第83回日本豚病研究会・平成25年度日本豚病臨床研究会・ 平成25年度日本養豚開業獣医師協会 第4回合同集会(事務局:日本豚病臨床研究会)は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会第4回合同集会を下記の要領で開催致しました。

日 時: 平成25年10月23日(水) 10:00~17:00
場 所: 明治ホールディングス株式会社 本社ビル 地下1階講堂
〒104-0031 東京都中央区京橋二丁目4号16番
Tel 03-3273-3434

日 程

開 会(10:00~10:15)

統一テーマ「PRRSの現状と課題」(10:15~14:20)
座長:大石英司((株)微生物化学研究所)
1 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の現状と最新の学術的知見(10:15~10:55)

動物衛生研究所 高木道浩 [豚病研]
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、PRRSウイルス感染によって引き起こされる母豚の流死産などの繁殖障害と育成肥育豚の呼吸器病を主な症状とする疾病であり、世界の養豚産業において大きな経済損害をもたらしている。
PRRSウイルスには遺伝学的多様性がある事が知られている。我が国において、PRRSウイルスが初めて分離されてから20年以上が経ち、国内流行ウイルスにおいても遺伝学的な多様性が認められており、これが農場内で常在化しやすくなる一因となり、農場でのPRRS対策を困難にさせている。本講演では、我が国でのPRRSウイルスの遺伝学的多様性、国内で初めて分離された欧州型PRRSウイルス、我々の研究と最近の学術的知見について紹介する。
2 海外・国内のPRRS最新知見  ―科学的根拠に基づいたPRRS対策を― (10:55~11:35)
㈱スワイン・エクステンション&コンサルティング、ミネソタ大学豚病撲滅センター、PRRS撲滅推進チーム・ジャパン(P-JET) 大竹 聡 [JASV]
PRRSは、現在の世界の養豚産業において最も経済損害の大きい疾病の一つとして知られている。本発表では、海外(主にアメリカ)と国内のPRRS最新知見を要約し提示することで、科学的根拠に基づいたPRRS対策の重要性を説く。

PRRSウイルスの特徴
PRRSの診断
PRRS免疫安定化(ステージ定義)
PRRSウイルスの伝搬経路
バイオセキュリティ
PRRS清浄化の取り組み
地域ぐるみのPRRS対策(P-JET)
3 養豚密集地域におけるPRRS対策の事例 (11:35~12:15)
JA鹿児島県経済連 川畑 忠祐 [豚臨研]
本会では平成20年より直営農場を中心にPRRSのコントロール・清浄化に向けた取り組みを実施してきた。
基本対策として育成母豚の馴致、オールイン・オールアウト、農場内・外防疫の徹底を設定し、対策を継続することで一定の効果を得る事ができた。
しかし、対策の効果は農場毎に異なっており、特にPRRSの浸潤状況、立地条件などに大きな影響を受けている事がわかった。今回、PRRSが高度の浸潤した養豚密集地帯におけるPRRS対策の1事例について報告する。
[昼休み(日本豚病研究会 幹事会) 12:15~14:00]

4 総合討論 (14:00~14:20)

[第7回 国際新興・再興豚病学会のお知らせ 14:20~14:30]

一般演題(14:30~16:50)
座長:謝村錦司(協同農産(株))・石川弘道((有)サミットベテリナリーサービス)
1 豚増殖性腸炎とLawsonia intracellularisの感染動態 (14:30~15:00)
動物衛生研究所 三上 修 [豚病研]
豚増殖性腸炎は偏性細胞寄生性菌であるLawsonia intracellularisの経口感染によっておこる消化器疾患で、急性型と慢性型に大別される。急性型は4-12ヵ月齢の肥育豚や繁殖豚で認められ、罹患豚はタール便を排泄し急死する。一方,慢性型は6-20週齢の肥育豚でみられ、下痢や軟便を呈する場合もあるがはっきりとした臨床症状を示さないことも多い。しかし、L. intracellularis感染により増体や飼料効率が低下することから、潜在的な経済的損失は無視できない。本発表では豚増殖性腸炎の病態と、L. intracellularis感染後の菌の動態を中心にお話ししたい。
2 豚の反芻獣ペスチウイルス感染事例 (15:00~15:30)
茨城県鹿行家畜保健衛生所 榊原 裕二 [豚病研]
平成24年2月,管内一貫養豚場の、豚コレラ清浄性確認検査を実施した結果、29頭中14頭に豚コレラELISA抗体陽性が確認された。そのため緊急立入を実施したところ飼養豚に臨床的な異常はなく、新たに採血した120日齢の肥育豚1頭からペスチウイルスを検出する遺伝子検査で陽性となり、ボーダー病ウイルスに近縁の反芻獣ペスチウイルスと判明した。また、ELISA抗体陽性となった血清を用いた中和試験の結果、豚コレラは否定された。更に病性鑑定及び清浄化対策の結果、発育遅延豚3頭と肥育豚1頭から反芻獣ペスチウイルスが分離された。これらウイルス排泄豚4頭を淘汰後、5月以降当該農場でのウイルスの流行は沈静化したと考えられた。

[休憩 15:30~15:50]
3 豚丹毒集団発生事例からみた本症予防衛生管理の問題点 (15:50~16:20)
㈱ピグレッツ 渡辺一夫、㈱サミットベテリナリーサービス 石川弘道、㈱高座豚手造りハム 北条那智 [JASV]
4戸の一貫経営養豚場の肥育農場において豚丹毒が集団発生し、この間の事故率は10%前後であった。これらの農場の飼育形態は開放オガクズ豚舎であり、棟毎にAI/AOを実施していた。豚丹毒ワクチンはいずれも生ワクチンを使用していたが、1農場は繁殖豚のみの接種であった。また、いずれの農場も、出入口の石灰散布、入場車両の消毒、消毒槽の設置などの衛生管理は実施していた。豚丹毒の発生要因はカラスによる豚丹毒菌の伝播が強く疑われた。また、生ワクチン接種時期にも問題があったと考える。いずれの農場でも豚丹毒不活化ワクチンを60日齢と90日齢の2回接種により終息した。
4 動物用医薬品の適正使用に向けた取組みについて (16:20~16:50)
(有)あかばね動物クリニック 伊藤貢[豚臨研]
動物用医薬品の使用は疾病対策にとって重要だが、一方では耐性菌の出現や国産豚肉の安心を揺るがす問題に発展する危険性もある。デンマークでは、1994年から獣医師の定期的な農場訪問を法律化して抗生剤の使用を厳しく管理している。さらに2011年からは全ての生産者の抗生剤の使用をモニターし、使用の多い生産者および管理獣医師に改善指導がなされるシステムがスタートした。
日本に於いては、家畜保健衛生所の立ち入り調査、指示書の提出が行われているが、農場での使用実態を示す情報は少ない。
今回、共通の指示書管理プログラムを使用する4診療所の動物用医薬品使用実態を報告するとともに、医薬品の適正使用に向けた取組みについて紹介する。

閉会(16:50~17:00)
〈お知らせ〉
・研究集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願い致します。
・研究集会終了後、懇親会 を予定しております。ふるってご参加ください。

懇親会について
時間: 17:30~19:30
場所: アンジェリオン オ プラザ 東京 (合同集会会場のすぐ近くです。)
東京都中央区京橋3-7-1 相互館110タワー
http://tokyo.anjelion.jp/
会費: 5,000円(会費は当日受付で申し受けます。)

参加人数把握のため、参加可能な方は、10月4日(金)までに、下記の連絡先にメールにてご連絡ください。
なお、当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けします。

懇親会参加者連絡先: 日本豚病臨床研究会事務局
yahara-y@mn-feed.com

第82回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成25年5月27日(月) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
(茨城県つくば市竹園2丁目20-5)
[交通案内 (研究交流センター)
※敷地内北側に駐車場があります]
tel. 029-851-1331

1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 第18回日本豚病研究会藤崎優次郎賞受賞記念講演 (13:40~14:10)
座長 長井伸也[日生研株式会社]
馬場建一(北里第一三共ワクチン株式会社)
3.演題
○オーエスキー病清浄化について
座長 宮崎綾子[動物衛生研究所]

1) オーエスキー病の清浄化対策について -現状と今後-(14:15~15:00)
伏見啓二(農林水産省消費・安全局動物衛生課 家畜防疫対策室長)

オーエスキー病については、平成3年度に策定されたオーエスキー病防疫対策要領を20年度に大幅に改正し、24年度までの5カ年計画で清浄化対策を強化した結果、着実に浸潤地域が減少してきた。しかしながら、一部浸潤地域において清浄化が進まないなど、ウイルス常在地域の固定化の様相も呈している。強化対策により一定の成果がみられた一方、課題も浮き彫りになり新たな対策の必要性も生じた。これまでの取り組みを無駄にしないためにも、清浄化対策事業を25年度から3年間限りで延長することとした。27年度までの本病清浄化に向けて、行政だけではなく、全ての関係者の間で情報及び意識の共有が必要であり、今後の取組に向けた強固な協力体制の構築が求められる。

[休憩  15:00~15:15]

2) 茨城県鹿行管内におけるオーエスキー病清浄化の取組状況(15:15~15:45)
清水ひろみ(茨城県鹿行家畜保健衛生所)
オーエスキー病は平成20年12月から新体制下で清浄化を目指しており、今年で第4期目となる。本県の養豚は429戸で約59万頭飼養しており、特に当所管内は104戸で約24万頭を飼養する養豚密集地である。管内では農場採材を中心としたステージ採血を実施し、検査結果に基づく衛生指導により、AD陽性率は頭数ベースで年々減少傾向にあるものの、戸数ベースでは横ばい傾向である。これらの陽性農場を清浄化するために、平成23年度から繁殖豚の全頭検査を実施している。平成24年度は、肥育豚の抗体が陰性で繁殖豚の陽性率が30%以下の農場を選定し、陽性豚の摘発・淘汰とワクチン接種の徹底を行ったところ、陽性農場が減少しつつある。

