第87回日本豚病研究会・平成27年度日本豚病臨床研究会・ 平成27年度日本養豚開業獣医師協会 第6回合同集会(事務局:日本豚病研究会)は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会第6回合同集会(事務局:日本豚病研究会)を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成27年10月16日(金)
場 所: 明治ホールディングス株式会社 本社ビル 地下1階講堂
〒104-0031 東京都中央区京橋二丁目4番16号
Tel 03-3273-3430

日 程

開 会(10:00~10:05)

統一テーマ「豚流行性下痢(PED)を検証する」
10:05~16:10

1.わが国におけるPEDウイルスの特徴
座長:末吉益雄(宮崎大学)
①PEDウイルス2013年国内分離株の肥育豚における病態解明(10:05~10:35)
農研機構 動物衛生研究所 宮﨑綾子 他[豚病研]
②我が国で検出されたPEDウイルスS遺伝子変異体の病原性の相違(10:35~11:05)
農研機構 動物衛生研究所 鈴木 亨[豚病研]

2.海外におけるPEDの発生状況
座長:末吉益雄(宮崎大学)
海外におけるPEDの現状について(11:05~11:35)
農水省消費・安全局動物衛生課 森垣孝司[豚病研]

昼休み(11:35~13:00) [日本豚病研究会幹事会]

3.国内のPED対策と検証
座長:岡田宗典((株)さくらベテリナリークリニック)・座長:藤原孝彦(藤原動物病院)
①PED感染拡大防止のための疫学調査からみた食肉処理場の交差汚染防止対策
(13:00~13:20)
群馬県西部家畜保健衛生所 瀧澤勝敏 他[豚病研]
②防疫対策における豚生体輸送トラックの検証(13:20~13:40)
鹿児島県経済農業協同組合連合会 本田宣明[豚臨研]
③PEDの感染伝播に関連するリスク因子の疫学調査(13:40~14:00)
宮崎大学 佐々木羊介 他[豚臨研]
④ベンチマーキングデータを用いた検討(14:00~14:20)
農研機構 動物衛生研究所 山根逸郎[豚病研]
⑤PEDが分娩舎で初発生したD農場での対応策とその効果について(14:20~14:40)
(有)シガスワインクリニック 志賀 明[JASV]

休 憩(14:40~15:00)

⑥PED再発農場での対応とその経過(15:00~15:20)
(株) バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌[JASV]
⑦PED発症防止のためのモニタリング検査方法(15:20~15:40)
エム・エス・シー(株) 谷口笑子[JASV]

4.総合討論(15:40~16:10)
座長:末吉益雄(宮崎大学)

一般口演
座長:木島まゆみ(農水省動物医薬品検査所)
①乳器の追跡調査(16:10~16:30)
ピッグケア 田中正雄[豚臨研]

②ゲノムから見た豚丹毒菌国内分離株の進化と多様性(16:30~16:50)
農研機構 動物衛生研究所 下地善弘[豚病研]

閉 会(16:50~17:00)

  • <懇親会について>研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
  • 時間: 17:40~19:40
    場所: アンジェリオン オ プラザ 東京
    東京都中央区京橋3-7-1 相互館110タワー
    (合同集会会場のすぐそば)
    http://tokyo.anjelion.jp/
    会費: 5,500円(会費は当日受付で申し受けます。)
  • 参加人数把握のため、参加可能な方は、9月25日(金)までに下記の連絡先に
    メールにてご連絡ください。
    なお、当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けします。
  • 懇親会参加者連絡先:日本豚病研究会事務局
    e-mail: tonbyou@ml.affrc.go.jp

講演要旨

統一テーマ「PEDを検証する」

1.わが国におけるPEDウイルスの特徴
①PEDウイルス2013年国内分離株の肥育豚における病態解明
農研機構 動物衛生研究所 宮﨑綾子、芝原友幸、鈴木 亨、
川嶌健司、生澤充隆、山川 睦、大橋誠一
2013年10月より国内で再興した豚流行性下痢(PED)は、発生から約1年半で39都道県において約150万頭が発症し約47万頭が死亡する未曾有の流行となった。遺伝子解析により、2013年発生例より分離したOKN-1/2013株を含む主な2013-2014年国内株は2013年以降の米国、韓国および台湾流行株に近縁である一方、過去国内株とは遺伝学的に異なることが判明している。そこで、我々はOKN-1/2013株の肥育豚における感染性、ウイルス排泄および体内分布について調査したので報告する。

②我が国で検出されたPEDウイルスS遺伝子変異体の病原性の相違
農研機構 動物衛生研究所 鈴木 亨
2013年10月から我が国では7年ぶりに豚流行性下痢(PED)が大流行した。当研究所では、今回のウイルス流行株の遺伝学的特徴を把握するため、各県から持ち込まれた複数のウイルス株について、主にスパイク蛋白質をコードするS遺伝子を中心に遺伝子解析を行ってきた。その結果、現在までに当該遺伝子が異なる少なくとも3種類のウイルス株が分離されてきた。S遺伝子は元来コロナウイルスの病原性と密接に関わる因子であることから、得られた変異体の病原性を調べるために、無菌豚を使用して感染実験を実施したので、それらの結果について報告する。

2.海外におけるPEDの発生状況
海外におけるPEDの現状について
農水省消費・安全局動物衛生課 森垣孝司
豚流行性下痢(PED)は、1971年に英国で最初に確認・報告され、2011年以降は、アジア及び北米において、多くの幼若豚に対する高い罹患率と死亡率があったことが報告された。こうした事態を受け、2014年10月、国際獣疫事務局(OIE)は本病に関するテクニカルファクトシートを公表しており、健康ステータスの明らかな豚の導入、農場内における豚、物品、人の移動の管理、車両及び器材の消毒、死亡豚及びスラリーの適切な処理等がウイルスの侵入と拡散防止に最も有効な措置であるとの見解を示している。日本と同様に、米国等においても、こうした厳格なバイオセキュリティの遵守をもって、本病の発生をコントロールしている。

3.国内のPED対策と検証
①PED感染拡大防止のための疫学調査からみた食肉処理場の交差汚染防止対策
群馬県西部家畜保健衛生所 瀧澤勝敏、佐藤洋子、林省二
2014年4月以降、群馬県でも豚流行性下痢が感染拡大した。その一因として食肉処理場を介した交差汚染が危惧されたため、県では食肉処理場関係者と衛生対策を協議し、入場から退場までの交差汚染防止対策をマニュアル化して生産者等に周知した。後日、マニュアルの遵守状況を確認する目的で生産者に疫学調査を実施したところ、出荷豚の積み込み時や処理場内における作業着・靴の履き替え、使用済み作業着の密閉保管、作業後の手指消毒等の実施率が低いことを確認した。これらの課題について生産者、家畜商、運搬業者らの理解をより深めるため、広報や実演講習等により食肉処理場を介した交差汚染防止対策について啓発したので概要を報告する。

②防疫対策における豚生体輸送トラックの検証
鹿児島県経済農業協同組合連合会養豚事業部養豚課 本田宣明
2013年より国内で流行した豚流行性下痢(PED)は、その後爆発的に感染が拡大し、甚大な被害を被っている。PEDの農場内侵入経路として、PED発症豚の下痢便で汚染された野生動物、人、車両等の可能性が指摘されており、PEDを含めた疾病の農場内侵入を阻止するため、これらのポイントについて改めて実施状況を確認し、常に高いレベルの防疫管理を実践することが必要である。そこで、今回、PEDの侵入経路の一つの可能性として指摘されている車両について、本会が生体輸送防疫レベルの向上を図る目的で実施した豚生体輸送トラックの拭取り検査結果をもとに、防疫管理を検証したので報告する。

③PEDの感染伝播に関連するリスク因子の疫学調査
宮崎大学 佐々木羊介、関口 敏、末吉益雄
国内の豚流行性下痢(PED)の伝播経路は、地域内で感染が伝播した地域伝播と、全く感染がなかった地域に新規で感染が伝播した長距離伝播に分類することが出来る。そこで、各々の伝播経路に関連するリスク因子を調査するために、疫学調査を実施した。調査にはアンケート調査による症例対照研究(ケースコントロール研究)を用いた。養豚臨床獣医師(日本豚病臨床研究会会員)を対象として2014年12月に質問票を配布し、2013年10月から2014年8月末(1年目の流行期)における各農場のPEDの発症状況およびその前後における飼養管理について調査を実施した。回収されたPED陽性129農場および陰性129農場の調査結果を、「自農場周辺におけるPED陽性農場の存在の有無」で分類し、地域伝播グループおよび長距離伝播グループ毎にPED発生リスクに関連する因子を探査した。今回は上記調査の結果を報告する。

