違いは認められなかった。と畜場でSCが分離されたA農場133検体と、病性鑑定によりSCが分離された管内4農場203検体の抗体検査をELISA法で実施したところ、A農場では180日齢のみ、4農場ではSCの分離日齢である60~120日齢を中心に抗体陽性豚が認められ、農場における臨床症状発現の有無は感染時期の違いによるものと示唆された。食肉衛生検査所との連携の強化と農場でのSC浸潤状況と感染時期を総合的に判断し、状況に応じた農場の衛生対策を模索している。

健康豚ふん便からのサルモネラの分離と薬剤感受性
麻布大学 獣医学部  福安嗣昭・二川慶子
 1998~99年に2,980頭及び2004~05年に3,791頭の豚ふん便からサルモネラを67株及び126株を分離し、血清型、薬剤感受性、SPV及びDT104について検討した。’98年と’04年の農場別及び個体別の分離率は、いずれとも’04年の方が若干高率であった。分離菌の血清型は18種類で、Typhimuriumが27.5%と最も高率で、Anatum、Infantisの順であった。一方、16薬剤の単一又は複数に対し11種類の血清型菌が耐性で、それらの耐性率はTC系を除き04年の方が有意に高率であった。Typhimurium 53菌株(10農場)のうち27菌株(6農場)がDT104であり、49菌株がSPVを保有した。

(座長)鮫島俊哉

肥育農場で発生した豚サルモネラ症の衛生対策
青森県十和田家畜保健衛生所  児玉能法・二唐 崇
 平成16年9月、豚肥育農場でSalmonella Typhimurium(以下ST)による下痢症発生。発病豚は早期隔離・治療。全豚房のサルモネラ検査を実施し、陰性群は臨床的に健康であれば出荷。陽性群は個体毎に隔離し、陰性になるまで抗生剤投与と検査を反復。オールアウト後、豚舎消毒し次ロットを導入。定期検査を実施し、再度ST保菌豚を確認。初発群と次ロットの分離STの疫学マーカーによる型別が一致。消毒後の豚舎環境におけるST残存を示唆。消毒方法変更、空舎期間延長、生菌剤・有機酸投与及び導入頭数縮少した結果、ST清浄化達成。

一貫生産農場におけるサルモネラ・ティフィミリウムの清浄化事例報告
(有)バリューファーム・コンサルティング  呉 克昌
 筆者は2000年と2005年に、それまで発生経験の無かった二つの大規模農場でサルモネラ・ティフィミリウム(ST)による疾病発生を経験し、清浄化を試み成功したので、その事例を報告する。清浄化のための重要管理点はオールイン・オールアウト飼育と飼育設備の洗浄・消毒の徹底、人や物の出入りの厳重なコントロールだったが、清浄化達成までにはそれぞれ11ヶ月と14ヶ月を要した。その過程でいくつかの失敗も経験したので、具体的な対策を説明するとともに、成功と失敗のポイントを明らかにする。また、ST清浄化対策により肥育成績も大きく改善されたので報告する。

3.APVS2007(中国・武漢)の報告
               志賀 明・石川弘道

第70回日本豚病研究会研究集会

第70回日本豚病研究会研究集会の概要

日 時: 平成18年10月23日(月) 13:00~17:00
場 所: 研究交流センター
 (つくば市竹園2丁目20-5) [交通案内 (研究交流センター)]
 tel. 029-851-1331
演 題:
(座長)小林秀樹

豚のレプトスピラ症の現状と対策
菊池直哉 (酪農学園大学獣医学部)
 レプトスピラ症は病原性レプトスピラの感染により、発熱、出血、黄疸、血色素尿を主徴とする人獣共通感染症である。多くの哺乳動物に感染し、その宿主域は広い。病原性レプトスピラはネズミなどの保菌動物の腎臓に長期にわたって保菌され、尿中に排菌される。尿で汚染された水や土壌などから経皮的あるいは経口的に感染する。
 豚のレプトスピラ症は、不顕性感染にとどまることが多く、発症することは少ないので認知されることが少ない。しかし、妊娠豚が感染した場合は流死産を起こし、経済的損出が大きい。本講演では本症の現状とその対策について述べる。