3) 宮崎県におけるオーエスキー病清浄化取組状況(15:45~16:15)
西村拓也 (宮崎県宮崎家畜保健衛生所)
宮崎県では、平成4年9月にオーエスキー病抗体陽性豚が確認されてから、県内の多くの地域に浸潤し、地域毎に清浄化の取組が進められてきた。平成20年、国の防疫対策要領の改正を受け、県要領を改正し、生産者及び関係者で構成される県、地域及び市町村協議会を設置し本病の清浄化に向けた体制整備を行った。各農場では、飼養衛生管理基準を遵守するとともに、ワクチン全頭接種、清浄度確認検査及び清浄豚の導入等を基本とする対策を進めた結果、平成20年度当初に確認された陽性農場数89戸が平成24年度3月時点で11戸と大幅に減少し、また、県内531農場うち413農場(約78%)がステータスⅢ以上の清浄性確認農場となり、現在、県域での清浄化達成に向け最終段階を迎えている。

4) 総合討論(16:15~16:30)
○一般演題
座長 矢原芳博[日清丸紅飼料(株)総合研究所]

・実験感染豚を用いたPRRSウイルス中国強毒株に対するワクチン投与効果の検証(16:30~16:50)
川嶌健司、井関 博、芝原友幸(動物衛生研究所)
2006年、中国において高致死率を示す高病原性豚繁殖・呼吸障害症候群(HP-PRRS)が突如発生し、その後、HP-PRRSは周辺国へ急速に拡大してわが国にとってHP-PRRSの国内侵入は脅威となっている。本試験では、4週齢のSPF豚を用いた感染試験によりPRRSウイルス中国強毒株の増殖に対し弱毒生ワクチン(Ingelvac(r) PRRS MLV)の投与がどのような効果を示すかを検証した。その結果、弱毒生ワクチン接種により、ウイルス血症および唾液からのウイルス排泄の抑制、食欲不振や呼吸器症状等の臨床症状軽減および肺病変と肺臓器中ウイルス量の有意な軽減が認められ、ワクチン投与はHP-PRRSでのウイルスの増殖とそれに伴う発病および病変形成に対して一定の軽減効果があると考えられた。

4.閉 会(16:50~17:00)
<懇親会のお知らせ> 研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
時 間:17:30~19:30
場 所:レストラン エスポワール(つくば国際会議場内); 研究集会会場より徒歩 約10分
〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3  TEL:029-850-3266
http://www.epochal.or.jp/floor_guide/food/index.html
会 費:5,000円

第81回日本豚病研究会・平成24年度日本豚病臨床研究会・ 平成24年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会(事務局:日本豚病研究会)は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会 合同集会を下記の票量で開催いたしました。

日 時: 平成24年10月26日(金) 10:00~16:30
場 所: タワーホール船堀(小ホール)
〒134-0091 東京都江戸川区船堀4-1-1
TEL:03-5676-2211 (代)
http://www.towerhall.jp/

日 程

開 会(10:00~10:15)

PRRSの現状(10:15~14:40)
座長:恒光 裕(動物衛生研究所)
1.日本における地域ぐるみPRRS撲滅活動の現状と今後の展望:
P-JET(PRRS撲滅推進チーム・ジャパン)の活動アップデイト (10:15~10:55)
スワイン・エクステンション&コンサルティング、ミネソタ大学豚病撲滅センター、
PRRS撲滅推進チーム・ジャパン(P-JET)    大竹 聡[JASV]
現在の世界の養豚産業において最も経済損害の大きい疾病の一つが、PRRSである。アメリカではすでに数年前から、地域ぐるみPRRS撲滅対策が積極的に進んでいる。そのような背景を受け、2011年7月、日本国内の有志の獣医師・研究者によって「PRRS撲滅推進チームJAPAN(P-JET:PRRS- Japan Elimination Team)」が発足した。 農場単位および地域ぐるみにおけるPRRS清浄化を技術的にサポート・推進できる産官学連携チームの構築を目的とし、現在まで諸々の活動を続けている。本発表では、その活動アップデイトを紹介する。
2 PRRS感染による経済的な被害 (10:55~11:35)
動物衛生研究所 山根逸郎[豚病研]
PRRSは、経済的な損失の大きな疾病である。動物衛生研究所(動衛研)と日本養豚開業獣医師協会(JASV)が行った研究高度化事業(H18-20)において、PRRSの発生による全国の養豚農家の経済損失を283億円/年と推定した。 また動衛研とJASVが2010年より行っている共同研究の結果、PRRS陰性農家は陽性農家に比較して、離乳後事故率が2.9%低く、飼料要求率は0.3低いことが明らかになった。 これは、母豚300頭の農家でPRRSの撲滅により、事故率の減少により353万円、飼料要求率の改善により576万円、合わせて929万円/年間の増収益となることが推定された。 本発表においては、上記の2つの研究内容を紹介する。

3 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスの遺伝子変異の推移 ~制限酵素断片長多型(RFLP)パターンを中心に~ (11:35~12:15)
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博[豚臨研]
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスは、その遺伝子変異の多様性により、対策の難しいウイルスとして認識されている。 本ウイルスの遺伝子解析には、変異の激しいORF5領域を用いる事が多く、制限酵素断片長多形(RFLP)パターン解析や系統樹解析が用いられる。 我々のラボでは、野外PRRSウイルス株について、継続的にRFLPパターンを調査している。系統樹解析との整合性が問われるRFLPではあるが、本ウイルスの多様性と、養豚現場での複数の株の動きを追跡する上で有用な手がかりとなると考えており、1991年以降の野外分離株におけるRFLPパターンの推移について報告する。
[昼休み(幹事会) 12:15~14:00]

4 地域ぐるみのPRRS清浄化に向けた動きの一例 (14:00~14:20)
(有)あかばね動物クリニック 水上佳大[豚臨研]
オーエスキー病フリーを維持している愛知県では、生産者を中心としてPRRS清浄化に向けた地域レベルの取組みが始まっている。この活動の流れを1~5に分けて進めている。
ステップ1 活動の主体となる組織の設立
ステップ2 生産者への活動の周知と同意
ステップ3 農場ステータスの決定
ステップ4 各農場の衛生状況をマッピング
ステップ5 清浄化に向けた活動
現時点ではステップ3の段階である。この活動は、将来的に他畜種においても地域防疫を向上させるものになりうると考えている。
5 総合討論 (14:20~14:40)

[休憩] (14:40~15:00)
一般演題(15:00~16:20)
座長:謝村錦司(協同農産株式会社)・志賀明((有)シガスワインクリニック)
1 長年オーエスキー病清浄化がうまくいっていなかった農場における清浄化事例 (15:00~15:20)
(有)サミットベテリナリーサービス 石川弘道[JASV]
長年オーエスキー病(AD)清浄化に取り組んでいながら一向に清浄化が達成できなかった一養豚場に対し、AD対策を2010年7月から実施した。従来のADワクチン接種は、自衛防疫の指定獣医師が当番制で実施していたが、抗体検査結果から接種適期を見直し、養豚管理獣医師が責任を持って接種することにした。またピッグフローの見直しを主な柱とした衛生指導を実施した。その結果、対策に取り組み始めて約2年で清浄化が達成された。本発表では、なぜ長期にわたり清浄化が達成できなかったのか? またその後なぜ短期間で清浄化が達成できたのか?などについて考察する。
2 Actinobacillus pleuropneumoniaeに関する最近の話題 (15:20~15:40)
動物衛生研究所 伊藤博哉[豚病研]
線維素性壊死性胸膜肺炎を主徴とする豚胸膜肺炎の原因菌であるActinobacillus pleuropneumoniaeには15の血清型が存在することが知られている。豚胸膜肺炎予防用ワクチンの効果は一般的に血清型特異的であり、さらに血清型によって病原性の強さに差が認められると言われており、これらの理由等から本菌の血清型別は疫学解析のためのgold standardとして、多くの検査室で実施されている。今回は、A. pleuropneumoniaeの血清型別を中心として、本菌に関する最近の話題について紹介する。
3 日本脳炎ワクチンの接種方法に関する一考察L・KかKのみか (15:40~16:00)
フォーピッグ那須 福山 聡[豚臨研]
日本脳炎ワクチンの最も一般的な接種方法は毎年母豚に一ヵ月間隔で生ワクチン(L)と不活化ワクチン(K)を接種する方法である。しかし私が定期的に訪問している農場のうち関東以北の養豚場においては、毎年母豚にKのみのワクチン接種をおこなっている農場が多いが、日本脳炎の発症例はみられない。また現在最も重要な疾病であるPRRSをコントロールする為には母豚のワクチン接種をできるだけ少なくする事が望まれている。毎年Kのみの接種でL・Kを接種するのと同等の効果が得る事ができ、かつ日本脳炎の発生がない場合には前者の接種方法を推奨してはよいのではないかと考え、臨床症状の有無と抗体検査の結果から検討をおこなった。
4 免疫学的去勢製剤(インプロバック)の大規模養豚場での具体的使用事例とその効果について(16:00~16:20)
(株)バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌、杉山 正徳[JASV]
インプロバックの2回投与により産生される、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)に対する抗体が、GnRHを特異的に中和することで精巣機能が抑制され、投与豚は免疫学的去勢状態となる。63カ国で承認されており、日本では2010年に承認された。筆者らは大規模養豚場でインプロバックの投与試験を実施したので、その具体的使用方法と結果を報告する。試験区889頭、外科的去勢区1552頭、雌区2471頭の出荷成績では、それぞれ、平均枝肉重量(kg);77.4、75.8、74.6、上物率(%);53.5、37.0、62.6、平均格落ち金額(円);22.4、36.1、18.0だった。1頭当り販売金額では、試験区は、外科的去勢区より1,660円、雌区より750円、それぞれ高かった。
閉 会(16:20~16:30)
〈お知らせ〉
・研究集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願い致します。
・研究集会終了後、懇親会 を予定しております。ふるってご参加ください。