④ベンチマーキングデータを用いた検討
農研機構 動物衛生研究所 山根逸郎
動物衛生研究所は日本養豚開業獣医師協会と共同研究を行い、ベンチマーキングシステム「PigINFO」を構築した。今回、2013年7月から2015年3月までにPigINFOに参加した一貫経営の養豚場を対象に、PED発生農場と非発生農場の各種生産指標の推移を比較・検討した。PED発生農場は非発生農場に比較して、2014年4-6月期の哺乳中死亡率と離乳後死亡率が高く、離乳頭数/腹が低かった。一方、PED発生農場は非発生農場に比較して、2014年10-12月期の出荷頭数/母豚が低かった。またPEDの発生期間が長かった農場ほど、PED発生による生産性の減少は顕著であった。以上、継続的に記録された生産データを活用して、PED発生による損失の実態の一部を明らかにすることができた。

⑤PEDが分娩舎で初発生したD農場での対応策とその効果について
(有)シガスワインクリニック 志賀 明
豚流行性下痢(PED)は2013年10月に沖縄県で発生以来、全国39都道県で発生し、現在も継続している。PEDの被害は、農場によりまた初発生豚舎により異なるが、分娩舎で初発生した農場での哺乳豚死亡による被害がもっとも大きい。対応策は各農場の立地条件、農場規模、オーナーおよびスタッフの理解度と行動力などにより選択されており、4週前後で沈静化に至る農場もあるが、再発に悩まされる農場も見られる。今回、2014年4月にPEDが分娩舎で初発生したD農場において行った種々の対応策とその効果についてその概要を報告する。

⑥PED再発農場での対応とその後の経過
(株) バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌
PEDが再発した農場の再発要因、実施対策とその経過を報告する。当該農場は母豚300頭一貫経営でスリーセブンシステム(グループシステム)を実施しており、離乳子豚は3週間に1回、9室あるウィーントゥフィニッシュ豚舎の内の1室に移動され、出荷まで完全なオールインオールアウト飼育方式で管理されている。豚舎間の水平感染防止のために、管理者は各豚舎で衣服、長靴を交換し、器具、資材も専用とした。PED再発後、ほぼ1カ月おきに連続して5回、各豚舎の飼育ペン内、ピット下、集糞設備から採取した糞便をRT‐PCR法で検査し、子豚・肉豚でのPEDウイルスの動態を追跡した結果、PEDウイルス排除のための有益な情報が得られたので報告する。

 

⑦PED発症防止のためのモニタリング検査方法
エム・エス・シー(株) 谷口笑子
2013年10月のPED発生報告以降、全国的に感染が広がり、甚大な被害を与えている。継続的な発生あるいは再発生報告がみられている現状で、特に、PED発症後1~2か月で哺乳豚中の下痢や死亡が認められなくなった後、4,5か月後に再発生が認められるケースが増えている。2014年5月末にPED初発生が確認された2農場における、母豚、哺乳中、離乳後のPEDウイルス排泄量の変化、各個体での抗体価の違い、各豚舎床面やピットなど環境材料中のウイルスの有無、農場間での違いなどについて、発生確認の2か月前から2014年11月までに渡り、継続的な調査を行ない、PEDウイルスコントロールの一つとして、モニタリング方法の検討を行ったので、その概要を報告する。

一般口演

①乳器の追跡調査
ピッグケア 田中正雄
分娩直前の乳器を見て分娩後の泌乳の良否を正確に予想出来たら、適正な哺乳開始頭数を決めることが可能になり離乳頭数の増加につながると考え、産次毎の分娩直前と哺乳1週間以上経過した乳器を1産から4産までの115腹で追跡撮影した。撮影した写真による乳器の良否の判断、良質乳器と不良乳器の位置的な関係、産次別の不良乳器の発生、盲乳・損傷乳器・発育不良乳器の哺乳後の泌乳程度、発育良好乳器数と離乳頭数の関係等について調査した内容を報告する。結論としては、分娩直前の乳器の確認は離乳頭数増加に結び付くと判断する。

②ゲノムから見た豚丹毒菌国内分離株の進化と多様性
農研機構 動物衛生研究所 下地善弘
近年、血清型1a株による急性型豚丹毒の発生が国内で頻発し、原因となった野外分離株の性状に興味が持たれている。我々は、発生要因を探るため、1990年から2011年に国内の急性型豚丹毒から分離された野外分離1a型菌の34株について全ゲノムシークエンス解析を行った。本発表では、近年の分離株に共通して認められる遺伝学的特徴や過去の野外分離株との相違についての分子疫学的解析結果を紹介する。また、この解析から得られた情報を基に開発した野外株と生ワクチン株とを識別することができる簡易PCR法についても紹介したい。

ホームページリニューアルのお知らせ

日頃は当研究会のホームページをご覧頂き、まことにありがとうございます。
当研究会ホームページは、本日平成27年8月19日(水曜日)より、デザインを一新しリニューアル致しました。

新しいホームページでは、当研究会の活動報告や研究集会について会員様によりわかりやすくお知らせしてまいります。
また、会員登録されました方は、最新の研究会報についてもご覧頂くことができるようになりました。
引き続きご愛顧いただきますよう、何卒よろしくお願い致します。

※旧サイトのページをお気に入りなどに登録されている場合は、再度登録をやり直していただきますようお願い致します。大変ご不便をおかけいたしますが、よろしくお願い致します。

第86回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成27年5月22日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
(〒305-0032 茨城県つくば市竹園2丁目20-5)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/kouryucenter/

日 程
1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 特別講演(13:30~14:45)
座長 鈴木 亨[動物衛生研究所]

コロナウイルスの病原性因子の解析

大阪大学微生物病研究所 感染症国際研究センター  神谷 亘 先生
[休憩  14:45~15:00]

座長 宮﨑綾子[動物衛生研究所]

3.豚流行性下痢(PED)発生農場における感染抗体及びワクチン抗体消長調査(15:00~15:20)
村山修吾(新潟県中央家畜保健衛生所)

4.離乳舎で多発する疾病について
座長 矢原芳博[日清丸紅飼料(株)総合研究所]

1) 離乳舎でどんな疾病が多発しているか-臨床検査機関のデータより-(15:20~15:30)
矢原芳博(日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ)

2) 臨床獣医師が遭遇している離乳舎の疾病(15:30~16:00)
石関紗代子(有限会社 サミットベテリナリーサービス)

3) 離乳後問題となる疾病(16:00~16:30)
芝原友幸(動物衛生研究所)

4) 総合討論(16:30~16:50)

5. 閉 会(16:50~17:00)

<懇親会のお知らせ> 研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
時 間:17:30~18:30
場 所:レストラン エスポワール(つくば国際会議場内)研究集会会場より徒歩 約10分
〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3 TEL:029-850-3266
会 費:5,000円

講 演 要 旨
【特別講演】
コロナウイルスの病原性因子の解析
神谷 亘(大阪大学微生物病研究所 感染症国際研究センター)

ヒトにおけるコロナウイルス感染症では、2002年度に発生した重篤な肺炎を引き起こすSARSコロナウイルルス、さらに、2012年より中東を中心に発生しているMERSコロナウイルスが、強い病原性を示すコロナウイルスとして知られています。
私たちは、SARSコロナウイルスの病原性因子を解明するために、非構造蛋白質の1つであるnsp1蛋白質の機能解析を行っています。SARSコロナウイルスのnsp1蛋白質は、細胞質に局在する蛋白質で、宿主細胞内でリボゾームと結合することで、宿主の蛋白質合成を強力に抑制します。今回の講演では、私たちのグループが研究してきているSARSコロナウイルスのnsp1蛋白質を中心にして、コロナウイルスの病原性因子について、ウイルス学的な知見を紹介いたします。

○豚流行性下痢(PED)発生農場における感染抗体及びワクチン抗体消長調査
村山修吾(新潟県中央家畜保健衛生所)
新潟県内におけるPEDの流行を受け、管内の発生2農場及び未発生1農場において抗体検査を行った。発生農場では同一母豚を2週間隔で4か月間、未発生農場ではワクチン接種時と分娩及び離乳時に採血し、感染抗体とワクチン抗体の消長を調査した。その結果、ワクチン未接種の母豚では、感染抗体は発症から概ね9週目がピークでその後緩やかに低下したが、発症から21週目の時点でも抗体を保有していた。発生農場では1回目のワクチン接種2週間後に抗体の上昇が確認されたが、2回目接種後に更なる抗体上昇がみられる母豚は少なかった。未発生農場の抗体陰性母豚では1回目接種で抗体上昇は認められず、2回目接種後の分娩時に上昇がみられた。しかし接種後抗体上昇が認められない母豚も存在した。

○離乳舎で多発する疾病について
1) 離乳舎でどんな疾病が多発しているか-臨床検査機関のデータより-
矢原芳博(日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ)

豚流行性下痢(PED)は全国的な広がりを見せ、ここ最近の養豚業界での話題はPED一色と言っても過言ではない。しかし現在も国内の養豚場の離乳舎では、継続的にPED以外の様々な疾病も発生しており、農場内の事故率の主要な部分を占めている。
特に、病原性大腸菌症やレンサ球菌症は、被害を受けている農場も多く、さらに豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)が、これら細菌性感染症の増悪因子となっているケースもある。本コーナーでは、離乳舎で多発する疾病について、臨床検査機関、臨床獣医師、研究者のそれぞれの立場からの情報を総合し、問題点と対処法について整理したい。
演者はその前段として、離乳舎においてどのような疾病が多発しているのかについて、検査機関内のデータを基に紹介する。

