第86回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

日本豚病研究会は春の研究集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成27年5月22日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
(〒305-0032 茨城県つくば市竹園2丁目20-5)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/kouryucenter/

日 程
1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 特別講演(13:30~14:45)
座長 鈴木 亨[動物衛生研究所]

コロナウイルスの病原性因子の解析

大阪大学微生物病研究所 感染症国際研究センター  神谷 亘 先生
[休憩  14:45~15:00]

座長 宮﨑綾子[動物衛生研究所]

3.豚流行性下痢(PED)発生農場における感染抗体及びワクチン抗体消長調査(15:00~15:20)
村山修吾(新潟県中央家畜保健衛生所)

4.離乳舎で多発する疾病について
座長 矢原芳博[日清丸紅飼料(株)総合研究所]

1) 離乳舎でどんな疾病が多発しているか-臨床検査機関のデータより-(15:20~15:30)
矢原芳博(日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ)

2) 臨床獣医師が遭遇している離乳舎の疾病(15:30~16:00)
石関紗代子(有限会社 サミットベテリナリーサービス)

3) 離乳後問題となる疾病(16:00~16:30)
芝原友幸(動物衛生研究所)

4) 総合討論(16:30~16:50)

5. 閉 会(16:50~17:00)

<懇親会のお知らせ> 研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。
時 間:17:30~18:30
場 所:レストラン エスポワール(つくば国際会議場内)研究集会会場より徒歩 約10分
〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3 TEL:029-850-3266
会 費:5,000円

講 演 要 旨
【特別講演】
コロナウイルスの病原性因子の解析
神谷 亘(大阪大学微生物病研究所 感染症国際研究センター)

ヒトにおけるコロナウイルス感染症では、2002年度に発生した重篤な肺炎を引き起こすSARSコロナウイルルス、さらに、2012年より中東を中心に発生しているMERSコロナウイルスが、強い病原性を示すコロナウイルスとして知られています。
私たちは、SARSコロナウイルスの病原性因子を解明するために、非構造蛋白質の1つであるnsp1蛋白質の機能解析を行っています。SARSコロナウイルスのnsp1蛋白質は、細胞質に局在する蛋白質で、宿主細胞内でリボゾームと結合することで、宿主の蛋白質合成を強力に抑制します。今回の講演では、私たちのグループが研究してきているSARSコロナウイルスのnsp1蛋白質を中心にして、コロナウイルスの病原性因子について、ウイルス学的な知見を紹介いたします。

○豚流行性下痢(PED)発生農場における感染抗体及びワクチン抗体消長調査
村山修吾(新潟県中央家畜保健衛生所)
新潟県内におけるPEDの流行を受け、管内の発生2農場及び未発生1農場において抗体検査を行った。発生農場では同一母豚を2週間隔で4か月間、未発生農場ではワクチン接種時と分娩及び離乳時に採血し、感染抗体とワクチン抗体の消長を調査した。その結果、ワクチン未接種の母豚では、感染抗体は発症から概ね9週目がピークでその後緩やかに低下したが、発症から21週目の時点でも抗体を保有していた。発生農場では1回目のワクチン接種2週間後に抗体の上昇が確認されたが、2回目接種後に更なる抗体上昇がみられる母豚は少なかった。未発生農場の抗体陰性母豚では1回目接種で抗体上昇は認められず、2回目接種後の分娩時に上昇がみられた。しかし接種後抗体上昇が認められない母豚も存在した。

○離乳舎で多発する疾病について
1) 離乳舎でどんな疾病が多発しているか-臨床検査機関のデータより-
矢原芳博(日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ)

豚流行性下痢(PED)は全国的な広がりを見せ、ここ最近の養豚業界での話題はPED一色と言っても過言ではない。しかし現在も国内の養豚場の離乳舎では、継続的にPED以外の様々な疾病も発生しており、農場内の事故率の主要な部分を占めている。
特に、病原性大腸菌症やレンサ球菌症は、被害を受けている農場も多く、さらに豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)が、これら細菌性感染症の増悪因子となっているケースもある。本コーナーでは、離乳舎で多発する疾病について、臨床検査機関、臨床獣医師、研究者のそれぞれの立場からの情報を総合し、問題点と対処法について整理したい。
演者はその前段として、離乳舎においてどのような疾病が多発しているのかについて、検査機関内のデータを基に紹介する。

2)  臨床獣医師が遭遇している離乳舎の疾病
石関紗代子(有限会社 サミットベテリナリーサービス)

日本各地の養豚場を訪問していると、浮腫病やレンサ球菌症、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)など、離乳舎での様々な疾病に遭遇する。これらの疾病は飼養衛生管理に関連して発生していることも多く、離乳後事故率を増加させるなど養豚場の生産性を下げる要因となっている。養豚臨床獣医師の立場として、離乳舎での疾病について、どのような疾病が発生し、それに対してどのように対処しているのか、さらにその対策の難しさ等について、具体例を交えて報告する。

3)  離乳後問題となる疾病
芝原友幸(動物衛生研究所)

離乳後の豚は様々な病原体に感染する機会が増すとともに、その飼育環境の変化等により発症しやすい状態となる。昨今、豚流行性下痢(PED)が北米、アジア各国で発生しているなかで、大腸菌症、豚増殖性腸炎、豚アメーバ症(Entamoeba suisとEntamoeba polecki感染症)及び豚赤痢(Brachyspira hyodysenteriaeと“Brachyspira hampsonii” 感染症)などの消化器疾病が注目されている。疾病防除の観点から、これら疾病の類症鑑別は不可欠である。本講演では、これらの疾病に関して、我々の研究と最近の学術的知見について紹介する。