第81回日本豚病研究会・平成24年度日本豚病臨床研究会・ 平成24年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会(事務局:日本豚病研究会)は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会 合同集会を下記の票量で開催いたしました。

日 時: 平成24年10月26日(金) 10:00~16:30
場 所: タワーホール船堀(小ホール)
〒134-0091 東京都江戸川区船堀4-1-1
TEL:03-5676-2211 (代)
http://www.towerhall.jp/

日 程

開 会(10:00~10:15)

PRRSの現状(10:15~14:40)
座長:恒光 裕(動物衛生研究所)
1.日本における地域ぐるみPRRS撲滅活動の現状と今後の展望:
P-JET(PRRS撲滅推進チーム・ジャパン)の活動アップデイト (10:15~10:55)
スワイン・エクステンション&コンサルティング、ミネソタ大学豚病撲滅センター、
PRRS撲滅推進チーム・ジャパン(P-JET)    大竹 聡[JASV]
現在の世界の養豚産業において最も経済損害の大きい疾病の一つが、PRRSである。アメリカではすでに数年前から、地域ぐるみPRRS撲滅対策が積極的に進んでいる。そのような背景を受け、2011年7月、日本国内の有志の獣医師・研究者によって「PRRS撲滅推進チームJAPAN(P-JET:PRRS- Japan Elimination Team)」が発足した。 農場単位および地域ぐるみにおけるPRRS清浄化を技術的にサポート・推進できる産官学連携チームの構築を目的とし、現在まで諸々の活動を続けている。本発表では、その活動アップデイトを紹介する。
2 PRRS感染による経済的な被害 (10:55~11:35)
動物衛生研究所 山根逸郎[豚病研]
PRRSは、経済的な損失の大きな疾病である。動物衛生研究所(動衛研)と日本養豚開業獣医師協会(JASV)が行った研究高度化事業(H18-20)において、PRRSの発生による全国の養豚農家の経済損失を283億円/年と推定した。 また動衛研とJASVが2010年より行っている共同研究の結果、PRRS陰性農家は陽性農家に比較して、離乳後事故率が2.9%低く、飼料要求率は0.3低いことが明らかになった。 これは、母豚300頭の農家でPRRSの撲滅により、事故率の減少により353万円、飼料要求率の改善により576万円、合わせて929万円/年間の増収益となることが推定された。 本発表においては、上記の2つの研究内容を紹介する。

3 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスの遺伝子変異の推移 ~制限酵素断片長多型(RFLP)パターンを中心に~ (11:35~12:15)
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博[豚臨研]
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスは、その遺伝子変異の多様性により、対策の難しいウイルスとして認識されている。 本ウイルスの遺伝子解析には、変異の激しいORF5領域を用いる事が多く、制限酵素断片長多形(RFLP)パターン解析や系統樹解析が用いられる。 我々のラボでは、野外PRRSウイルス株について、継続的にRFLPパターンを調査している。系統樹解析との整合性が問われるRFLPではあるが、本ウイルスの多様性と、養豚現場での複数の株の動きを追跡する上で有用な手がかりとなると考えており、1991年以降の野外分離株におけるRFLPパターンの推移について報告する。
[昼休み(幹事会) 12:15~14:00]

4 地域ぐるみのPRRS清浄化に向けた動きの一例 (14:00~14:20)
(有)あかばね動物クリニック 水上佳大[豚臨研]
オーエスキー病フリーを維持している愛知県では、生産者を中心としてPRRS清浄化に向けた地域レベルの取組みが始まっている。この活動の流れを1~5に分けて進めている。
ステップ1 活動の主体となる組織の設立
ステップ2 生産者への活動の周知と同意
ステップ3 農場ステータスの決定
ステップ4 各農場の衛生状況をマッピング
ステップ5 清浄化に向けた活動
現時点ではステップ3の段階である。この活動は、将来的に他畜種においても地域防疫を向上させるものになりうると考えている。
5 総合討論 (14:20~14:40)