2)  臨床獣医師が遭遇している離乳舎の疾病
石関紗代子(有限会社 サミットベテリナリーサービス)

日本各地の養豚場を訪問していると、浮腫病やレンサ球菌症、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)など、離乳舎での様々な疾病に遭遇する。これらの疾病は飼養衛生管理に関連して発生していることも多く、離乳後事故率を増加させるなど養豚場の生産性を下げる要因となっている。養豚臨床獣医師の立場として、離乳舎での疾病について、どのような疾病が発生し、それに対してどのように対処しているのか、さらにその対策の難しさ等について、具体例を交えて報告する。

3)  離乳後問題となる疾病
芝原友幸(動物衛生研究所)

離乳後の豚は様々な病原体に感染する機会が増すとともに、その飼育環境の変化等により発症しやすい状態となる。昨今、豚流行性下痢(PED)が北米、アジア各国で発生しているなかで、大腸菌症、豚増殖性腸炎、豚アメーバ症(Entamoeba suisとEntamoeba polecki感染症)及び豚赤痢(Brachyspira hyodysenteriaeと“Brachyspira hampsonii” 感染症)などの消化器疾病が注目されている。疾病防除の観点から、これら疾病の類症鑑別は不可欠である。本講演では、これらの疾病に関して、我々の研究と最近の学術的知見について紹介する。

第85回日本豚病研究会・平成26年度日本豚病臨床研究会・ 平成26年度日本養豚開業獣医師協会 第5回合同集会(事務局:日本養豚開業獣医師協会)は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会第5回合同集会(事務局:日本養豚開業獣医師協会)を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成26年10月10日(金) 10:00~17:20 (受付9:15~)
場 所: 明治ホールディングス株式会社 本社ビル 地下1階講堂
〒104-0031 東京都中央区京橋二丁目4番16号
Tel 03-3273-3430

日 程
開 会(10:00~10:05)
統一テーマ「PEDの現状と対策、今後の課題」(10:05~17:10)
座長:下地善弘(動物衛生研究所)

1 豚流行性下痢(PED)の病性と対策 (10:05~10:45)

動物衛生研究所 津田知幸 [豚病研]

豚流行性下痢(PED)はPEDウイルスに感染による豚の急性下痢を主徴とする伝染病で、清浄農場では10日齢以下の幼若豚が脱水によって高率に死亡し、大きな経済的被害をもたらす。伝染性胃腸炎(TGE)や他の原因による下痢とも病性が似ることから、迅速な鑑別診断が必要である。感染豚から排泄されたウイルスが、直接あるいは間接的に豚に経口感染する。ウイルスは小腸の絨毛上皮細胞に障害を与え結果的に下痢が起こるが、成豚では症状を示さないことが多い。本病には農場バイオセキュリティの強化が最も有効であり、ウイルスを含む豚の排泄物や器具、車両、周辺環境の消毒(特に消毒薬を十分に浸透させることが必須)と哺乳豚の損耗防止が対策の中心となる。

2 1990年代と2013-2014年のPEDの発生背景と状況 (10:45~11:25)
宮崎大学 末吉益雄[豚臨研]

国内のPEDのアウトブレイクとして、まず、1996年に9道県、102戸、約8万頭発症、約4万頭死亡があった。母豚と新生子豚の嘔吐・下痢および妊娠豚の泌乳低下・停止があり、死亡は主に新生子豚であった。当時、PEDは監視伝染病ではなく、ワクチンはなかった。診断は免疫組織化学法(IHC)と中和試験でされた。類症鑑別としてTGE、PRVがあった。一方、2013-2014年に過去の国内流行株とは異なる新型のPEDV株により、38道県、816戸、約120万頭発症、約37万頭死亡のアウトブレイクが起きた。届出伝染病として対応され、生ワクチンは市販されていた。診断にはIHC、中和試験、PCR法が用いられた。侵入・拡大経路など疫学調査中である。背景の疾病としてTGE、PRV、SDCVがあげられる。

3 アメリカにおけるPEDの現状と対策 (11:25~12:25)
カテージ・ベテリナリー・サービス ジョセフ・F・コナー
通訳:㈱バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌[JASV]

2013年にアメリカ養豚史上初めての侵入が確認されたPEDウイルスは、2012年中国分離株と99.46%の相同性が確認されている。また、2013年後半には遺伝的に異なる第2のPEDウイルス、2014年初めにはデルタコロナウイルスも分離された。これら3つのウイルスはいずれも高い哺乳中事故率、母豚への顕著な臨床症状を引き起こすコロナウイルス属である。アメリカでは、これらに対抗する方法として、アメリカ農務省(USDA)、民間研究機関、生産者が協力し、国を挙げた疫学調査、撲滅に向けた研究が行われている。今回は、これまでアメリカでの研究において明らかになった3つのコロナウイルスについて、また現状のコロナウイルス対策、今後の展望について報告する。

[昼休み (日本豚病研究会 幹事会) 12:25~14:00]

座長:志賀明((有)シガスワインクリニック)・矢原芳博(日清丸紅飼料(株)総合研究所)
4 近年の豚流行性下痢(PED)の流行とその特徴 (14:00~14:30)
動物衛生研究所 山川 睦、宮崎綾子、鈴木 亨、大橋誠一[豚病研]

豚流行性下痢(PED)は1970年代から欧州や中国で流行が確認されており、国内でも1980年代前半から発生していたが、散発的であったため、これまで大きな問題となることは少なかった。しかし、2010年以降、中国を中心としたアジア地域で本病による被害が拡大し、2013年には米国での初発が報告され、国内でも1996年以来の大規模な発生を見るに至り国際的に注目が集まるようになった。今回、国際獣疫事務局本部で開催されたPEDに関する専門家会議(Meeting of the OIE Ad hoc group on PED)の討議内容や、現在動物衛生研究所で進めている調査研究など、PEDを取り巻く最近の情勢について紹介したい。

5 我が国で発生した豚流行性下痢(PED)に関する疫学調査について (14:30~14:50)
農林水産省 消費・安全局 動物衛生課 川田良浩[豚病研]

平成25年10月以降、我が国では38道県、815件のPEDの発生が確認されている(平成26年8月11日現在)。
農林水産省では、発生道県と連携し、農研機構 動物衛生研究所及び関係団体等の協力を得て、我が国へのPEDウイルスの侵入要因と感染拡大要因の解明のための疫学調査を実施してきた。
PEDウイルスの侵入要因については、ウイルスの由来、既発生国からの生体豚の輸入実績・豚血しょうたんぱくの輸入実績及び畜産関係器具・機材の輸入実績等について分析を行い、国内での感染拡大要因については、発生農場ごとに農場への生体豚や人の出入り、それらに付随する車両や物の動き等についての分析を行った。

6 農場現場における科学的根拠に基づいたPED対策 (14:50~15:10)
㈱スワイン・エクステンション&コンサルティング 大竹 聡[JASV]

現在のアメリカおよび日本における豚流行性下痢(PED)のアウトブレイクは、豚価に影響を及ぼすほど深刻な問題となっている。本発表を通じて、農場現場のおける科学的根拠に基づいたPED対策の重要性を説く。
PEDの伝搬経路
PEDリスクを想定した農場バイオセキュリティ
PED発生時の善後策
PEDワクチンの位置づけ
産官学の取り組みの重要性

7 PED侵入農場における継続的調査報告 (15:10~15:30)
エス・エム・シー㈱ 小池郁子[JASV]

2014年4月以降PED感染が確認された農場における、母豚、哺乳中、離乳後のPEDウイルス排泄量の変化、各個体での抗体価の違い、各豚舎床面やピットなど環境材料中のウイルスの有無、農場間での違いなどについて、発生直後から鎮静化状況となるまでに渡り、継続的な調査を行った。
また、昨年からのPED感染拡大以降の弊社における大腸菌、クロストリジウム、ロタウイルス、デルタコロナウイルスなど消化器感染症の状況を、過去の疾病状況と比較し、増加している疾病やその他特徴的な傾向などについて検討を加えたので、併せて報告する。

8 千葉県における豚流行性下痢(PED)の発生状況(養豚密集地帯での発生の特徴) (15:30~15:50)
㈱ピグレッツ 渡辺一夫[豚臨研]

千葉県では、平成26年3月?7月の間に111例のPED発生が報告された。発生頭数は152,973頭、死亡頭数は42,851頭であり、死亡は主に生後5日齢以内の哺乳豚であった。県北東部の養豚密集地帯において、4月9日に2,3例目が発生して以降、4週間で60例/111例(54.1%)を数える急激な広がりを見せた。この内、哺乳豚の発症は51例(85%)で見られた。千葉県の養豚密集地帯は、農場間の距離も近く、隣接農場へ次々と伝播した。本症に感受性が高く吐瀉物にPEDウイルスを大量に排泄する哺乳豚が短期間に多数発症したことが、この地域の感染圧力を飛躍的に高めた要因の一つと推察する。今回、このような養豚密集地域でのPED感染拡大の状況を臨床獣医師の観点から紹介したい。

