第79回日本豚病研究会・平成23年度日本豚病臨床研究会・ 平成23年度日本養豚開業獣医師協会 合同集会は終了いたしました。

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会 合同集会を下記の要領で開催いたしました。

日 時: 平成23年10月12日(水) 10:00~17:00
(12:00~13:00昼休み)
場 所: タワーホール船堀 小ホール [http://www.towerhall.jp/]
〒134-0091 東京都江戸川区船堀4-1-1 TEL:03-5676-2211 (代)
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日  程

開  会(10:00~10:15)

豚インフルエンザについて(10:15~12:00)
座長:細川みえ(山形県庄内家畜保健衛生所)

1.豚インフルエンザウイルスのサーベイランス
動物衛生研究所  竹前善洋,廣本靖明、内田裕子、林 豪士、西藤岳彦
豚インフルエンザウイルス(SIV)は、豚に呼吸困難、咳などを主徴とする急性の呼吸器症状を引き起こし、養豚業に経済的損失を与える病原体の一つである。我々は、農場内におけるSIV循環メカニズムを調べるため、2008~2009年にタイ中央部の6つの一貫経営豚農場の調査を行った。各農場においていろいろな週齢の健康豚から鼻腔スワブを採取し、総計731検体のスワブからウイルス分離を試みた。その結果、4~8週令の離乳豚からのウイルス分離率が最も高かった。また国内では、家畜保健衛生所や国立感染症研究所との共同研究として、国内で分離されたSIVの解析を行うとともに、2009年からはベトナム北部と南部の農場・と畜場においてもSIVサーベイランスを実施している。
2.豚インフルエンザの発症事例
武田浩輝 ((有)アークベテリナリーサービス)
母豚数約200頭の一貫経営農場にて、2009年12月3日分娩舎にて咳をして食欲低下または廃絶となる母豚が3頭発生。その後、食滞の母豚数が増加し、さらに哺乳子豚にも咳が散見されるようになった。その翌日には休息ストール舎の母豚47頭に食滞が発生、12月7日には離乳舎の1号室の子豚が一斉に発咳をし、食欲廃絶状態とり、翌日には離乳舎各室の子豚にも発咳認められるようになった。この間、母豚の流産、離乳舎では2頭の死亡が確認され、そのうち1頭が脳症様の神経症状を呈していた。臨床症状、血液検査成績、死亡豚の剖検所見などから、豚インフルエンザと診断した。
3.豚におけるインフルエンザの影響とワクチンの効果について
村田 知 ((有)豊浦獣医科クリニック)

国内の養豚場において、インフルエンザ(H1N1・H2N3)の侵入とウイルスの農場内での循環による影響を、初侵入時の抗体価の推移と病変保有率の変化状況と、肺炎症状を伴う衰弱死や急性死亡の発生事例に対してのワクチン接種効果から推察した。
インフルエンザ(H1N1・H2N3)侵入に伴い、APPの抗体陽性率の増加と肺病変の増加が認められた。また、インフルエンザウイルスの循環が認められている農場において、ワクチン接種により、細菌の二次感染による肺病変の保有率低下と事故率低下が認められた。

[昼休み(幹事会  12:00~13:00)]
我が国におけるPRRSの現状(13:00~14:45)
座長:矢原芳博(日清丸紅飼料株式会社総合研究所)

1.豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の検査法-利点と欠点を知って賢く使う-
動物衛生研究所 伊関 博、高木道浩、川島健司、芝原友幸、恒光裕
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、PRRSウイルスの感染によって起こる母豚の流死産や虚弱子の分娩などの繁殖障害ならびに育成肥育豚の呼吸器病を特徴とする疾病である。PRRSウイルスの有する高い遺伝学的多様性は、しばしば検査結果の解釈を混乱させ、PRRSに対する誤った対応を採らせかねない。PRRSに対する検査法は幾つもあるためにその選択や検査結果の解釈が煩雑であり、今後は欧州型PRRSや高病原性PRRSが発生する可能性も考えてゆかねばならない。複雑さを増すばかりのPRRSではあるが、各種検査法の利点と欠点を理解することが、疾病コントロールの一助になると考える。

2.流産を主徴としたPRRS発生例

(有)サミットベテリナリーサービス 石関紗代子、石川弘道
豚繁殖・呼吸障害症候群(porcine reproductive and respiratory syndrome; PRRS)はPRRSウイルス感染によって引き起こされる、繁殖障害と呼吸器病を主な症状とする豚疾病であり、世界の養豚産業に大きな経済損失をもたらしている。母豚約1000頭を飼育する、一貫経営のある養豚場において、2009年11月末から12月上旬にかけて、流産を主徴としたPRRSが発生した。流産は主に妊娠後期の母豚に多発したが、その他の妊娠期間でも見られた。また、子豚へ垂直感染を示唆する所見も得られた。今回は、その発生の概要と被害状況、対策と結果を合わせて報告する。