[休憩] (14:40~15:00)
一般演題(15:00~16:20)
座長:謝村錦司(協同農産株式会社)・志賀明((有)シガスワインクリニック)
1 長年オーエスキー病清浄化がうまくいっていなかった農場における清浄化事例 (15:00~15:20)
(有)サミットベテリナリーサービス 石川弘道[JASV]
長年オーエスキー病(AD)清浄化に取り組んでいながら一向に清浄化が達成できなかった一養豚場に対し、AD対策を2010年7月から実施した。従来のADワクチン接種は、自衛防疫の指定獣医師が当番制で実施していたが、抗体検査結果から接種適期を見直し、養豚管理獣医師が責任を持って接種することにした。またピッグフローの見直しを主な柱とした衛生指導を実施した。その結果、対策に取り組み始めて約2年で清浄化が達成された。本発表では、なぜ長期にわたり清浄化が達成できなかったのか? またその後なぜ短期間で清浄化が達成できたのか?などについて考察する。
2 Actinobacillus pleuropneumoniaeに関する最近の話題 (15:20~15:40)
動物衛生研究所 伊藤博哉[豚病研]
線維素性壊死性胸膜肺炎を主徴とする豚胸膜肺炎の原因菌であるActinobacillus pleuropneumoniaeには15の血清型が存在することが知られている。豚胸膜肺炎予防用ワクチンの効果は一般的に血清型特異的であり、さらに血清型によって病原性の強さに差が認められると言われており、これらの理由等から本菌の血清型別は疫学解析のためのgold standardとして、多くの検査室で実施されている。今回は、A. pleuropneumoniaeの血清型別を中心として、本菌に関する最近の話題について紹介する。
3 日本脳炎ワクチンの接種方法に関する一考察L・KかKのみか (15:40~16:00)
フォーピッグ那須 福山 聡[豚臨研]
日本脳炎ワクチンの最も一般的な接種方法は毎年母豚に一ヵ月間隔で生ワクチン(L)と不活化ワクチン(K)を接種する方法である。しかし私が定期的に訪問している農場のうち関東以北の養豚場においては、毎年母豚にKのみのワクチン接種をおこなっている農場が多いが、日本脳炎の発症例はみられない。また現在最も重要な疾病であるPRRSをコントロールする為には母豚のワクチン接種をできるだけ少なくする事が望まれている。毎年Kのみの接種でL・Kを接種するのと同等の効果が得る事ができ、かつ日本脳炎の発生がない場合には前者の接種方法を推奨してはよいのではないかと考え、臨床症状の有無と抗体検査の結果から検討をおこなった。
4 免疫学的去勢製剤(インプロバック)の大規模養豚場での具体的使用事例とその効果について(16:00~16:20)
(株)バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌、杉山 正徳[JASV]
インプロバックの2回投与により産生される、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)に対する抗体が、GnRHを特異的に中和することで精巣機能が抑制され、投与豚は免疫学的去勢状態となる。63カ国で承認されており、日本では2010年に承認された。筆者らは大規模養豚場でインプロバックの投与試験を実施したので、その具体的使用方法と結果を報告する。試験区889頭、外科的去勢区1552頭、雌区2471頭の出荷成績では、それぞれ、平均枝肉重量(kg);77.4、75.8、74.6、上物率(%);53.5、37.0、62.6、平均格落ち金額(円);22.4、36.1、18.0だった。1頭当り販売金額では、試験区は、外科的去勢区より1,660円、雌区より750円、それぞれ高かった。
閉 会(16:20~16:30)
〈お知らせ〉
・研究集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願い致します。
・研究集会終了後、懇親会 を予定しております。ふるってご参加ください。

懇親会について
時 間: 17:30~19:30
場 所: タワーホール船堀 「桃源の間」 (研究集会会場と同じビルの2階です)
会 費: 5,000円 (会費は当日受付で申し受けます)

参加人数把握のため、参加可能な方は、10月5日(金)までに、下記どちらかへ
メールでご連絡ください。
当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けします。
参加者連絡先:
JASV事務局 (有)ベネット 中村節子 venet@nifty.com   日本豚病研究会事務局 tonbyou@ml.affrc.go.jp