9 PED発生時の管理獣医師の農場へのかかわり (15:50~16:10)
㈲アークベテリナリーサービス 武田浩輝[豚臨研]

平成26年5月20日東北地方の飼養母豚規模330頭の一貫生産農場において豚流行性下痢(PED)の発生を経験した。このPEDの発生に関し管理獣医師として、農場における対応について農場主と協議し、すべての対応に関しての委任を受け、農場内において陣頭指揮を執り、管内の家畜保健衛生所との連携、発症時の農場内における初動対応および発症後の管理指導、計画的自然感染(馴致)等を実施した。PED発症による哺乳子豚の死亡は10日間でほぼ終息し、PEDに関連すると思われる哺乳子豚の死亡は258頭、離乳後の死亡は46頭であった。6月13日以降PEDの症状および死亡が確認されず、6月26日に家畜保健衛生所より移動自粛の解除の通知を受けた。

[休憩 16:10~16:20]

10 総合討論 (16:20~17:10)

閉会(17:10~17:20)

〈お知らせ〉
・研究集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願い致します。
・研究集会終了後、懇親会 を予定しております。ふるってご参加ください。

懇親会について
時間:17:40~19:40
場所:アンジェリオン オ プラザ 東京 (合同集会会場のすぐ近くです。)
東京都中央区京橋3-7-1 相互館110タワー
http://tokyo.anjelion.jp/
会費:5,500円(会費は当日受付で申し受けます。)

参加人数把握のため、参加可能な方は、9月26日(金)までに、下記の連絡先にメールにてご連絡ください。
なお、当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けします。

懇親会参加者連絡先:
一般社団法人日本養豚開業獣医師協会(JASV)事務局
e-mail: pig.jasv@r7.dion.ne.jp

第84回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成26年5月23日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
(〒305-0032 茨城県つくば市竹園2丁目20-5)

※会場付近(公道等を含む)の禁煙にご協力をお願いします。
喫煙は指定の喫煙所をご利用ください。厳守願います。

1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 第19回日本豚病研究会藤﨑優次郎賞受賞記念講演 (13:40~14:10)
座長 佐藤真澄[動物衛生研究所]

元鹿児島県獣医務技監兼農政部次長 北野良夫 先生

3. 特別講演(14:15~15:30)
座長 津田知幸[動物衛生研究所]

C型肝炎ウイルスの増殖と病原性発現に関与する宿主因子

大阪大学微生物病研究所副所長  松浦善治 先生
ウイルスは生きた細胞に寄生して増殖する。例外はあるものの、DNAウイルスやレトロウイルスは核内で、一方、RNAウイルスは細胞質で増殖する。C型肝炎ウイルス(HCV)は、フラビウイルス科に属するプラス鎖 (ウイルスゲノムがmRNAとして機能する)のRNAウイルスで、ブタに感受性を示す日本脳炎ウイルスやブタコレラウイルスに近縁である。HCVに感染すると高率に慢性化し、肝硬変を経て肝細胞癌を発症し、日本だけでも毎年2万数千人がHCV感染による肝癌で死亡している。これまでにHCVの実験室株がいくつか樹立されているが、未だに患者検体からHCVを分離培養できる細胞培養系が無いために、HCVの感染環や病原性の発現機構は、未だ謎に包まれたままである。本講演では、HCVの増殖や病原性発現に関与する宿主因子を概観し、それらを標的とした新しいウイルス制御法の可能性を紹介したい。

[休憩  15:30~15:45]

4.豚流行性下痢(PED)の発生について(15:45~16:55)
座長 矢原芳博[日清丸紅飼料(株)総合研究所]

1) 豚流行性下痢(PED)の現状と学術的知見(15:45~16:15)
宮﨑綾子、鈴木亨、芝原友幸、山川睦、筒井俊之、津田知幸(動物衛生研究所)

豚流行性下痢(porcine epidemic diarrhea, PED)は、水様性下痢を主徴とするウイルス性の急性伝染病であり、家畜伝染病予防法により届出伝染病に指定されている。2013年10月に国内で7年ぶりに発生した本病は、発生から約半年で13県206農場の約18万頭が発症し約3万8千頭が死亡する大規模な流行となっている(平成26年3月24日現在)。国外においても、2010年以降中国で、2013年以降米国、カナダ、韓国そして台湾で本病が流行し、各国の養豚産業は甚大な被害を受けている。本発表ではPEDの国内外での発生状況について報告するとともに、今までに報告されている知見について紹介したい。

2)豚流行性下痢(PED)の防疫対策とその問題点について(16:15~16:35)
志賀 明((有)シガスワインクリニック)
豚流行性下痢(PED)は昨年10月の沖縄県での発生以降、全国各地での発生が確認されている。特に鹿児島県や宮崎県では養豚密集地を中心に発生が広がり、哺乳豚の死亡などの大きな被害が出ている。感染拡大に伴い、未発生農場では農場防疫を強化し、ウイルス侵入防止対策に努力している。一方宮崎県内では、本年の2月にPED蔓延防止対策として発生地域周辺や未発生地域において車両消毒ポイントが十数カ所設置された。消毒ポイント設置以降、宮崎県内での発生件数は減少傾向となっている。  今回、宮崎県内を中心に講じられたPED対策を農場防疫、地域防疫の両面からその内容と問題点などについてその概要を報告する。

3)豚流行性下痢(PED)について~鹿児島県での事例(16:35~16:55)
千歳健一(鹿児島県肝属家畜保健衛生所)

本県におけるPEDの発生は、昨年12月上旬から確認され、3月27日現在、132農場、聞き取りによる発症頭数は約16万6千頭、うち死亡は約2万7千頭、経営形態別には一貫68、繁殖28、肥育36農場となっている。県では、これまで会議開催やFAX等による関係者への情報提供を行い、発生農場での調査から浮かび上がった防疫対策の留意点等の啓発を行うとともに、飼料、食肉処理、化製、運輸等の関係業者に対して、防疫対策の強化を要請してきた。農場毎の発生状況では、長期間子豚の死亡が継続する事例から、一部豚舎の成豚のみの発生で沈静化する事例までみられている。
5. 閉 会(16:55~17:00)

<懇親会のお知らせ> 研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
時 間:17:30~19:30
場 所:レストラン エスポワール(つくば国際会議場内); 研究集会会場より徒歩 約10分
〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3  TEL:029-850-3266
会 費:5,000円

第83回日本豚病研究会・平成25年度日本豚病臨床研究会・ 平成25年度日本養豚開業獣医師協会 第4回合同集会(事務局:日本豚病臨床研究会)は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会第4回合同集会を下記の要領で開催致しました。

日 時: 平成25年10月23日(水) 10:00~17:00
場 所: 明治ホールディングス株式会社 本社ビル 地下1階講堂
〒104-0031 東京都中央区京橋二丁目4号16番
Tel 03-3273-3434

日 程

開 会(10:00~10:15)

統一テーマ「PRRSの現状と課題」(10:15~14:20)
座長:大石英司((株)微生物化学研究所)
1 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の現状と最新の学術的知見(10:15~10:55)

動物衛生研究所 高木道浩 [豚病研]
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、PRRSウイルス感染によって引き起こされる母豚の流死産などの繁殖障害と育成肥育豚の呼吸器病を主な症状とする疾病であり、世界の養豚産業において大きな経済損害をもたらしている。
PRRSウイルスには遺伝学的多様性がある事が知られている。我が国において、PRRSウイルスが初めて分離されてから20年以上が経ち、国内流行ウイルスにおいても遺伝学的な多様性が認められており、これが農場内で常在化しやすくなる一因となり、農場でのPRRS対策を困難にさせている。本講演では、我が国でのPRRSウイルスの遺伝学的多様性、国内で初めて分離された欧州型PRRSウイルス、我々の研究と最近の学術的知見について紹介する。
2 海外・国内のPRRS最新知見  ―科学的根拠に基づいたPRRS対策を― (10:55~11:35)
㈱スワイン・エクステンション&コンサルティング、ミネソタ大学豚病撲滅センター、PRRS撲滅推進チーム・ジャパン(P-JET) 大竹 聡 [JASV]
PRRSは、現在の世界の養豚産業において最も経済損害の大きい疾病の一つとして知られている。本発表では、海外(主にアメリカ)と国内のPRRS最新知見を要約し提示することで、科学的根拠に基づいたPRRS対策の重要性を説く。