(座長) 志村亀夫

国内の養豚場におけるIsospora suisの浸潤状況
斉藤康秀 (麻布大学獣医学部寄生虫学研究室)
 Isospora suisは単独感染でも激しい下痢を引き起こす事および感染の中心が哺乳豚にあることから感染が起これば、豚の生育に大きな影響を与えることが考えられる。しかしながら、本原虫に十分な注意が払われているとは言い難い現状に有る。今回は、本原虫の浸潤状況を知るために行った糞便検査の結果および本原虫一般について触れる。

(座長) 志賀 明

九州における最近の養豚事情
岡田宗典 (全国農業協同組合連合会福岡畜産生産事業所)
 九州地方は国内でも有数の豚の産地であり、豚の飼養頭数および飼養戸数はそれぞれ全国の約3割を占めている。一方で1戸あたりの飼養頭数は必ずしも多いとはいえず飼養母豚数が1000頭を超える大規模養豚場が存在する一方で母豚100頭前後の家族経営による小規模な養豚場も多く存在することを示している。
 暑熱対策が必要な気候条件やPRRSに関連したサルモネラ症、グレーサー病、多発性漿膜炎、溶レン菌症の発生あるいは近年の下痢を伴う浮腫病の発生は生産性の低下につながっており、これらの感染症は離乳後から70日齢で発生することから特に子豚の事故率が高く(10~30%)なる傾向が認められる。特に小規模な養豚場では正確な統計はないものの演者の印象では1母豚あたり17頭前後の年間出荷頭数と考えており、生産性の低さに加え、大消費地に遠いという地理的条件による販売面のデメリットもあり経営的にも不安定な状況である。
 生産性の向上のために母豚規模100頭前後を対象にしたスリー・セブンあるいはツー・テンと呼ばれるグループ管理システムそして大規模養豚場を対象にしたソーティングシステムが導入されつつあり、今回これらの生産方式の試みについても紹介したい。

(座長) 津田知幸

豚コレラ撲滅対策の10年
小倉弘明 (消費・安全局動物衛生課)
  平成8年度、5年間の計画で豚コレラ撲滅対策を開始。対策は、清浄性を監視しつつ、ワクチン接種徹底、都道府県ごとの接種中止と進められたが、接種継続を求める強い要望があり、平成12年10月、ワクチンを原則中止、輸入規制強化を行ったが、知事の許可の下での限定的なワクチン接種は可能とした。その後、接種農場も漸減、平成18年3月末にワクチン接種の全面中止を前提とした防疫指針を公表し、予防的なワクチンは全面中止とした。撲滅対策の10年は、永年の家畜衛生関係者の取組みの成果を結実させるものとなる一方で、養豚経営が専業化、多様化する中、関係者のコンセンサス作りが家畜衛生の推進上いかに重要かを再認識する10年ともなった。

*研究集会終了後に懇親会を予定しています。当日受付までお申し出下さい。

平成18年度日本豚病研究会総会及び第69回日本豚病研究会研究集会

平成18年度日本豚病研究会総会
及び 第69回日本豚病研究会研究集会の概要

日 時:平成18年5月26日(金) 13:00~17:00
場 所:東京大学弥生講堂・一条ホール
定期総会
日本豚病研究会第14回藤﨑優次郎賞 授賞式
受賞記念講演
演題
◆◆◆◆◆
(座長)石川弘道、恒光 裕 (演題1-3)