懇親会について
時 間: 17:30~19:30
場 所: タワーホール船堀 「桃源の間」 (研究集会会場と同じビルの2階です)
会 費: 5,000円 (会費は当日受付で申し受けます)

参加人数把握のため、参加可能な方は、10月5日(金)までに、下記どちらかへ
メールでご連絡ください。
当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けします。
参加者連絡先:
JASV事務局 (有)ベネット 中村節子 venet@nifty.com   日本豚病研究会事務局 tonbyou@ml.affrc.go.jp

第80回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時:平成24年5月25日(金) 13:00~17:00
場 所:文部科学省研究交流センター
 (茨城県つくば市竹園2丁目-20-5)
 [交通案内 (研究交流センター)
  ※敷地内北側に駐車場があります]
 tel. 029-851-1331
 
1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 演 題
東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染の影響13:40~16:00
 座長:恒光 裕・川嶌健司(動物衛生研究所)

①放射線障害の基礎13:40~14:20
宮本 亨 (動物衛生研究所)
 昨年3月11日の東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故により、福島県を中心とした東北関東各県の畜産業はこれまでにないほど甚大な影響を受けている。特に風評被害は、必ずしも科学的説明だけでは解消し得ず、対応に苦慮することが多い。しかし家畜衛生に従事する者として放射線の基礎知識を理解し、生産者、消費者にいつでも説明できることが重要であると考える。そこで今日は、放射線障害に関する基本的事項について説明する。また動物衛生研究所では1950年代後半から、米ソを中心とした大気圏内核実験による放射性降下物(フォールアウト)に伴う家畜(牛、馬)骨中ストロンチウム90濃度変化を約50年にわたり測定してきた。その結果を紹介しながら、放射能が環境や家畜に与える長期的影響についても解説する。

②畜産に対する放射性物質の影響とその対策)14:20~15:00
竹中昭雄(畜産草地研究所)
 東京電力福島第1原子力発電所事故により、大量の放射性物質が大気中に放出され、東北や関東地域では広範囲に放射性物質の土壌汚染が広がった。自給飼料を活用し安全・安心な畜産物を生産するためには、土壌から飼料作物や牧草等への移行、飼料から畜産物への移行についての2段階の放射性物質の移行について、移行の程度を精密に把握するとともに、その低減策を講じる必要がある。本講演では、土壌から牧草や飼料用トウモロコシへの放射性セシウムの移行とその低減策、飼料から牛乳や牛肉への放射性セシウムの移行とその低減策、家畜における生物学的半減期について文献値や最新のデータについて概説し、残された課題と今後の研究方向について報告する。

③福島県における家畜及び畜産物への対応15:00~15:30
坂本秀樹 (福島県農林水産部畜産課)
 【初期対応】 事故直後は20~30km圏内の畜産農家約200 戸について実態調査を実施した結果、11戸を除き飼養を継続していた。 【放射線スクリーニング検査】 計画的避難区域等からの家畜の移動にあたり、牛で約1万1千頭の検査等を実施した結果、基準値を超える個体は確認されなかった。 【警戒区域内の家畜】 5月12日の総理指示に基づく措置を、所有者の同意を得た上で行ってきたところであり、3市村については処理が終了した。これら以外の6市町では、放れ畜の捕獲を最優先とした取り組みを進めている。 【畜産物の緊急時モニタリング検査】 3月19日から定期的に畜産物の検査を実施してきた結果、初日には原乳、7月には牛肉から規制値を超える放射性物質が検出され出荷が制限された。このため、市町村単位での生乳検査や適正飼養管理の再点検及び牛肉の全頭検査体制構築により出荷制限の一部が解除された。

④養豚場における対応と現状15:30~16:00
吉川康宏(グローバルピッグファーム(株)直営・委託農場担当)
 福島県の北西部に位置する直営農場は、川俣町山木屋地区にて母豚1500頭の繁殖農場および種豚・AIセンターを運営していた。東日本大震災による被害が1億円程度発生したことに加えて、東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故による計画的避難地域指定を受けて、在庫1万頭の農場を閉鎖した。農場内の最大空間線量は6μSv/h(自社測定)を超え、食肉への汚染はなかったが、堆肥は規制数値を超える放射能汚染が確認された。農場移転については、自社肥育農場の改造および賃貸豚舎にて飼育継続はできているが、規模は60%まで縮小せざるを得ない状況となった。  その他、農場閉鎖による整備状況および生産量の減少・財務成績・損害賠償・経理処理・各種行政対応の問題点を含めて報告する。

[休憩  16:00~16:10]

一般演題16:10~16:55
 座長:下地善弘(動物衛生研究所)    
                                                                                                                    
①新しい遺伝子型を示す豚丹毒菌が分離された敗血症型豚丹毒の発生事例16:10~16:25
神田 章1、小林千恵2、矢彦沢小百合3、トーホー4、長井伸也4  (1長野県長野家畜保健衛生所、
2長野県上田保健福祉事務所、3長野県松本家畜保健衛生所、4日生研株式会社)
 2009年以降、長野県内で同一性状をもつ強毒タイプの豚丹毒菌が確認された。血清型は1aでSpaA遺伝子高度変異領域の解析では、既報にある野外株の配列とは一致しなかった(SpaA-609G769A型株と仮称)。本株の分離農場における抗体検査では、抗体価が全体的に低く、GA抗体価は肥育末期まで上昇せず、LA抗体価は低値で推移し、両者の抗体価に相関はなかった。病理組織検査では、敗血症型の特徴である腎糸球体毛細血管の硝子様血栓形成が少数に限定され、これまであまり報告がない心筋壊死が多く認められた。これらのことから、本株感染豚では、従来と異なる特徴的な抗体応答パターンを示し、それと関連して重篤な敗血症型豚丹毒を発症するものと考えられた。SpaA-609G769A型株の最近の国内での分離状況についてもあわせて報告したい。

②急性敗血症罹患豚から分離された豚丹毒菌の遺伝学的解析16:25~16:40
白岩和真、下地善弘(動物衛生研究所)
 昨年、spaA 遺伝子の高度変異領域の配列に従来の野外分離株と一致しない豚丹毒菌が多数分離されたという報告がなされた。急性敗血症罹患豚から分離されたこれらの分離株の血清型は1a型であり、spaA遺伝子の609番目の塩基がG (グアニン) (spaA-609Gとする) であることから、この遺伝子産物にアミノ酸置換を伴う変異を伴っていることが明らかになっている。これらの野生株が何らかの選択圧を受けてこの変異を持つ株のみが生き残ったのか、あるいは、ある特定の毒性の強い株から派生した遺伝学的に同一(クローナル)集団の株であるのかは現在不明である。  そこで、国内における野外分離株の疫学的関連性を明らかにするため、当所における病性鑑定依頼株の中から、臨床的に(亜)急性型を示した豚から分離された血清型1a株を選択し、spaA 遺伝子の高度変異領域の配列を決定した。また、パルスフィールドゲル電気泳動による解析に加えて、これまでのゲノム解析で明らかになった一塩基多型 (SNP: Single Nucleotide Polymorphism) が認められる他の染色体領域のシークエンス解析、さらに、病原性への関与が予想される遺伝子の有無について、PCRによる解析を行った。  解析の結果、spaA-609Gは1994年に関東で分離された1株に認められるものの2008年より全国で増加傾向にあり、2011年の分離株ではすべてがこのタイプであった。また、生ワクチン株である小金井65-0.15株との関連性は低いことが示唆された。本発表では、これらの株がクローナルな集団であるのかどうかについて解析した成績を報告する。  * 本研究は一部、農林水産省レギュラトリーサイエンス事業による支援を受けて行った。

③死産子における豚サーコウイルス2型(PCV2)の検出及びPCV2ワクチン投与による効果16:40~16:55
杉山美樹1、古井丸広行1、中西信夫2、塚原隆充3、柴成宏1、小野恵利子1、木下現1
(1メリアル・ジャパン、2京都動物検査センター、3栄養・病理学研究所)
 PCV2は繁殖豚に感染した場合繁殖障害を引き起こすという報告がある。そこで、我々はPCV2陽性の国内2農場(A及びB)について死産子からPCV2の検出を試みPCV2ワクチン繁殖豚における効果について調査した。繁殖雌豚を2群に割り付け、サーコバック?を用法及び用量に従って投与した試験区と無投与の対照区を設定し、産子数、分娩及び産子の状態を観察し、由来産子について離乳頭数を確認した。また、流産及び早産した胎子、分娩時に斃死した産子についてPCV2抗原検査及び病理組織学的検査を実施した。その結果、対照区の死産子のみがPCV2陽性であり、正常産子率や離乳頭数といった繁殖成績指標に関して試験区は対照区より有意に高い結果が得られた。