PRRSウイルスの特徴
PRRSの診断
PRRS免疫安定化(ステージ定義)
PRRSウイルスの伝搬経路
バイオセキュリティ
PRRS清浄化の取り組み
地域ぐるみのPRRS対策(P-JET)
3 養豚密集地域におけるPRRS対策の事例 (11:35~12:15)
JA鹿児島県経済連 川畑 忠祐 [豚臨研]
本会では平成20年より直営農場を中心にPRRSのコントロール・清浄化に向けた取り組みを実施してきた。
基本対策として育成母豚の馴致、オールイン・オールアウト、農場内・外防疫の徹底を設定し、対策を継続することで一定の効果を得る事ができた。
しかし、対策の効果は農場毎に異なっており、特にPRRSの浸潤状況、立地条件などに大きな影響を受けている事がわかった。今回、PRRSが高度の浸潤した養豚密集地帯におけるPRRS対策の1事例について報告する。
[昼休み(日本豚病研究会 幹事会) 12:15~14:00]

4 総合討論 (14:00~14:20)

[第7回 国際新興・再興豚病学会のお知らせ 14:20~14:30]

一般演題(14:30~16:50)
座長:謝村錦司(協同農産(株))・石川弘道((有)サミットベテリナリーサービス)
1 豚増殖性腸炎とLawsonia intracellularisの感染動態 (14:30~15:00)
動物衛生研究所 三上 修 [豚病研]
豚増殖性腸炎は偏性細胞寄生性菌であるLawsonia intracellularisの経口感染によっておこる消化器疾患で、急性型と慢性型に大別される。急性型は4-12ヵ月齢の肥育豚や繁殖豚で認められ、罹患豚はタール便を排泄し急死する。一方,慢性型は6-20週齢の肥育豚でみられ、下痢や軟便を呈する場合もあるがはっきりとした臨床症状を示さないことも多い。しかし、L. intracellularis感染により増体や飼料効率が低下することから、潜在的な経済的損失は無視できない。本発表では豚増殖性腸炎の病態と、L. intracellularis感染後の菌の動態を中心にお話ししたい。
2 豚の反芻獣ペスチウイルス感染事例 (15:00~15:30)
茨城県鹿行家畜保健衛生所 榊原 裕二 [豚病研]
平成24年2月,管内一貫養豚場の、豚コレラ清浄性確認検査を実施した結果、29頭中14頭に豚コレラELISA抗体陽性が確認された。そのため緊急立入を実施したところ飼養豚に臨床的な異常はなく、新たに採血した120日齢の肥育豚1頭からペスチウイルスを検出する遺伝子検査で陽性となり、ボーダー病ウイルスに近縁の反芻獣ペスチウイルスと判明した。また、ELISA抗体陽性となった血清を用いた中和試験の結果、豚コレラは否定された。更に病性鑑定及び清浄化対策の結果、発育遅延豚3頭と肥育豚1頭から反芻獣ペスチウイルスが分離された。これらウイルス排泄豚4頭を淘汰後、5月以降当該農場でのウイルスの流行は沈静化したと考えられた。

[休憩 15:30~15:50]
3 豚丹毒集団発生事例からみた本症予防衛生管理の問題点 (15:50~16:20)
㈱ピグレッツ 渡辺一夫、㈱サミットベテリナリーサービス 石川弘道、㈱高座豚手造りハム 北条那智 [JASV]
4戸の一貫経営養豚場の肥育農場において豚丹毒が集団発生し、この間の事故率は10%前後であった。これらの農場の飼育形態は開放オガクズ豚舎であり、棟毎にAI/AOを実施していた。豚丹毒ワクチンはいずれも生ワクチンを使用していたが、1農場は繁殖豚のみの接種であった。また、いずれの農場も、出入口の石灰散布、入場車両の消毒、消毒槽の設置などの衛生管理は実施していた。豚丹毒の発生要因はカラスによる豚丹毒菌の伝播が強く疑われた。また、生ワクチン接種時期にも問題があったと考える。いずれの農場でも豚丹毒不活化ワクチンを60日齢と90日齢の2回接種により終息した。
4 動物用医薬品の適正使用に向けた取組みについて (16:20~16:50)
(有)あかばね動物クリニック 伊藤貢[豚臨研]
動物用医薬品の使用は疾病対策にとって重要だが、一方では耐性菌の出現や国産豚肉の安心を揺るがす問題に発展する危険性もある。デンマークでは、1994年から獣医師の定期的な農場訪問を法律化して抗生剤の使用を厳しく管理している。さらに2011年からは全ての生産者の抗生剤の使用をモニターし、使用の多い生産者および管理獣医師に改善指導がなされるシステムがスタートした。
日本に於いては、家畜保健衛生所の立ち入り調査、指示書の提出が行われているが、農場での使用実態を示す情報は少ない。
今回、共通の指示書管理プログラムを使用する4診療所の動物用医薬品使用実態を報告するとともに、医薬品の適正使用に向けた取組みについて紹介する。

閉会(16:50~17:00)
〈お知らせ〉
・研究集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願い致します。
・研究集会終了後、懇親会 を予定しております。ふるってご参加ください。

懇親会について
時間: 17:30~19:30
場所: アンジェリオン オ プラザ 東京 (合同集会会場のすぐ近くです。)
東京都中央区京橋3-7-1 相互館110タワー
http://tokyo.anjelion.jp/
会費: 5,000円(会費は当日受付で申し受けます。)

参加人数把握のため、参加可能な方は、10月4日(金)までに、下記の連絡先にメールにてご連絡ください。
なお、当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けします。

懇親会参加者連絡先: 日本豚病臨床研究会事務局
yahara-y@mn-feed.com

第82回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成25年5月27日(月) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
(茨城県つくば市竹園2丁目20-5)
[交通案内 (研究交流センター)
※敷地内北側に駐車場があります]
tel. 029-851-1331

1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 第18回日本豚病研究会藤崎優次郎賞受賞記念講演 (13:40~14:10)
座長 長井伸也[日生研株式会社]
馬場建一(北里第一三共ワクチン株式会社)
3.演題
○オーエスキー病清浄化について
座長 宮崎綾子[動物衛生研究所]

1) オーエスキー病の清浄化対策について -現状と今後-(14:15~15:00)
伏見啓二(農林水産省消費・安全局動物衛生課 家畜防疫対策室長)

オーエスキー病については、平成3年度に策定されたオーエスキー病防疫対策要領を20年度に大幅に改正し、24年度までの5カ年計画で清浄化対策を強化した結果、着実に浸潤地域が減少してきた。しかしながら、一部浸潤地域において清浄化が進まないなど、ウイルス常在地域の固定化の様相も呈している。強化対策により一定の成果がみられた一方、課題も浮き彫りになり新たな対策の必要性も生じた。これまでの取り組みを無駄にしないためにも、清浄化対策事業を25年度から3年間限りで延長することとした。27年度までの本病清浄化に向けて、行政だけではなく、全ての関係者の間で情報及び意識の共有が必要であり、今後の取組に向けた強固な協力体制の構築が求められる。

[休憩  15:00~15:15]

2) 茨城県鹿行管内におけるオーエスキー病清浄化の取組状況(15:15~15:45)
清水ひろみ(茨城県鹿行家畜保健衛生所)
オーエスキー病は平成20年12月から新体制下で清浄化を目指しており、今年で第4期目となる。本県の養豚は429戸で約59万頭飼養しており、特に当所管内は104戸で約24万頭を飼養する養豚密集地である。管内では農場採材を中心としたステージ採血を実施し、検査結果に基づく衛生指導により、AD陽性率は頭数ベースで年々減少傾向にあるものの、戸数ベースでは横ばい傾向である。これらの陽性農場を清浄化するために、平成23年度から繁殖豚の全頭検査を実施している。平成24年度は、肥育豚の抗体が陰性で繁殖豚の陽性率が30%以下の農場を選定し、陽性豚の摘発・淘汰とワクチン接種の徹底を行ったところ、陽性農場が減少しつつある。

3) 宮崎県におけるオーエスキー病清浄化取組状況(15:45~16:15)
西村拓也 (宮崎県宮崎家畜保健衛生所)
宮崎県では、平成4年9月にオーエスキー病抗体陽性豚が確認されてから、県内の多くの地域に浸潤し、地域毎に清浄化の取組が進められてきた。平成20年、国の防疫対策要領の改正を受け、県要領を改正し、生産者及び関係者で構成される県、地域及び市町村協議会を設置し本病の清浄化に向けた体制整備を行った。各農場では、飼養衛生管理基準を遵守するとともに、ワクチン全頭接種、清浄度確認検査及び清浄豚の導入等を基本とする対策を進めた結果、平成20年度当初に確認された陽性農場数89戸が平成24年度3月時点で11戸と大幅に減少し、また、県内531農場うち413農場(約78%)がステータスⅢ以上の清浄性確認農場となり、現在、県域での清浄化達成に向け最終段階を迎えている。

4) 総合討論(16:15~16:30)
○一般演題
座長 矢原芳博[日清丸紅飼料(株)総合研究所]