3.PRRSウイルスの撲滅事例と、そこから学ぶ養豚密集地帯での農場安定化と今後の課題

(有)バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌、奥村華子

PRRSは最も経済的被害の大きい豚病の一つだが、その研究はこの10年で大きく前進し、ユニークな免疫応答、ウイルス変異、撲滅方法などが示されてきた。本発表では、これらの情報を基に筆者が日本で撲滅を試みてきた事例を報告する。成功例では、農場の火事を機にPRRSウイルスと同時に複数の病原体の撲滅に成功した事例と、大規模マルチサイト農場で7年がかりで撲滅した事例を示す。また、PRRSワクチンの継続的接種で野外株の検出が無くなった農場で、接種を停止し撲滅を試みたが失敗した事例を示す。一方、養豚密集地帯では、複数のPRRSウイルス株が存在する農場もあり、その安定化成功の事例を示し、今後の対応策や課題について検討する。

[休 憩  14:45~15:05]

口蹄疫からの復興のの現状(15:05~15:40)                                                           座長:中村高志(豊浦獣医科クリニック)

1.2010年口蹄疫被災地の畜産の現状
宮崎大学 末吉益雄

2010年4月20日口蹄疫発生、7月5日最終埋却終了、7月27日に移動制限解除、8月27日に終息宣言、8月31日から「観察牛」導入開始、10月6日にOIEへ「清浄国復帰」申請、2011年2月5日に清浄国復帰した。1270戸の農場から家畜が消え、2010年9月の調査では、再開希望は80.6%であった。11月29日、初めての子牛が誕生し、翌年4月14日に子豚が誕生した。2011年4月14日時点で、農場復帰率は49%、復帰頭数が30%である。再開戸数と頭数の種別では、酪農がそれぞれ71%、58%、和牛が51%、28%、養豚は29%と32%である。獣医師は農場訪問方法を模索しつつ、往診を再開しているが、獣医師など畜産に密接に関連する事業についてはその需要が減り、収入は激減している。
2 口蹄疫被災地域の再生復興の取り組み-特定疾病のない養豚地域の構築-

宮崎県農政水産部 畜産・口蹄疫復興対策局 畜産課家畜防疫対策室 西元俊文

昨年、本県で発生した口蹄疫では約30万頭の家畜が殺処分され、特に発生が集中した西都・児湯地域では飼養していたほぼすべての家畜を失った。県では「口蹄疫からの再生・復興方針」を策定し、防疫体制の強化や経営再開支援など、種々の取り組みを行っている。このような中、当該地域では養豚農家が中心となり「新生養豚プロジェクト協議会」を立ち上げ、ADやPRRSなど特定疾病のない地域づくりへの取り組みを開始した。県はこの支援策として導入豚の抗体検査や導入費の一部助成を行っている。5月末現在、同地域では、殺処分された養豚農家のうち55戸(44%)が経営を再開しており、繁殖成績や肥育成績の向上が認められつつある。
3 口蹄疫発生その後(児湯地域の復興の状況)

(有) シガスワインクリンニック 志賀 明

2010年4月に宮崎県で発生した口蹄疫は、29万頭の牛、豚の犠牲と全国からの多くの方々ご支援のおかげで同年8月27日に終息した。
宮崎県の児湯地域は、この口蹄疫発生で全ての牛、豚を殺処分された。養豚に関しては被害にあった生産者を中心に、西都児湯新生養豚プロジェクト協議会が設立され、豚がゼロになったこの地域の養豚再生に向けた取り組みが協議され、地域の取組として特定疾病(ADとPRRS)のない地域を目指すこととした。それに向けて、行政を含めて数々のルール作りや実際の取組を重ねて、同年11月1日より豚の導入が始まった。
今回、導入再開後の地域での着地検査や他の問題点、そして復興農場で起こった諸問題について報告する。

閉  会(16:50~17:00)

<お知らせ>
・研究集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願いいたします。
・研究集会終了後、懇親会(当日受付)を予定しております。ふるってご参加ください。

※ 研究集会参加費:会員・学生は無料です (会員の年会費は1500円です)。
非会員は1500円です。

懇親会について
時 間: 17:45~19:45
場 所: 旬鮮菜膳 拓樹 (研究集会会場から2、3分の場所です)
東京都江戸川区船堀1-8-15 永楽ビル2F TEL 03-5696-0138
会 費: 4,000円 (会費は当日受付で申し受けます)

○懇親会参加人数把握のため、参加可能な方は、9月20日(火)までに、下記どちらかへメールでご連絡ください。
○懇親会人数に余裕があれば、当日も参加をお受けします。
懇親会参加者連絡先: JASV事務局 ㈲ベネット 中村節子    venet@nifty.com
日本豚病研究会事務局           tonbyou@ml.affrc.go.jp