 
3. 閉 会(16:55~17:00)
       <懇親会のお知らせ> 研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
        時 間:17:30~19:30
       場 所:レストラン エスポワール(つくば国際会議場内); 研究集会会場より徒歩 約10分
         〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3  TEL:029-850-3266
         http://www.epochal.or.jp/access/index.html
       会 費:5,000円

第79回日本豚病研究会・平成23年度日本豚病臨床研究会・ 平成23年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会 合同集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成23年10月12日(水) 10:00~17:00
(12:00~13:00昼休み)
場 所: タワーホール船堀 小ホール [http://www.towerhall.jp/]
〒134-0091 東京都江戸川区船堀4-1-1 TEL:03-5676-2211 (代)
◆◆◆◆◆
日  程

開  会(10:00~10:15)

豚インフルエンザについて(10:15~12:00)
座長:細川みえ(山形県庄内家畜保健衛生所)

1.豚インフルエンザウイルスのサーベイランス
動物衛生研究所  竹前善洋,廣本靖明、内田裕子、林 豪士、西藤岳彦
豚インフルエンザウイルス(SIV)は、豚に呼吸困難、咳などを主徴とする急性の呼吸器症状を引き起こし、養豚業に経済的損失を与える病原体の一つである。我々は、農場内におけるSIV循環メカニズムを調べるため、2008~2009年にタイ中央部の6つの一貫経営豚農場の調査を行った。各農場においていろいろな週齢の健康豚から鼻腔スワブを採取し、総計731検体のスワブからウイルス分離を試みた。その結果、4~8週令の離乳豚からのウイルス分離率が最も高かった。また国内では、家畜保健衛生所や国立感染症研究所との共同研究として、国内で分離されたSIVの解析を行うとともに、2009年からはベトナム北部と南部の農場・と畜場においてもSIVサーベイランスを実施している。
2.豚インフルエンザの発症事例
武田浩輝 ((有)アークベテリナリーサービス)
母豚数約200頭の一貫経営農場にて、2009年12月3日分娩舎にて咳をして食欲低下または廃絶となる母豚が3頭発生。その後、食滞の母豚数が増加し、さらに哺乳子豚にも咳が散見されるようになった。その翌日には休息ストール舎の母豚47頭に食滞が発生、12月7日には離乳舎の1号室の子豚が一斉に発咳をし、食欲廃絶状態とり、翌日には離乳舎各室の子豚にも発咳認められるようになった。この間、母豚の流産、離乳舎では2頭の死亡が確認され、そのうち1頭が脳症様の神経症状を呈していた。臨床症状、血液検査成績、死亡豚の剖検所見などから、豚インフルエンザと診断した。
3.豚におけるインフルエンザの影響とワクチンの効果について
村田 知 ((有)豊浦獣医科クリニック)

国内の養豚場において、インフルエンザ(H1N1・H2N3)の侵入とウイルスの農場内での循環による影響を、初侵入時の抗体価の推移と病変保有率の変化状況と、肺炎症状を伴う衰弱死や急性死亡の発生事例に対してのワクチン接種効果から推察した。
インフルエンザ(H1N1・H2N3)侵入に伴い、APPの抗体陽性率の増加と肺病変の増加が認められた。また、インフルエンザウイルスの循環が認められている農場において、ワクチン接種により、細菌の二次感染による肺病変の保有率低下と事故率低下が認められた。

[昼休み(幹事会  12:00~13:00)]
我が国におけるPRRSの現状(13:00~14:45)
座長:矢原芳博(日清丸紅飼料株式会社総合研究所)

1.豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の検査法-利点と欠点を知って賢く使う-
動物衛生研究所 伊関 博、高木道浩、川島健司、芝原友幸、恒光裕
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、PRRSウイルスの感染によって起こる母豚の流死産や虚弱子の分娩などの繁殖障害ならびに育成肥育豚の呼吸器病を特徴とする疾病である。PRRSウイルスの有する高い遺伝学的多様性は、しばしば検査結果の解釈を混乱させ、PRRSに対する誤った対応を採らせかねない。PRRSに対する検査法は幾つもあるためにその選択や検査結果の解釈が煩雑であり、今後は欧州型PRRSや高病原性PRRSが発生する可能性も考えてゆかねばならない。複雑さを増すばかりのPRRSではあるが、各種検査法の利点と欠点を理解することが、疾病コントロールの一助になると考える。

2.流産を主徴としたPRRS発生例

(有)サミットベテリナリーサービス 石関紗代子、石川弘道
豚繁殖・呼吸障害症候群(porcine reproductive and respiratory syndrome; PRRS)はPRRSウイルス感染によって引き起こされる、繁殖障害と呼吸器病を主な症状とする豚疾病であり、世界の養豚産業に大きな経済損失をもたらしている。母豚約1000頭を飼育する、一貫経営のある養豚場において、2009年11月末から12月上旬にかけて、流産を主徴としたPRRSが発生した。流産は主に妊娠後期の母豚に多発したが、その他の妊娠期間でも見られた。また、子豚へ垂直感染を示唆する所見も得られた。今回は、その発生の概要と被害状況、対策と結果を合わせて報告する。

3.PRRSウイルスの撲滅事例と、そこから学ぶ養豚密集地帯での農場安定化と今後の課題

(有)バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌、奥村華子

PRRSは最も経済的被害の大きい豚病の一つだが、その研究はこの10年で大きく前進し、ユニークな免疫応答、ウイルス変異、撲滅方法などが示されてきた。本発表では、これらの情報を基に筆者が日本で撲滅を試みてきた事例を報告する。成功例では、農場の火事を機にPRRSウイルスと同時に複数の病原体の撲滅に成功した事例と、大規模マルチサイト農場で7年がかりで撲滅した事例を示す。また、PRRSワクチンの継続的接種で野外株の検出が無くなった農場で、接種を停止し撲滅を試みたが失敗した事例を示す。一方、養豚密集地帯では、複数のPRRSウイルス株が存在する農場もあり、その安定化成功の事例を示し、今後の対応策や課題について検討する。

[休 憩  14:45~15:05]

口蹄疫からの復興のの現状(15:05~15:40)                                                           座長:中村高志(豊浦獣医科クリニック)

1.2010年口蹄疫被災地の畜産の現状
宮崎大学 末吉益雄

2010年4月20日口蹄疫発生、7月5日最終埋却終了、7月27日に移動制限解除、8月27日に終息宣言、8月31日から「観察牛」導入開始、10月6日にOIEへ「清浄国復帰」申請、2011年2月5日に清浄国復帰した。1270戸の農場から家畜が消え、2010年9月の調査では、再開希望は80.6%であった。11月29日、初めての子牛が誕生し、翌年4月14日に子豚が誕生した。2011年4月14日時点で、農場復帰率は49%、復帰頭数が30%である。再開戸数と頭数の種別では、酪農がそれぞれ71%、58%、和牛が51%、28%、養豚は29%と32%である。獣医師は農場訪問方法を模索しつつ、往診を再開しているが、獣医師など畜産に密接に関連する事業についてはその需要が減り、収入は激減している。
2 口蹄疫被災地域の再生復興の取り組み-特定疾病のない養豚地域の構築-

宮崎県農政水産部 畜産・口蹄疫復興対策局 畜産課家畜防疫対策室 西元俊文

昨年、本県で発生した口蹄疫では約30万頭の家畜が殺処分され、特に発生が集中した西都・児湯地域では飼養していたほぼすべての家畜を失った。県では「口蹄疫からの再生・復興方針」を策定し、防疫体制の強化や経営再開支援など、種々の取り組みを行っている。このような中、当該地域では養豚農家が中心となり「新生養豚プロジェクト協議会」を立ち上げ、ADやPRRSなど特定疾病のない地域づくりへの取り組みを開始した。県はこの支援策として導入豚の抗体検査や導入費の一部助成を行っている。5月末現在、同地域では、殺処分された養豚農家のうち55戸(44%)が経営を再開しており、繁殖成績や肥育成績の向上が認められつつある。
3 口蹄疫発生その後(児湯地域の復興の状況)

(有) シガスワインクリンニック 志賀 明

2010年4月に宮崎県で発生した口蹄疫は、29万頭の牛、豚の犠牲と全国からの多くの方々ご支援のおかげで同年8月27日に終息した。
宮崎県の児湯地域は、この口蹄疫発生で全ての牛、豚を殺処分された。養豚に関しては被害にあった生産者を中心に、西都児湯新生養豚プロジェクト協議会が設立され、豚がゼロになったこの地域の養豚再生に向けた取り組みが協議され、地域の取組として特定疾病(ADとPRRS)のない地域を目指すこととした。それに向けて、行政を含めて数々のルール作りや実際の取組を重ねて、同年11月1日より豚の導入が始まった。
今回、導入再開後の地域での着地検査や他の問題点、そして復興農場で起こった諸問題について報告する。

閉  会(16:50~17:00)

<お知らせ>
・研究集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願いいたします。
・研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。

※ 研究集会参加費:会員・学生は無料です (会員の年会費は1500円です)。
非会員は1500円です。

懇親会について
時 間: 17:45~19:45
場 所: 旬鮮菜膳 拓樹 (研究集会会場から2、3分の場所です)
東京都江戸川区船堀1-8-15 永楽ビル2F TEL 03-5696-0138
会 費: 4,000円 (会費は当日受付で申し受けます)

○懇親会参加人数把握のため、参加可能な方は、9月20日(火)までに、下記どちらかへメールでご連絡ください。
○懇親会人数に余裕があれば、当日も参加をお受けします。
懇親会参加者連絡先: JASV事務局 ㈲ベネット 中村節子    venet@nifty.com
日本豚病研究会事務局           tonbyou@ml.affrc.go.jp