・実験感染豚を用いたPRRSウイルス中国強毒株に対するワクチン投与効果の検証(16:30~16:50)
川嶌健司、井関 博、芝原友幸(動物衛生研究所)
2006年、中国において高致死率を示す高病原性豚繁殖・呼吸障害症候群(HP-PRRS)が突如発生し、その後、HP-PRRSは周辺国へ急速に拡大してわが国にとってHP-PRRSの国内侵入は脅威となっている。本試験では、4週齢のSPF豚を用いた感染試験によりPRRSウイルス中国強毒株の増殖に対し弱毒生ワクチン(Ingelvac(r) PRRS MLV)の投与がどのような効果を示すかを検証した。その結果、弱毒生ワクチン接種により、ウイルス血症および唾液からのウイルス排泄の抑制、食欲不振や呼吸器症状等の臨床症状軽減および肺病変と肺臓器中ウイルス量の有意な軽減が認められ、ワクチン投与はHP-PRRSでのウイルスの増殖とそれに伴う発病および病変形成に対して一定の軽減効果があると考えられた。

4.閉 会(16:50~17:00)
<懇親会のお知らせ> 研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
時 間:17:30~19:30
場 所:レストラン エスポワール(つくば国際会議場内); 研究集会会場より徒歩 約10分
〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3  TEL:029-850-3266
http://www.epochal.or.jp/floor_guide/food/index.html
会 費:5,000円

第81回日本豚病研究会・平成24年度日本豚病臨床研究会・ 平成24年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会(事務局:日本豚病研究会)は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会 合同集会を下記の票量で開催いたしました。

日 時: 平成24年10月26日(金) 10:00~16:30
場 所: タワーホール船堀(小ホール)
〒134-0091 東京都江戸川区船堀4-1-1
TEL:03-5676-2211 (代)
http://www.towerhall.jp/

日 程

開 会(10:00~10:15)

PRRSの現状(10:15~14:40)
座長:恒光 裕(動物衛生研究所)
1.日本における地域ぐるみPRRS撲滅活動の現状と今後の展望:
P-JET(PRRS撲滅推進チーム・ジャパン)の活動アップデイト (10:15~10:55)
スワイン・エクステンション&コンサルティング、ミネソタ大学豚病撲滅センター、
PRRS撲滅推進チーム・ジャパン(P-JET)    大竹 聡[JASV]
現在の世界の養豚産業において最も経済損害の大きい疾病の一つが、PRRSである。アメリカではすでに数年前から、地域ぐるみPRRS撲滅対策が積極的に進んでいる。そのような背景を受け、2011年7月、日本国内の有志の獣医師・研究者によって「PRRS撲滅推進チームJAPAN(P-JET:PRRS- Japan Elimination Team)」が発足した。 農場単位および地域ぐるみにおけるPRRS清浄化を技術的にサポート・推進できる産官学連携チームの構築を目的とし、現在まで諸々の活動を続けている。本発表では、その活動アップデイトを紹介する。
2 PRRS感染による経済的な被害 (10:55~11:35)
動物衛生研究所 山根逸郎[豚病研]
PRRSは、経済的な損失の大きな疾病である。動物衛生研究所(動衛研)と日本養豚開業獣医師協会(JASV)が行った研究高度化事業(H18-20)において、PRRSの発生による全国の養豚農家の経済損失を283億円/年と推定した。 また動衛研とJASVが2010年より行っている共同研究の結果、PRRS陰性農家は陽性農家に比較して、離乳後事故率が2.9%低く、飼料要求率は0.3低いことが明らかになった。 これは、母豚300頭の農家でPRRSの撲滅により、事故率の減少により353万円、飼料要求率の改善により576万円、合わせて929万円/年間の増収益となることが推定された。 本発表においては、上記の2つの研究内容を紹介する。

3 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスの遺伝子変異の推移 ~制限酵素断片長多型(RFLP)パターンを中心に~ (11:35~12:15)
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博[豚臨研]
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスは、その遺伝子変異の多様性により、対策の難しいウイルスとして認識されている。 本ウイルスの遺伝子解析には、変異の激しいORF5領域を用いる事が多く、制限酵素断片長多形(RFLP)パターン解析や系統樹解析が用いられる。 我々のラボでは、野外PRRSウイルス株について、継続的にRFLPパターンを調査している。系統樹解析との整合性が問われるRFLPではあるが、本ウイルスの多様性と、養豚現場での複数の株の動きを追跡する上で有用な手がかりとなると考えており、1991年以降の野外分離株におけるRFLPパターンの推移について報告する。
[昼休み(幹事会) 12:15~14:00]

4 地域ぐるみのPRRS清浄化に向けた動きの一例 (14:00~14:20)
(有)あかばね動物クリニック 水上佳大[豚臨研]
オーエスキー病フリーを維持している愛知県では、生産者を中心としてPRRS清浄化に向けた地域レベルの取組みが始まっている。この活動の流れを1~5に分けて進めている。
ステップ1 活動の主体となる組織の設立
ステップ2 生産者への活動の周知と同意
ステップ3 農場ステータスの決定
ステップ4 各農場の衛生状況をマッピング
ステップ5 清浄化に向けた活動
現時点ではステップ3の段階である。この活動は、将来的に他畜種においても地域防疫を向上させるものになりうると考えている。
5 総合討論 (14:20~14:40)

[休憩] (14:40~15:00)
一般演題(15:00~16:20)
座長:謝村錦司(協同農産株式会社)・志賀明((有)シガスワインクリニック)
1 長年オーエスキー病清浄化がうまくいっていなかった農場における清浄化事例 (15:00~15:20)
(有)サミットベテリナリーサービス 石川弘道[JASV]
長年オーエスキー病(AD)清浄化に取り組んでいながら一向に清浄化が達成できなかった一養豚場に対し、AD対策を2010年7月から実施した。従来のADワクチン接種は、自衛防疫の指定獣医師が当番制で実施していたが、抗体検査結果から接種適期を見直し、養豚管理獣医師が責任を持って接種することにした。またピッグフローの見直しを主な柱とした衛生指導を実施した。その結果、対策に取り組み始めて約2年で清浄化が達成された。本発表では、なぜ長期にわたり清浄化が達成できなかったのか? またその後なぜ短期間で清浄化が達成できたのか?などについて考察する。
2 Actinobacillus pleuropneumoniaeに関する最近の話題 (15:20~15:40)
動物衛生研究所 伊藤博哉[豚病研]
線維素性壊死性胸膜肺炎を主徴とする豚胸膜肺炎の原因菌であるActinobacillus pleuropneumoniaeには15の血清型が存在することが知られている。豚胸膜肺炎予防用ワクチンの効果は一般的に血清型特異的であり、さらに血清型によって病原性の強さに差が認められると言われており、これらの理由等から本菌の血清型別は疫学解析のためのgold standardとして、多くの検査室で実施されている。今回は、A. pleuropneumoniaeの血清型別を中心として、本菌に関する最近の話題について紹介する。
3 日本脳炎ワクチンの接種方法に関する一考察L・KかKのみか (15:40~16:00)
フォーピッグ那須 福山 聡[豚臨研]
日本脳炎ワクチンの最も一般的な接種方法は毎年母豚に一ヵ月間隔で生ワクチン(L)と不活化ワクチン(K)を接種する方法である。しかし私が定期的に訪問している農場のうち関東以北の養豚場においては、毎年母豚にKのみのワクチン接種をおこなっている農場が多いが、日本脳炎の発症例はみられない。また現在最も重要な疾病であるPRRSをコントロールする為には母豚のワクチン接種をできるだけ少なくする事が望まれている。毎年Kのみの接種でL・Kを接種するのと同等の効果が得る事ができ、かつ日本脳炎の発生がない場合には前者の接種方法を推奨してはよいのではないかと考え、臨床症状の有無と抗体検査の結果から検討をおこなった。
4 免疫学的去勢製剤(インプロバック)の大規模養豚場での具体的使用事例とその効果について(16:00~16:20)
(株)バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌、杉山 正徳[JASV]
インプロバックの2回投与により産生される、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)に対する抗体が、GnRHを特異的に中和することで精巣機能が抑制され、投与豚は免疫学的去勢状態となる。63カ国で承認されており、日本では2010年に承認された。筆者らは大規模養豚場でインプロバックの投与試験を実施したので、その具体的使用方法と結果を報告する。試験区889頭、外科的去勢区1552頭、雌区2471頭の出荷成績では、それぞれ、平均枝肉重量(kg);77.4、75.8、74.6、上物率(%);53.5、37.0、62.6、平均格落ち金額(円);22.4、36.1、18.0だった。1頭当り販売金額では、試験区は、外科的去勢区より1,660円、雌区より750円、それぞれ高かった。
閉 会(16:20~16:30)
〈お知らせ〉
・研究集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願い致します。
・研究集会終了後、懇親会 を予定しております。ふるってご参加ください。

懇親会について
時 間: 17:30~19:30
場 所: タワーホール船堀 「桃源の間」 (研究集会会場と同じビルの2階です)
会 費: 5,000円 (会費は当日受付で申し受けます)

参加人数把握のため、参加可能な方は、10月5日(金)までに、下記どちらかへ
メールでご連絡ください。
当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けします。
参加者連絡先:
JASV事務局 (有)ベネット 中村節子 venet@nifty.com   日本豚病研究会事務局 tonbyou@ml.affrc.go.jp