2005年に検索した豚の病気 -主として肺炎について-
久保正法 (動物衛生研究所)
 2005年に病性鑑定を実施した豚143頭に基づいて、豚の病気の実態、特に肺炎について概説する。PCV2感染が疑われたものが最も多く44例であり、次いでPRRSの24例であった。PCV2とPRRSの同時感染は9例に見られた。化膿性髄膜炎が17例、大腸菌症が16例の順であった。単独感染例は少なく、多くは複合感染であった。
 病気を年齢別に見ると、PCV2感染は20日齢以降に見られ、80から140日齢の豚が大部分を占めていた。PRRSは0-20日齢の若齢豚でも見られ、80-100日齢が最も多かった。Actinobacillus pleuropneumoniae(App)感染は、20日齢から140日齢まで見られ、100-140日齢が半数であった。マイコプラズマ肺炎もApp感染と同様な傾向が見られた。連鎖球菌による化膿性髄膜炎は17例に見られ、20-60日齢が過半数を占めていた。

豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスにおける遺伝学的多様性とその意義
吉井雅晃  (動物衛生研究所)
 PRRSウイルスは、遺伝学的に大きく異なる北米型と欧州型に分類されるが、それぞれの遺伝子型においても多様性に富む。感染豚では同一株に対して完全な防御免疫が成立するが、異種株に対する防御は不完全であり、このことが、PRRSの免疫学的な防除を不確定にしていると推測される。最近、欧州型において、遺伝学的系統の異なる株間では交差防御に差があることが示された。我々はO RF5遺伝子に基づく分子系統樹解析から、日本の株は全て北米型に属するものの、多様な系統が存在すること、また、日本において優勢な系統は、アメリカでみられる系統とは異なることを明らかにした。既報の知見とあわせ、本ウイルスの遺伝学的多様性の意義について考察する。

PCV2と関連したPRDCおよびPMWS
Catherine Charreyre and Francois Joisel
 (通訳) 徳山佳理 (メリアル)
 PCV2とPRRSVの実験的同時感染はもっとも重篤な組織病変、PCV2ウイルス価の上昇および多くのPMWS症例を常に誘起した。同時感染した豚におけるPRRSV価の上昇はPCV2の同時感染がPRRSVの増殖を促進することも示唆した。PCV2とPPVの同時感染は高頻度でかつ重篤なPMWS症例と関連してきた。M.hyoがPCV2に関連した肺およびリンパ系病変を悪化させ、PCV2抗原の検出とPMWSの発生を増加させている。
 PRDCで認められる全ての病原体は豚の免疫機構を修飾することによりお互いに直接的相互作用ないし影響を及ぼしている。
 大量の病原性PCV2ウイルスを貪食し、長期にわたり維持できる肺胞マクロファージをPRRSVは標的とし、殺している。M.hyo感染はマクロファージが活性化されM.hyoを破壊するTH1型免疫応答から遠ざけ、非効率的なTH2応答に向けるサイトカインの産生を誘導する。最盛期のPCV2感染は免疫抑制と関連しており、中和抗体応答の産生ないし維持ができなくなる。
 従って、野外では養豚場における豚の免疫状態および様々な病原体に感染する時期が、PCV2の病態および/ないしPRDCに大きく影響する。

(座長) 川島健司(動衛研)

茨城県における豚サイトメガロウイルス病の発生事例
赤上正貴 (茨城県県北家畜保健衛生所)
 豚サイトメガロウイルス(PCMV)病は,移行抗体を持たない新生豚ないし哺乳豚が鼻炎等の呼吸器症状を呈し,鼻粘膜腺上皮細胞に大型好塩基性核内封入体が形成されることから封入体鼻炎とも呼ばれる。
 茨城県では,平成15年1月にSPF導入母豚から生まれた10日齢の哺乳豚で典型的な封入体鼻炎の発生があった。また,平成12年及び平成17年の2度にわたり, PCMVが関与したと思われる好塩基性核内封入体を伴う非化膿性脳炎及び重度脳軟化が神経症状を呈した離乳豚で認められた。ヒトでは,日和見感染あるいは胎児感染によるCMV脳炎が報告されているが,豚ではPCMVによる脳炎に関する報告は無い。
 今回,これら3症例のPCMV病について病理学的に検討したので,その概要を報告する。