第78回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成23年5月27日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
 (茨城県つくば市竹園2丁目-20-5)
 [交通案内 (研究交流センター)
  ※敷地内北側に駐車場があります]
 tel. 029-851-1331
–>
1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 第17回藤崎優次郎賞授賞式、受賞記念講演 (13:30~14:00)                                         座長:津田知幸(動衛研)  
                                                                                出口栄三郎 (鹿児島大学)
3. 演 題
高病原性豚繁殖・呼吸障害症候群(Highly pathogenic PRRS) (14:00~14:30)                        座長:矢原芳博(日清丸紅飼料)
高木道浩、井関 博、川嶌健司、芝原友幸、恒光 裕 (動物衛生研究所)
 2006年、中国において高熱を主徴とし、どの発育ステージにおいても高致死率を示す豚疾病が発生した。当初は、“Pig high fever disease”と呼ばれ、中国国内で瞬く間に流行して40万頭以上が死亡したと報告された。その後、本疾病の罹患豚よりPRRSウイルスが分離されたことから高病原性PRRSと呼ばれるようになった。2007年以降、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ラオス、タイでも同様の発生が報告されている。我が国では現在まで発生は確認されていないが、侵入防止のため国際的な監視活動が必要である。本講演では、高病原性PRRSの概要、JICAプロジェクトによるベトナムでのPRRS調査および感染実験の成績を紹介する。

備蓄用口蹄疫ワクチン等の選定ー使用の流れについて (14:30~15:00)                                座長:深井克彦(動衛研)
石丸雅敏(動物医薬品検査所)
                                                                            
 我が国において口蹄疫が発生した場合の防疫措置の一環として農林水産省は口蹄疫不活化ワクチンについては30年余、不活化濃縮抗原(いわゆるワクチンバンク)については平成14年から継続して備蓄している。この備蓄用ワクチン等の選定にあたっては、毎年度「口蹄疫予防液備蓄検討会」を開催し、ワクチンの備蓄状況、国外での発生状況、我が国への畜水産物の輸入状況等を検討の上、購入することとしており、さらに購入するワクチン等については、製造所への立入調査を実施、国内検査を行うことによりその品質確保がなされる仕組みとなっている。本発表ではその概要を説明するとともに、使用に関し2010年4月に発生した宮崎県での対応措置として初めてのワクチン接種決定に至るまでの対応を紹介する。

[休憩  15:00~15:15]

オーエスキー病清浄化について(15:15~16:30)                                                座長:鈴木 亨(動衛研)                                                                                               
①オーエスキー病の清浄化対策について(15:15~15:45)
山本健久(農水省消費・安全局動物衛生課)
 豚の伝染性疾病対策において、オーエスキー病は豚コレラに次いで重要な伝染病であるといえる。豚コレラについては、強力なワクチンを用いて清浄化が進められた結果、平成19年には国際的にも清浄国として認定された。一方、オーエスキー病については、平成3年に「オーエスキー病防疫対策要領」が策定され清浄化対策が開始された。オーエスキー病の清浄化にあたっては、病原体の特性やワクチンの効果など、豚コレラとは異なる点がいくつかあるため、このことを踏まえて対策を進める必要がある。ここでは、現在実施されている清浄化の戦略とこれまでの進捗状況などについて紹介したい。

②茨城県鹿行管内におけるオーエスキー病清浄化対策取組状況(15:45~16:15)

都筑智子、榊原裕二、佐野元彦(茨城県鹿行家畜保健衛生所)
 茨城県はオーエスキー病浸潤県であり,特に鹿行家保管内は養豚密集地域であることから、その清浄化対策に長年苦慮し、いわばオーエスキー病と共存してきた実態があった。しかし、管内生産者の意向をきっかけに、平成19年度から、生産者と共にオーエスキー病清浄化対策に取り組み、その後、平成20年のオーエスキー病防疫対策要領の改正に伴い、県内全域新体制下でオーエスキー病清浄化対策を進めてきた。取組みを開始して4年、未だオーエスキー病清浄化達成には至らないものの、この数年でオーエスキー病清浄化の兆しが少し見え始めてきたので、本発表会では現状とその取組状況を紹介する。

③総合討論(16:15~16:30)
第5回APVS(タイ)の報告((16:30~16:50)                                                     座長:宗田 吉広(動衛研)
鈴木 亨(動物衛生研究所)
 第5回APVSが3月7日から9日にかけてタイ国パタヤ市で開かれました。日本、中国、韓国、フィリピン、ベトナム、タイなど23カ国の豚産業に関わる産学官有識者(総勢約850人)が一堂に会して、アジアにおける豚産業の更なる発展に向けた研究・開発について活発な議論を行いました。タイ国農林大臣の挨拶に始まり、アジア各国の豚産業を取り巻く現状の報告へと続いて、最終的に3日間でシンポジウム計6題、ワークショップ計2題、口頭発表計73題、ポスター発表計147題という数字が表すように多くの話題・問題が提起され、連日朝早くから夜遅くまで討議をかわす密度・内容ともに充実したプログラムでした。また、学会あるいは参画企業主催のディナーやサテライトシンポジウムも連日にわたって開催され、各国の方々と交流を深めるあるいはタイ国の文化を堪能し、頭を休める機会も用意されていました。そんな大盛況の上に閉会した本学会について報告します。                           
閉会(16:50~17:00) 
   研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
         ~懇親会について~
       時 間:17:30~19:30
       場 所:レストラン エスポワール(つくば国際会議場内); 研究集会会場より徒歩 約10分
            〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3  TEL:029-850-3266
        http://www.epochal.or.jp/access/index.html
        会 費:4,000円

第77回日本豚病研究会・平成22年度日本豚病臨床研究会・平成22年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会は終了いたしました。

第77回日本豚病研究会・平成22年度日本豚病臨床研究会・
平成22年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会を下記の要領で開催いたしました。
 

事務局:日本豚病研究会事務局(動物衛生研究所内)
Tel./Fax. : 029-838-7745
e-mail:tonbyou@ml.affrc.go.jp

日 時: 平成22年11月22日(月) 9:00~17:00
      
場 所: つくば国際会議場(エポカルつくば)大ホール [http://www.epochal.or.jp/access/index.html]
 〒茨城県つくば市竹園2-20-3  
 Tel. 029-861-0001 Fax. 029-861-1209
研究集会参加費:会員・学生は無料です (会員の年会費は1500円です)。
            非会員は1500円です(当日受付で参加費1500円を納入してください)。
           (非会員の方は事前申し込みなくても大丈夫です。) 
駐車場のご案内:
南4A駐車場 をご利用ください。研究会受付で、サービス券(1日券 609円、1時間券 135円)を販売します。駐車場を出るときにその券で精算してください。
日  程
開 会(9:00~9:15)
 
シンポジウム 2010年 宮崎で発生した口蹄疫について(9:15~10:45)
  座長:吉田和生・深井克彦(動衛研)

口蹄疫発生に伴う諸問題と再建への取組みについて

志賀 明((有)シガスワインクリニック)

4月20日に宮崎県児湯郡都農町で発生報告された口蹄疫は、隣町の川南町を中心に4市6町で約29万頭もの多くの殺処分を余儀なくされた。殺処分や消毒等に加え、初めての口蹄疫ワクチンの使用等の懸命な防疫措置によって初発生報告から4ヵ月余後の8月27日に終息宣言が出された。今回の口蹄疫は宮崎県中部の有数の畜産密集地域での発生で、また国内初の豚での発生もあり、感染が爆発的に広がり、被害は甚大なものとなった。一方、初動防疫や殺処分体制、防疫措置等において様々な問題点が浮き彫りになった。今回、発生の状況や防疫措置の諸問題、また感染爆発の要因等を考察するとともに、牛と豚が1頭もいなくなった児湯地域の地域ぐるみでの養豚の再建への取り組み等についてその概要を報告する。 

宮崎県で発生した口蹄疫発生状況を追って
廣瀬和彦(明治製菓(株))

2010年4月20日に宮崎県で発生した口蹄疫の発生拡大状況を日々農場毎、畜種別に地図上にスポット・マップにてプロットし、更に気象庁による風速・風向情報も書き加えた資料について紹介する。日々の発生状況に影響する要因についてそれら資料を元に現地滞在中に意見交換したことや更にGoogle Map(写真)を拡大印刷し、そこにもスポット・マップにて発生農場をプロットし、地形の影響についても検討を試みた。スポット・マップは「疫学の父」と呼ばれるジョン・スノウ(1813~1858)が用いた古くからの方法であるが、全体の動きを知るには非常に有効な方法であった。

渦中からみた防疫業務–教訓として活かすために                                                             
                                                                             末吉益雄(宮崎大学)                                                                               

今回の口蹄疫防疫対策業務では、当学本部、県本部、新富町本部、家保での病性鑑定班、発生地での患畜殺処分班、農水の疫学調査班および堆肥モニタリング班に身を置き活動した。8月27日の終息宣言後も、動物慰霊祭、各種報告会、防疫演習などに参加した。それらの渦中からみて、今回の防疫経験を教訓として活かすためには省庁間連携(農水、厚労、防衛、警察、国運、文科など)、獣医組織連携(県、NOSAI、開業、大学、獣医師会など)、畜産・獣医連携(JA、商系)、牛・豚飼育連携などの組織力の強化が必要と考えられた。現在、眼前の現地産業復興、発生地周辺の家畜診療業務の防疫などについて活動している。