第80回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時:平成24年5月25日(金) 13:00~17:00
場 所:文部科学省研究交流センター
 (茨城県つくば市竹園2丁目-20-5)
 [交通案内 (研究交流センター)
  ※敷地内北側に駐車場があります]
 tel. 029-851-1331
 
1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 演 題
東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染の影響13:40~16:00
 座長:恒光 裕・川嶌健司(動物衛生研究所)

①放射線障害の基礎13:40~14:20
宮本 亨 (動物衛生研究所)
 昨年3月11日の東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故により、福島県を中心とした東北関東各県の畜産業はこれまでにないほど甚大な影響を受けている。特に風評被害は、必ずしも科学的説明だけでは解消し得ず、対応に苦慮することが多い。しかし家畜衛生に従事する者として放射線の基礎知識を理解し、生産者、消費者にいつでも説明できることが重要であると考える。そこで今日は、放射線障害に関する基本的事項について説明する。また動物衛生研究所では1950年代後半から、米ソを中心とした大気圏内核実験による放射性降下物(フォールアウト)に伴う家畜(牛、馬)骨中ストロンチウム90濃度変化を約50年にわたり測定してきた。その結果を紹介しながら、放射能が環境や家畜に与える長期的影響についても解説する。

②畜産に対する放射性物質の影響とその対策)14:20~15:00
竹中昭雄(畜産草地研究所)
 東京電力福島第1原子力発電所事故により、大量の放射性物質が大気中に放出され、東北や関東地域では広範囲に放射性物質の土壌汚染が広がった。自給飼料を活用し安全・安心な畜産物を生産するためには、土壌から飼料作物や牧草等への移行、飼料から畜産物への移行についての2段階の放射性物質の移行について、移行の程度を精密に把握するとともに、その低減策を講じる必要がある。本講演では、土壌から牧草や飼料用トウモロコシへの放射性セシウムの移行とその低減策、飼料から牛乳や牛肉への放射性セシウムの移行とその低減策、家畜における生物学的半減期について文献値や最新のデータについて概説し、残された課題と今後の研究方向について報告する。

③福島県における家畜及び畜産物への対応15:00~15:30
坂本秀樹 (福島県農林水産部畜産課)
 【初期対応】 事故直後は20~30km圏内の畜産農家約200 戸について実態調査を実施した結果、11戸を除き飼養を継続していた。 【放射線スクリーニング検査】 計画的避難区域等からの家畜の移動にあたり、牛で約1万1千頭の検査等を実施した結果、基準値を超える個体は確認されなかった。 【警戒区域内の家畜】 5月12日の総理指示に基づく措置を、所有者の同意を得た上で行ってきたところであり、3市村については処理が終了した。これら以外の6市町では、放れ畜の捕獲を最優先とした取り組みを進めている。 【畜産物の緊急時モニタリング検査】 3月19日から定期的に畜産物の検査を実施してきた結果、初日には原乳、7月には牛肉から規制値を超える放射性物質が検出され出荷が制限された。このため、市町村単位での生乳検査や適正飼養管理の再点検及び牛肉の全頭検査体制構築により出荷制限の一部が解除された。

④養豚場における対応と現状15:30~16:00
吉川康宏(グローバルピッグファーム(株)直営・委託農場担当)
 福島県の北西部に位置する直営農場は、川俣町山木屋地区にて母豚1500頭の繁殖農場および種豚・AIセンターを運営していた。東日本大震災による被害が1億円程度発生したことに加えて、東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故による計画的避難地域指定を受けて、在庫1万頭の農場を閉鎖した。農場内の最大空間線量は6μSv/h(自社測定)を超え、食肉への汚染はなかったが、堆肥は規制数値を超える放射能汚染が確認された。農場移転については、自社肥育農場の改造および賃貸豚舎にて飼育継続はできているが、規模は60%まで縮小せざるを得ない状況となった。  その他、農場閉鎖による整備状況および生産量の減少・財務成績・損害賠償・経理処理・各種行政対応の問題点を含めて報告する。

[休憩  16:00~16:10]

一般演題16:10~16:55
 座長:下地善弘(動物衛生研究所)    
                                                                                                                    
①新しい遺伝子型を示す豚丹毒菌が分離された敗血症型豚丹毒の発生事例16:10~16:25
神田 章1、小林千恵2、矢彦沢小百合3、トーホー4、長井伸也4  (1長野県長野家畜保健衛生所、
2長野県上田保健福祉事務所、3長野県松本家畜保健衛生所、4日生研株式会社)
 2009年以降、長野県内で同一性状をもつ強毒タイプの豚丹毒菌が確認された。血清型は1aでSpaA遺伝子高度変異領域の解析では、既報にある野外株の配列とは一致しなかった(SpaA-609G769A型株と仮称)。本株の分離農場における抗体検査では、抗体価が全体的に低く、GA抗体価は肥育末期まで上昇せず、LA抗体価は低値で推移し、両者の抗体価に相関はなかった。病理組織検査では、敗血症型の特徴である腎糸球体毛細血管の硝子様血栓形成が少数に限定され、これまであまり報告がない心筋壊死が多く認められた。これらのことから、本株感染豚では、従来と異なる特徴的な抗体応答パターンを示し、それと関連して重篤な敗血症型豚丹毒を発症するものと考えられた。SpaA-609G769A型株の最近の国内での分離状況についてもあわせて報告したい。

②急性敗血症罹患豚から分離された豚丹毒菌の遺伝学的解析16:25~16:40
白岩和真、下地善弘(動物衛生研究所)
 昨年、spaA 遺伝子の高度変異領域の配列に従来の野外分離株と一致しない豚丹毒菌が多数分離されたという報告がなされた。急性敗血症罹患豚から分離されたこれらの分離株の血清型は1a型であり、spaA遺伝子の609番目の塩基がG (グアニン) (spaA-609Gとする) であることから、この遺伝子産物にアミノ酸置換を伴う変異を伴っていることが明らかになっている。これらの野生株が何らかの選択圧を受けてこの変異を持つ株のみが生き残ったのか、あるいは、ある特定の毒性の強い株から派生した遺伝学的に同一(クローナル)集団の株であるのかは現在不明である。  そこで、国内における野外分離株の疫学的関連性を明らかにするため、当所における病性鑑定依頼株の中から、臨床的に(亜)急性型を示した豚から分離された血清型1a株を選択し、spaA 遺伝子の高度変異領域の配列を決定した。また、パルスフィールドゲル電気泳動による解析に加えて、これまでのゲノム解析で明らかになった一塩基多型 (SNP: Single Nucleotide Polymorphism) が認められる他の染色体領域のシークエンス解析、さらに、病原性への関与が予想される遺伝子の有無について、PCRによる解析を行った。  解析の結果、spaA-609Gは1994年に関東で分離された1株に認められるものの2008年より全国で増加傾向にあり、2011年の分離株ではすべてがこのタイプであった。また、生ワクチン株である小金井65-0.15株との関連性は低いことが示唆された。本発表では、これらの株がクローナルな集団であるのかどうかについて解析した成績を報告する。  * 本研究は一部、農林水産省レギュラトリーサイエンス事業による支援を受けて行った。

③死産子における豚サーコウイルス2型(PCV2)の検出及びPCV2ワクチン投与による効果16:40~16:55
杉山美樹1、古井丸広行1、中西信夫2、塚原隆充3、柴成宏1、小野恵利子1、木下現1
(1メリアル・ジャパン、2京都動物検査センター、3栄養・病理学研究所)
 PCV2は繁殖豚に感染した場合繁殖障害を引き起こすという報告がある。そこで、我々はPCV2陽性の国内2農場(A及びB)について死産子からPCV2の検出を試みPCV2ワクチン繁殖豚における効果について調査した。繁殖雌豚を2群に割り付け、サーコバック?を用法及び用量に従って投与した試験区と無投与の対照区を設定し、産子数、分娩及び産子の状態を観察し、由来産子について離乳頭数を確認した。また、流産及び早産した胎子、分娩時に斃死した産子についてPCV2抗原検査及び病理組織学的検査を実施した。その結果、対照区の死産子のみがPCV2陽性であり、正常産子率や離乳頭数といった繁殖成績指標に関して試験区は対照区より有意に高い結果が得られた。

 
3. 閉 会(16:55~17:00)
       <懇親会のお知らせ> 研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
        時 間:17:30~19:30
       場 所:レストラン エスポワール(つくば国際会議場内); 研究集会会場より徒歩 約10分
         〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3  TEL:029-850-3266
         http://www.epochal.or.jp/access/index.html
       会 費:5,000円

第79回日本豚病研究会・平成23年度日本豚病臨床研究会・ 平成23年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会 合同集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成23年10月12日(水) 10:00~17:00
(12:00~13:00昼休み)
場 所: タワーホール船堀 小ホール [http://www.towerhall.jp/]
〒134-0091 東京都江戸川区船堀4-1-1 TEL:03-5676-2211 (代)
◆◆◆◆◆
日  程