[休憩 10:45~11:00]
ワークショップ1  養豚におけるアニマルウェルフェア(11:00~12:05)
 座長:佐藤真澄(動衛研)

アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針について

菅谷公平(農林水産省生産局畜産振興課)

 欧州においては、1960年代に、密飼い等の近代的な畜産のあり方についてその問題点が提起され、英国で提唱された「5つの自由」を中心に“Animal Welfare”の概念が普及し、現在ではEU指令として、“Animal Welfare”に基づく飼養管理の方法等が規定されている。また、国際獣疫事務局(OIE)においても、アニマルウェルフェアに関する基準(ガイドライン)の検討が始まり、2005年には輸送やと畜に関するガイドラインが策定され、現在、畜舎や飼養管理に関するガイドラインの検討が進められている。
 一方で、我が国において、経済のグローバル化による輸入畜産物の増加に対応しつつ、消費者のニーズに合った安全・安心な国産畜産物を供給することにより、今後とも畜産が安定的に発展していくためには、家畜の生産性の向上を図っていくことが重要な課題である。家畜の管理を行う上で、アニマルウェルフェアに対応し、家畜を快適な環境で飼うことは、家畜が健康であることによる安全・安心な畜産物の生産につながり、また、家畜の持っている能力を最大限に発揮することにより、生産性の向上にも結びつくものと考えられる。 
 本発表では、海外のアニマルウェルフェアをめぐる状況とともに、我が国においてとりまとめられた「アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針」の概要について報告する。

豚のストレスと異常行動について―尾かじり被害低減について―  
渡邊哲夫1、沼野井憲一1、塚原均2、青山真人3

(1.栃木県畜産試験場、2.栃木県畜産振興課、3.宇都宮大学) 

 豚の異常行動の一つに、同居豚の尾をかじる尾かじり行動がある。この行動はストレスによって起こるとされている。尾かじりが起こると、発育遅延や、噛み傷から侵入した細菌等による感染症の発生など、養豚経営に対し悪影響を及ぼす。
 今回の研究はストレスを低減するような飼養管理法を確立することを目的としている。その中で、まずはストレスと関連があるとされている尾かじり行動に着目し、尾かじりの被害を低減する方法について検討を行った。

豚の非侵襲的ストレスマーカーの確立を目指して                                                                  
宗田吉広((独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)

 昨年3月に、(社)畜術協会により、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」が示された。この指針では「アニマルウェルフェア」を「快適性に配慮した家畜の飼養管理」と定義しており、家畜への不要なストレスを避け、家畜を快適な環境下で飼養することが求められるため、家畜のストレスを科学的かつ定量的に評価する手法の開発や確立が望まれる。そこで、我々は豚における非侵襲的なストレス測定法の開発およびそのストレスマーカーの開発を目指し、豚の急性ストレスである拘束ストレスをモデルとして、唾液中のサイトカイン等についてストレスマーカーとしての有用性の検討を行った。また現在、農研機構・交付金プロジェクト研究「健全性・収益性両立型養豚のための技術開発」で行っている研究課題についてもその概要を紹介する。

[昼休み(幹事会) 12:05~13:30]
ワークショップ2 豚コクシジウム症と新たな薬剤(13:30~14:15)
   座長:末吉益雄(宮崎大)

豚コクシジウム症総論
志村亀夫((独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)

 豚を終宿主(固有宿主)として寄生するコクシジウムには、Eimeria属、Isospora属およびCryptosporidium属のものがあり、中間宿主とするものにトキソプラズマ、ネオスポラ、サルコシスティスがある。従来、豚を終宿主とするコクシジウムの病原性については、様々な議論があったが、近年その中のIsospora suis感染による哺乳豚の下痢症が問題となってきた。わが国でも1970年代には既に発生の報告があり、その後散発的に症例が報告されてきた。しかし、本感染症は、オオシストが糞便中に出現する以前に感染豚が死亡することあり、診断が難しいことから養豚現場では本病への関心が低かった。最近、本病に対して有効な薬剤が発売され、現場においてその重要性が認識されるようになった。ここでは、I. suis感染症を中心に豚のコクシジウム症について解説する。 

新しく承認された薬剤の野外評価
島田隆男(千葉県農業共済組合連合会北部家畜診療所)

哺乳豚のIsospora suisによるコクシジウム病に対するトルトラズリルの有効性を野外で検討した。I.suisの重度浸潤が認められた3養豚場、計15頭の母豚から出生した0~5日齢の哺乳豚153頭を同腹単位で1対1の割合で2群に分け、投薬群は試験薬剤トルトラズリルを20㎎/㎏単回強制経口投与した。無処置群では67.7%が発症したのに対して、投薬群では発症は認められなかった。異常便の排泄頻度は、投薬群で27.1%、無処置群で82.4%と処置群が有意(p<0.05)に低かった。投薬後7~14日の1日平均増体量は投与群229.87±63.45g、対照群195.16±77.02gで群間に有意差(p<0.05)が認められた。以上の結果から、哺乳豚にトルトラズリルを20mg/kg単回経口投与することは、投与後2週間にわたりコクシジウム病の発生の防御に有効であることが示された。                                                           ワークショップ3  生産衛生管理の高度化(14:15~14:55) 座長:石川弘道(サミットベテリナリーサービス) 2009年JASVベンチマーキング結果 伊藤 貢((有)あかばね動物クリニック) JASVでは、2004年から正会員のコンサルタント先の生産データを元に毎年集計事業を実施している。2009年の、平均母豚飼養頭数は534頭(中間値265頭)、平均枝肉単価378円、平均飼料単価は45.0円、平均FCRは3.38、平均年間出荷頭数は20.6頭、ワクチンと抗生物質費は1,597円、離乳後事故率6.6%であった。   一方、PRRS陰性農場の成績は、平均出荷頭数は23.0 頭、ワクチン衛生費は808円、事故率は5.1%で、PRRSウイルスによる被害が、大きいことが再確認された。   この事業は、6年目を迎え、多くのデータが集積されてきている。今年は、宮崎での口蹄疫の影響を受けて、参加農場が減ったが、今後も継続することにより、日本の養豚の現状と変化を把握できるような指標となるよう、今後も事業に進めて行きたい。 養豚場における農場HACCPの取り組み                                      古市朋大((有)豊浦獣医科クリニック) 食の安全・安心に対する国民の関心が高まり、農林水産省は「農場生産衛生管理技術等向上対策事業」において農場HACCP認証基準の策定やHACCPを活用した衛生管理の普及・啓発を行っている。フードチェーンの最初の段階である生産現場(養豚場)での生産物(豚肉)の安全性確保のため、農場HACCPでは生産者自らがHACCP方式を活用した衛生管理に取り組む事で豚肉の危害を管理し予防する。演者らは数年前から農場HACCPの前提条件でもある健康な豚を育てるための一般的衛生管理プログラムの構築と、HACCP導入を同時進行で整備してきている。多くの養豚場が農場HACCPに取り組み易いようにソフト面の整備とPDCAサイクルによる発展型を特徴とした取り組みをしているので、その概要を紹介する。                                                                                      [休 憩 14:55~15:10] ワークショップ4 細菌による常在性疾病の現状(15:10~16:10) 座長:中村高志(豊浦獣医科クリニック) 北東北で確認された豚丹毒について 岡村雄司(おかむらアニマルクリニック) 豚丹毒は以前、多くの農場ではワクチン接種が実施されておりほぼ制圧されていた疾病であったが、近年はワクチン非接種農場の増加により散発的に確認されるようになっていた。平成21年後半から22年前半にかけて、当方が巡回する北東北の養豚場やその周辺農場において豚丹毒の発生が集中し、ワクチン接種の再開、ワクチンの種類の変更(生から不活化)、接種方法の変更(接種日齢・接種部位)、飼養環境の適正化等により一応の終息を見た。  現在の農場の豚丹毒に対する考え方や対策方法が十分でない部分も多く見られ、これらの認識不足が発生増加の一因にもなっていると考えられるので、臨床獣医師による啓蒙活動も重要になってくると考えられる。  今回は4農場で発生した豚丹毒の発生要因、実際に実施した対応方法、対策中に確認された問題点についてまとめたので報告する。 肥育農場におけるサルモネラ コレラスイスの発生と生産成績および生産コストの変化 吉川康宏(グローバルピッグファーム(株)福島農場) サルモネラ症は長年、豚の消化管と人の食中毒への関与する疾病として、養豚現場を悩ませ続けている。 最近では、豚サーコウイルス2型(PCV2)ワクチンの普及により、呼吸器疾病は減少しているが、消化管疾病は増加しており養豚現場での重要疾病となっている。  本報告では、母豚1200頭規模の肥育農場に発生したサルモネラ コレラスイス症の発生から終息までを、生産成績の変化・細菌および抗体検査・各種対策としてまとめた。更に経済損失額の算出を行い、対策費用対効果および生産コストの変化を中心に報告する。 クライアント養豚場におけるApp15型による豚胸膜肺炎の発生例 渡辺一夫((株)ピグレッツ) 千葉県内のクライアント農場において、豚胸膜肺炎(APP)の罹患豚からApp15型が検出された。2008年App発生8農場のうち10件、2009年12農場のうち2件、2010年(1-6月)7農場のうち5件のApp15型が検出された。症状は活力低下、食欲不振、40℃~41℃の発熱、被毛粗造および肺炎呼吸を呈し、急性ないし慢性の経過をとった。剖検所見は肺に境界明瞭な暗赤色の膨隆・硬化した出血部とその周囲の小葉間水腫が顕著で、免疫染色でAppの抗原が検出された。分離App15型株は多剤感受性であり、特にABPC、XNL、NFLXおよびFPに高い感受性を示し、抗生物質の治療効果は高く、本症の対策は早期発見・早期治療が有効であった。 ワークショップ5 ウイルスによる常在性疾病の現状(16:10~16:50) 座長:恒光 裕(動衛研) 肥育期の豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)症例 江口 修(JAあいち経済連畜産部養豚担当) 豚サ―コウイルス関連疾病(PCVAD)は、一般に離乳後2~4カ月齢の子豚でみられる疾病であるが、出荷直前の肉豚でのPCVAD症例を発表する。2009年末に母豚500頭一貫農場の肉豚舎で出荷直前の肉豚の斃死が多いことから病性鑑定を実施した。リンパ節の腫大、胃潰瘍および胃出血、肺炎、肝炎などの解剖所見および臓器からの遺伝子検出からPCVADと診断した。またサーコ不活化ワクチンを母子ともに取り入れている農場であることから、原因を調査したところ、ワクチン接種の方法や従業員への教育などが表面化され、その対策後、死亡数減少の改善があった。 PRRS抗体保有状況の推移-日本でのPRRS浸潤状況はどう変化したか- 矢原芳博(日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ) 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、この20年以上の間、世界の養豚業界において特別な疾病として存在し続けている。 ここ数年は、豚サーコウイルス2型(PCV2)ワクチンの上市により、豚呼吸器病症候群(PRDC)の影響は軽減されつつあるが、現時点においてもPRRSのコントロールが養豚生産のコスト低減における最重要課題である事には変わりない。  当研究所では1993年より間接蛍光抗体法(IFA)、1998年より固相酵素抗体法(ELISA)により抗体検査を実施しているが、今回は抗体検査開始時より現在までの抗体調査成績の推移をまとめた。この間の抗体陽性率の動向、PCV2ワクチン接種による離乳後事故率低減の前後での抗体保有状況の推移について報告する。    閉 会(16:50~17:00) 〈お知らせ〉 ・研究集会終了後、懇親会 を予定しております。ふるってご参加ください。 懇親会について 時 間: 18:00~20:00             場 所: ホテルグランド東雲 本館有明の間            会 費: 5000円  参加人数把握のため、参加可能な方は、下記どちらかへメールでご連絡ください。  11月10日(水)までにお願い致します。 参加者連絡先: ベネット 中村節子 venet@nifty.com  あるいは   日本豚病研究会事務局 tonbyou@ml.affrc.go.jp   尚、参加は当日も受け付けております。

第76回日本豚病研究会研究集会は中止となりました。

第76回日本豚病研究会研究集会は中止となりました。

日 時: 平成22年5月24日(月) 13:00~17:00(中止します。)
場 所: 東京大学弥生講堂一条ホール [http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/]
(東京都文京区弥生1-1-1、東京大学農学部内)
Tel. 03-5841-8205 Fax. 03-5841-5028
◆◆◆◆◆
第76回日本豚病研究会研究集会中止のお知らせ

  平成22年5月24日(月)東京大学弥生講堂一条ホールにて予定されておりました、第76回日本豚病研究会研究集会を中止することをご連絡致します。
宮崎県 での口蹄疫発生にあたっては、多くの養豚獣医師および関係者がその防疫対応に従事しているところですが、会員の皆様におかれましても防疫に専念していだくために、事務局により研究集会の中止を決定致しました。
 ご出席の準備をされていたところ大変恐縮ではございますが、ご理解いただければ幸いです。  
 秋の研究集会につきましては、あらためて事務局よりご案内致します。

日本豚病研究会会長 柏崎 守

1.定期総会
2.演 題
 1)養豚におけるアニマルウェルフェア(13:15~15:00)座長:佐藤真澄

①アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針について 13:15~13:50
 農林水産省生産局畜産振興課  松本隆志
②豚のストレスと異常行動についてー尾かじり被害低減についてー 13:50~14:25
栃木県畜産試験場  渡邊哲夫
③豚の非侵襲的ストレスマーカーの確立を目指して14:25~15:00
動物衛生研究所宗田吉広
 
  [休 憩 15:00~15:10]

 2)豚コクシジウム症と新たな薬剤(15:10~16:20)座長:末吉益雄

①豚コクシジウム症総論 15:10~15:45
動物衛生研究所志村亀夫
②新しく承認された薬剤の野外評価15:45~16:20
千葉県農業共済組合連合会北部家畜診療所  島田隆男

 3)一般演題(16:20~17:00)  座長:下地善弘

①新生豚における先天性過骨症の発生報告 16:20~16:40 
  ピグレッツ早川結子
②浮腫病由来株の性状  16:40~17:00
沖縄県家畜衛生試験場  又吉正直

  
※研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
研究集会参加費:会員・学生は無料です (会員の年会費は1500円です)。
非会員は1500円です。

第75回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成21年5月22日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
 (茨城県つくば市竹園2丁目-20-5)
 [交通案内 (研究交流センター)
  ※敷地内北側に駐車場があります]
 tel. 029-851-1331
1. 定期総会 (13:00~13:15)
2. 第16回藤崎優次郎賞授賞式、受賞記念講演 (13:20~14:00)
 
     (座長)下地 善弘

受賞記念講演
河合 透、牛島稔大 ((財)化学及血清療法研究所)
3. 演 題
    (座長)志賀 明

南九州における豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)とワクチン使用後の効果 (14:00~14:30)
藤原孝彦 (藤原動物病院)
 豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)は全国的に大きな問題になっていた。特に一昨年(2007年)にはその被害は爆発的な広がりとなった。2008年3月にPVC2不活化ワクチンが日本で始めて上市され、被害の集中する地域より使用可能になる。現在では子豚用母豚用あわせ3種類の不活化ワクチンが使用可能となっている。今回養豚密集地域である南九州におけるPCV2ワクチン使用後の現場での反応や生産性の推移を検討したのでその結果を報告する。

農場の病原体にPCV2ワクチンが与えた影響 (14:30~15:00)
金田正彦、岡田宗典、鷺谷敏一、佐々木隆志(全農家畜衛生研究所)
 あるPCVAD発生農場でPCV2ワクチン使用前後の斃死豚からの病原体検出状況を調査したところ、使用前はPCV2、サルモネラ、PRRS、マイコプラズマなど多様な病原体が検出されていたが、使用後はPCV2とサルモネラが検出されなくなった。当所の検査結果集計でもPCV2陽性率(血清、肺)、サルモネラ陽性率(肺)は2008年に減少している。このことから、PCV2ワクチンは的確に使用すれば農場のPCV2だけでなくサルモネラなど一部の病原体の動きに影響を与えることが分かった。しかしながら、PRRSやマイコプラズマなど検査結果に大きな変化が認められない病原体もいることから、PCV2ワクチン接種後も衛生対策の重要性は変わらない。

農場でのPCV2ワクチン接種による血清中ウイルス量の変化 (15:00~15:30)
鈴木孝子1、矢光潤2、 島田隆男2、 芦澤尚義3、伊藤尚志3、佐藤岳彦3、平野和則4、恒光裕1 (1動物衛生研究所 ウイルス病研究チーム、2千葉県農業共済連合会 北部家畜診療所、3千葉県中央家畜保健衛生所、4千葉県海匝農林振興センター)
 3農場において豚サーコウイルス2型(PCV2)関連疾病(PCVAD)の流行前、流行時および子豚用ワクチン使用時の3時点で発育ステージ別血清を採取し、リアルタイムPCR法でPCV2量を測定した。3時点いずれにおいてもPCV2の感染は確認されたが、60-120日齢の血清中PCV2量はPCVAD流行時で高値を示し、ワクチン接種時には流行前のレベル以下に減少した。離乳後事故率は血清中PCV2量と同様の推移を示し、ワクチン接種時には流行前と同程度まで低下した。次に、PCVAD発生が確認されていない1農場でワクチン接種子豚と非接種子豚を継時的に採血し、血清中PCV2量を比較した。その結果、両群とも120日齢でPCV2量は増加したが、接種群のウイルス量は非接種群に比べて極めて低値を示した。これらの結果から、血清中PCV2量の測定はワクチン効果を確認する一指標になることが明らかとなった。

休憩 (15:30~15:40)
(座長)河合 透、津田知幸

豚丹毒菌ワクチンベクターを利用した経口投与型多価ワクチンの開発 (15:40~15:55)
小川洋介1、大石英司2、佐野陽之2、 宗田吉広1、下地善弘1, 3 ( 1動物衛生研究所、2(株)微生物化学研究所、3岐阜大学大学院連合獣医学研究科)
 動物用ワクチンは注射による投与が主流であるが、接種時には1頭ずつ保定しなければならず、多大な労力を必要とする。そこで、最も省力化が期待できる経口投与型の多価ワクチンを開発するため、Mycoplasma hyopneumoniaeの付着因子であるP97蛋白を豚丹毒菌Koganei 65-0.15株の菌体表層に発現させた。この株を人工乳に混ぜSPF豚に給餌後、豚丹毒菌強毒株、ならびに、M. hyopneumoniae強毒株による感染実験を行った。豚丹毒菌攻撃に対して、菌を含まない人工乳を飲ませた対照群は臨床症状を呈したが、免疫群は臨床症状も示さず生存した。さらに、M. hyopneumoniaeによる肺炎の病変形成の割合は、対照群と比較して免疫群では有意に低かった。これらの結果から、P97発現豚丹毒菌の経口投与は、豚丹毒菌および豚マイコプラズマ肺炎に対する防御効果を誘導することが示唆された。