開  会(10:00~10:15)

豚インフルエンザについて(10:15~12:00)
座長:細川みえ(山形県庄内家畜保健衛生所)

1.豚インフルエンザウイルスのサーベイランス
動物衛生研究所  竹前善洋,廣本靖明、内田裕子、林 豪士、西藤岳彦
豚インフルエンザウイルス(SIV)は、豚に呼吸困難、咳などを主徴とする急性の呼吸器症状を引き起こし、養豚業に経済的損失を与える病原体の一つである。我々は、農場内におけるSIV循環メカニズムを調べるため、2008~2009年にタイ中央部の6つの一貫経営豚農場の調査を行った。各農場においていろいろな週齢の健康豚から鼻腔スワブを採取し、総計731検体のスワブからウイルス分離を試みた。その結果、4~8週令の離乳豚からのウイルス分離率が最も高かった。また国内では、家畜保健衛生所や国立感染症研究所との共同研究として、国内で分離されたSIVの解析を行うとともに、2009年からはベトナム北部と南部の農場・と畜場においてもSIVサーベイランスを実施している。
2.豚インフルエンザの発症事例
武田浩輝 ((有)アークベテリナリーサービス)
母豚数約200頭の一貫経営農場にて、2009年12月3日分娩舎にて咳をして食欲低下または廃絶となる母豚が3頭発生。その後、食滞の母豚数が増加し、さらに哺乳子豚にも咳が散見されるようになった。その翌日には休息ストール舎の母豚47頭に食滞が発生、12月7日には離乳舎の1号室の子豚が一斉に発咳をし、食欲廃絶状態とり、翌日には離乳舎各室の子豚にも発咳認められるようになった。この間、母豚の流産、離乳舎では2頭の死亡が確認され、そのうち1頭が脳症様の神経症状を呈していた。臨床症状、血液検査成績、死亡豚の剖検所見などから、豚インフルエンザと診断した。
3.豚におけるインフルエンザの影響とワクチンの効果について
村田 知 ((有)豊浦獣医科クリニック)

国内の養豚場において、インフルエンザ(H1N1・H2N3)の侵入とウイルスの農場内での循環による影響を、初侵入時の抗体価の推移と病変保有率の変化状況と、肺炎症状を伴う衰弱死や急性死亡の発生事例に対してのワクチン接種効果から推察した。
インフルエンザ(H1N1・H2N3)侵入に伴い、APPの抗体陽性率の増加と肺病変の増加が認められた。また、インフルエンザウイルスの循環が認められている農場において、ワクチン接種により、細菌の二次感染による肺病変の保有率低下と事故率低下が認められた。

[昼休み(幹事会  12:00~13:00)]
我が国におけるPRRSの現状(13:00~14:45)
座長:矢原芳博(日清丸紅飼料株式会社総合研究所)

1.豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の検査法-利点と欠点を知って賢く使う-
動物衛生研究所 伊関 博、高木道浩、川島健司、芝原友幸、恒光裕
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、PRRSウイルスの感染によって起こる母豚の流死産や虚弱子の分娩などの繁殖障害ならびに育成肥育豚の呼吸器病を特徴とする疾病である。PRRSウイルスの有する高い遺伝学的多様性は、しばしば検査結果の解釈を混乱させ、PRRSに対する誤った対応を採らせかねない。PRRSに対する検査法は幾つもあるためにその選択や検査結果の解釈が煩雑であり、今後は欧州型PRRSや高病原性PRRSが発生する可能性も考えてゆかねばならない。複雑さを増すばかりのPRRSではあるが、各種検査法の利点と欠点を理解することが、疾病コントロールの一助になると考える。

2.流産を主徴としたPRRS発生例

(有)サミットベテリナリーサービス 石関紗代子、石川弘道
豚繁殖・呼吸障害症候群(porcine reproductive and respiratory syndrome; PRRS)はPRRSウイルス感染によって引き起こされる、繁殖障害と呼吸器病を主な症状とする豚疾病であり、世界の養豚産業に大きな経済損失をもたらしている。母豚約1000頭を飼育する、一貫経営のある養豚場において、2009年11月末から12月上旬にかけて、流産を主徴としたPRRSが発生した。流産は主に妊娠後期の母豚に多発したが、その他の妊娠期間でも見られた。また、子豚へ垂直感染を示唆する所見も得られた。今回は、その発生の概要と被害状況、対策と結果を合わせて報告する。

3.PRRSウイルスの撲滅事例と、そこから学ぶ養豚密集地帯での農場安定化と今後の課題

(有)バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌、奥村華子

PRRSは最も経済的被害の大きい豚病の一つだが、その研究はこの10年で大きく前進し、ユニークな免疫応答、ウイルス変異、撲滅方法などが示されてきた。本発表では、これらの情報を基に筆者が日本で撲滅を試みてきた事例を報告する。成功例では、農場の火事を機にPRRSウイルスと同時に複数の病原体の撲滅に成功した事例と、大規模マルチサイト農場で7年がかりで撲滅した事例を示す。また、PRRSワクチンの継続的接種で野外株の検出が無くなった農場で、接種を停止し撲滅を試みたが失敗した事例を示す。一方、養豚密集地帯では、複数のPRRSウイルス株が存在する農場もあり、その安定化成功の事例を示し、今後の対応策や課題について検討する。

[休 憩  14:45~15:05]

口蹄疫からの復興のの現状(15:05~15:40)                                                           座長:中村高志(豊浦獣医科クリニック)

1.2010年口蹄疫被災地の畜産の現状
宮崎大学 末吉益雄

2010年4月20日口蹄疫発生、7月5日最終埋却終了、7月27日に移動制限解除、8月27日に終息宣言、8月31日から「観察牛」導入開始、10月6日にOIEへ「清浄国復帰」申請、2011年2月5日に清浄国復帰した。1270戸の農場から家畜が消え、2010年9月の調査では、再開希望は80.6%であった。11月29日、初めての子牛が誕生し、翌年4月14日に子豚が誕生した。2011年4月14日時点で、農場復帰率は49%、復帰頭数が30%である。再開戸数と頭数の種別では、酪農がそれぞれ71%、58%、和牛が51%、28%、養豚は29%と32%である。獣医師は農場訪問方法を模索しつつ、往診を再開しているが、獣医師など畜産に密接に関連する事業についてはその需要が減り、収入は激減している。
2 口蹄疫被災地域の再生復興の取り組み-特定疾病のない養豚地域の構築-

宮崎県農政水産部 畜産・口蹄疫復興対策局 畜産課家畜防疫対策室 西元俊文

昨年、本県で発生した口蹄疫では約30万頭の家畜が殺処分され、特に発生が集中した西都・児湯地域では飼養していたほぼすべての家畜を失った。県では「口蹄疫からの再生・復興方針」を策定し、防疫体制の強化や経営再開支援など、種々の取り組みを行っている。このような中、当該地域では養豚農家が中心となり「新生養豚プロジェクト協議会」を立ち上げ、ADやPRRSなど特定疾病のない地域づくりへの取り組みを開始した。県はこの支援策として導入豚の抗体検査や導入費の一部助成を行っている。5月末現在、同地域では、殺処分された養豚農家のうち55戸(44%)が経営を再開しており、繁殖成績や肥育成績の向上が認められつつある。
3 口蹄疫発生その後(児湯地域の復興の状況)

(有) シガスワインクリンニック 志賀 明

2010年4月に宮崎県で発生した口蹄疫は、29万頭の牛、豚の犠牲と全国からの多くの方々ご支援のおかげで同年8月27日に終息した。
宮崎県の児湯地域は、この口蹄疫発生で全ての牛、豚を殺処分された。養豚に関しては被害にあった生産者を中心に、西都児湯新生養豚プロジェクト協議会が設立され、豚がゼロになったこの地域の養豚再生に向けた取り組みが協議され、地域の取組として特定疾病(ADとPRRS)のない地域を目指すこととした。それに向けて、行政を含めて数々のルール作りや実際の取組を重ねて、同年11月1日より豚の導入が始まった。
今回、導入再開後の地域での着地検査や他の問題点、そして復興農場で起こった諸問題について報告する。

閉  会(16:50~17:00)

<お知らせ>
・研究集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願いいたします。
・研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。

※ 研究集会参加費:会員・学生は無料です (会員の年会費は1500円です)。
非会員は1500円です。

懇親会について
時 間: 17:45~19:45
場 所: 旬鮮菜膳 拓樹 (研究集会会場から2、3分の場所です)
東京都江戸川区船堀1-8-15 永楽ビル2F TEL 03-5696-0138
会 費: 4,000円 (会費は当日受付で申し受けます)

○懇親会参加人数把握のため、参加可能な方は、9月20日(火)までに、下記どちらかへメールでご連絡ください。
○懇親会人数に余裕があれば、当日も参加をお受けします。
懇親会参加者連絡先: JASV事務局 ㈲ベネット 中村節子    venet@nifty.com
日本豚病研究会事務局           tonbyou@ml.affrc.go.jp