粘膜ワクチンによるブタ浮腫病予防法の開発に向けて (15:55~16:10)
川本恵子1、刈屋晴子1、澤田和敏2、瀧田英司2、松尾健史2、加藤晃2、牧野壮一1 ( 1帯広畜産大学大動物特殊疾病研究センター・食品有害微生物分野、2出光興産株式会社 先進技術研究所 環境・バイオ研究室、3奈良先端科学技術大学院大学)
 ブタ浮腫病(ED, edema disease)は、腸管に定着した志賀毒素産生大腸菌(STEC, Shiga toxin-producing Escherichia coli)の産生する外毒素Stx2eにより引き起こされる毒血症である。離乳後1−2週の子豚で発症し、死亡率が高く、再発や発育不良などにより、生産性の低下を招き、経済的損失も少なくない。浮腫病はここ数年全国的に発生が増加しているが、原因菌の多剤耐性化が報告されるなど、抗生物質に替わる予防法または治療法の早期開発が望まれている。本病のように腸管粘膜が感染の場である疾病の予防法としては、粘膜ワクチンが有望視されており、我々は“食べるワクチン”による豚浮腫病の制御を目指している。今回、最近我々が行った粘膜免疫の豚臨床試験の結果について報告し、ブタ浮腫病粘膜ワクチンの有用性と課題について報告する。

豚における口蹄疫 (16:10~16:30)
大橋 誠一 (動物衛生研究所 国際重要伝染病研究チーム)
 口蹄疫の疫学を考える上で感染動物の疫学的役割を考えることは重要である。牛と豚を比較した場合、牛は豚に比べ十分の一以下の接種量で感染・発症する。しかし、感染豚の排泄量は牛の千倍以上になるといわれている。日本のような飼育密度の高い養豚形態のところで口蹄疫が発生すると、爆発的な感染が起こり、短期間のうちに感染が拡大する。今回は豚に焦点を当てて口蹄疫について概説する。 口蹄疫の発生は畜産だけの問題ではなく、社会や経済に与える影響も大きい。侵入防止、早期発見体制の強化および早期撲滅の実施が迅速かつ正確に実行できるよう日ごろからの防疫活動のシミュレーションを行うことはいざという時に役立つであろう。

豚における抗ウイルス剤による口蹄疫ウイルスの排泄抑制 (16:30~16:45)
深井克彦1、大橋誠一1、小野里洋行1、森岡一樹1、山添麗子1、吉田和生1、坂本研一1、高橋和美2、古田要介2 (1動物衛生研究所 海外病研究施設、 2富山化学工業株式会社 綜合研究所)
 豚が口蹄疫ウイルスに感染した場合、その排泄量は牛の1000~2000倍と報告されている。そのため、ワクチン非接種清浄国において豚で口蹄疫が発生した場合、大流行となる可能性が高い。一方、感染豚のウイルス排泄量を抑制する方法を開発した場合、口蹄疫の防圧に有用であると考えられる。そこで、ワクチンとは異なり即効性が期待できる抗ウイルス剤を用いた口蹄疫ウイルスの排泄抑制法について検討した。in vitroの実験において口蹄疫ウイルスに増殖阻害作用を示した化合物を用いて豚における排泄抑制効果を調べた。本講演においては、2000年のわが国における口蹄疫発生時に分離されたO/JPN/2000株および1997年の台湾における口蹄疫発生時に分離され、豚に対して高い親和性を示すO/Taiwan/97株に対する抗ウイルス剤の排泄抑制効果の概要を報告する。

第74回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

第74回日本豚病研究会研究集会の概要

日 時: 平成20年10月20日(月) 13:00~17:25
場 所: 東京大学弥生講堂・一条ホール
 (東京都文京区弥生1-1-1 東京大学農学部内) [http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/]
 Tel. : 03-5841-8205 Fax. : 03-5841-5028
演 題:
(座長)小林秀樹

豚胸膜肺炎(13:00-13:45)
動物衛生研究所 伊藤博哉
 豚胸膜肺炎は、線維素性壊死性胸膜肺炎を主徴とする豚の重要な細菌性呼吸器系疾病の一つである。本病の罹病率及び致死率は高く,養豚産業に与える経済的被害は大きい。その重要性から、本病及びその起因菌Actinobacillus pleuropneumoniaeの研究は、世界的に幅広くかつ詳細に実施されてきている。今回はA. pleuropneumoniaeの細菌学的知見を中心として、豚胸膜肺炎に関する現在までの知見を紹介する。

多臓器に膿瘍の見られたアクチノバチルス症の1例(13:45-14:15)
動物衛生研究所 久保正法、芝原友幸
 Actinobacillus pleuropneumoniae(App)は、通常は肺に特徴的な病変を形成する。今回は、多臓器に膿瘍を形成した変わったApp感染症を紹介する。  患畜は約50日齢の子豚で、削痩、被毛粗剛のため鑑定殺された。剖検では、肺の前葉から中葉にかけて肝変化し、微小膿瘍も見られた。肝には全体的に点状出血と微小膿瘍が見られた。ソケイリンパ節は腫大し水腫様であった。細菌学的には、肺からAppとPasteurellaが分離され、肺門リンパ節からPasteurellaとHaemophilus parasuisが分離された。組織学的には、肝、脾、肺、リンパ節、膀胱に中に菌塊を含む多発性膿瘍が見られた。抗App 2型による免疫染色により、菌は陽性に反応した。

と畜場搬入豚におけるActinobacillus pleuropneumoniae 2型による多発性肉芽腫性肝炎(14:15-15:15)
富山県食肉検査所1、動物衛生研究所2、宮城県仙台家畜保健衛生所3 ○大場剛実1、芝原友幸2、小林秀樹2、高島阿里子1、名越雅高1、長内利佳2,3、久保正法2
 多発性結節性肝炎と病原体の関連を明らかにするために、42農場由来66,894頭のと場搬入豚の肝臓を肉眼的に検査したところ、19頭(10農場由来)の多発性肝炎を検出した。組織学的に11頭(3農場由来)にアステロイド小体を伴う肉芽腫がみられ、小体内にグラム陰性菌を認めるものもあった。免疫組織化学的にこの細菌はA. pleuropneumoniae (App)2型抗体に反応した。類似する所見が、肺(7/7頭)、脾臓(1/5頭)、リンパ節(1/9頭)でもみられた。細菌学的にApp 2型が、肝臓(7/11頭)、肺(7/7頭)と脾臓(1/6頭)から分離された。これらの結果から、App 2型が肥育後期の豚に肺炎を伴う多発性肉芽腫肝炎、脾炎、リンパ節炎を引き起こすことが分かった。

(座長)高木道浩

PRRSの発生による経済的な損失評価(15:25-15:55)
動物衛生研究所1、バリューファーム・コンサルティング2、サミットベテリナリー サービス3     ○山根逸郎1、呉克昌2、石川弘道3 、高木道浩1、吉井雅晃1、沖永龍之1、宮崎綾子1、鈴木孝子1、芝原友幸1、久保正法1、小林秀樹1、恒光裕1
 PRRSの発生による経済損失の報告は少ない。今回、過去にPRRSの発生があった5農場の経済損失を、発生期と非発生期の6項目(流産や事故率等)の生産指標の差から計算し、PRRS発生期間中の1母豚1ヶ月当たりの項目ごとの平均損失額を算出した。全国の養豚農家(n=116)を対象に、アンケートを用いて過去2年間のPRRS発生と、発生に伴う上記の6項目の損耗の有無を調べ、前述した項目ごとの平均損失額を当てはめ、発生による損失を算出した。この結果と全国の母豚数との比率より、全国の養豚場のPRRS発生による年間損失は約400億円と推定され、流産(34.9%)、離乳期の事故率の増加(24.2%)、肥育期の事故率の増加(22.2%)による損失割合が高かった。

PRRSから学ぶ養豚疾病対策の将来像(15:55-16:55)
スワイン・エクステンション&コンサルティング、 ミネソタ大学豚病撲滅センター 大竹 聡
 豚繁殖呼吸障害症候群(PRRS)は、その経済被害の大きさから現在の世界養豚産業において最も重要視されている疾病である。アメリカではPRRSを克服するための様々な研究と現場検証が行われ結果を出してきている。かたや日本ではPRRSという名前だけが一人歩きしているような状態で必ずしも正しい情報が浸透していないのが現状であり、その認識と対策に非常に大きなギャップを感じる。今回は演者の国内外における知見・経験をもとにPRRSの実態とその対策法について明らかにしたい。アメリカのPRRS対策の取り組みの歴史と今後の展望を垣間見ることで、業界全体としての養豚疾病対策の本来あるべき姿が浮かび上がってくる。

(座長)津田知幸

オーエスキー病防疫対策要領の改正について(16:55-17:25)
農林水産省消費・安全局動物衛生課 荻窪恭明
 オーエスキー病については、平成3年度から「オーエスキー病防疫対策要領」に基づき、発生状況等に応じ、地域区分を設け、清浄化対策を進めてきました。これまでの取組の結果、本病の浸潤の拡大は阻止してきたものの、浸潤地域の清浄化は、一部に止まっている状況にありました。本病の清浄化に向けた更なる対策を図るため、昨年6月にオーエスキー病防疫技術検討会を設置し、本病対策のあり方について検討を行い、本年6月には、この検討結果等を踏まえ、本要領を改正したところです。遅くとも本年11月中までにはオーエスキー病の早期の清浄化に向けた新たな防疫対応を推進していくこととしています。