第74回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

第74回日本豚病研究会研究集会の概要

日 時: 平成20年10月20日(月) 13:00~17:25
場 所: 東京大学弥生講堂・一条ホール
 (東京都文京区弥生1-1-1 東京大学農学部内) [http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/]
 Tel. : 03-5841-8205 Fax. : 03-5841-5028
演 題:
(座長)小林秀樹

豚胸膜肺炎(13:00-13:45)
動物衛生研究所 伊藤博哉
 豚胸膜肺炎は、線維素性壊死性胸膜肺炎を主徴とする豚の重要な細菌性呼吸器系疾病の一つである。本病の罹病率及び致死率は高く,養豚産業に与える経済的被害は大きい。その重要性から、本病及びその起因菌Actinobacillus pleuropneumoniaeの研究は、世界的に幅広くかつ詳細に実施されてきている。今回はA. pleuropneumoniaeの細菌学的知見を中心として、豚胸膜肺炎に関する現在までの知見を紹介する。

多臓器に膿瘍の見られたアクチノバチルス症の1例(13:45-14:15)
動物衛生研究所 久保正法、芝原友幸
 Actinobacillus pleuropneumoniae(App)は、通常は肺に特徴的な病変を形成する。今回は、多臓器に膿瘍を形成した変わったApp感染症を紹介する。  患畜は約50日齢の子豚で、削痩、被毛粗剛のため鑑定殺された。剖検では、肺の前葉から中葉にかけて肝変化し、微小膿瘍も見られた。肝には全体的に点状出血と微小膿瘍が見られた。ソケイリンパ節は腫大し水腫様であった。細菌学的には、肺からAppとPasteurellaが分離され、肺門リンパ節からPasteurellaとHaemophilus parasuisが分離された。組織学的には、肝、脾、肺、リンパ節、膀胱に中に菌塊を含む多発性膿瘍が見られた。抗App 2型による免疫染色により、菌は陽性に反応した。

と畜場搬入豚におけるActinobacillus pleuropneumoniae 2型による多発性肉芽腫性肝炎(14:15-15:15)
富山県食肉検査所1、動物衛生研究所2、宮城県仙台家畜保健衛生所3 ○大場剛実1、芝原友幸2、小林秀樹2、高島阿里子1、名越雅高1、長内利佳2,3、久保正法2
 多発性結節性肝炎と病原体の関連を明らかにするために、42農場由来66,894頭のと場搬入豚の肝臓を肉眼的に検査したところ、19頭(10農場由来)の多発性肝炎を検出した。組織学的に11頭(3農場由来)にアステロイド小体を伴う肉芽腫がみられ、小体内にグラム陰性菌を認めるものもあった。免疫組織化学的にこの細菌はA. pleuropneumoniae (App)2型抗体に反応した。類似する所見が、肺(7/7頭)、脾臓(1/5頭)、リンパ節(1/9頭)でもみられた。細菌学的にApp 2型が、肝臓(7/11頭)、肺(7/7頭)と脾臓(1/6頭)から分離された。これらの結果から、App 2型が肥育後期の豚に肺炎を伴う多発性肉芽腫肝炎、脾炎、リンパ節炎を引き起こすことが分かった。

(座長)高木道浩

PRRSの発生による経済的な損失評価(15:25-15:55)
動物衛生研究所1、バリューファーム・コンサルティング2、サミットベテリナリー サービス3     ○山根逸郎1、呉克昌2、石川弘道3 、高木道浩1、吉井雅晃1、沖永龍之1、宮崎綾子1、鈴木孝子1、芝原友幸1、久保正法1、小林秀樹1、恒光裕1
 PRRSの発生による経済損失の報告は少ない。今回、過去にPRRSの発生があった5農場の経済損失を、発生期と非発生期の6項目(流産や事故率等)の生産指標の差から計算し、PRRS発生期間中の1母豚1ヶ月当たりの項目ごとの平均損失額を算出した。全国の養豚農家(n=116)を対象に、アンケートを用いて過去2年間のPRRS発生と、発生に伴う上記の6項目の損耗の有無を調べ、前述した項目ごとの平均損失額を当てはめ、発生による損失を算出した。この結果と全国の母豚数との比率より、全国の養豚場のPRRS発生による年間損失は約400億円と推定され、流産(34.9%)、離乳期の事故率の増加(24.2%)、肥育期の事故率の増加(22.2%)による損失割合が高かった。

PRRSから学ぶ養豚疾病対策の将来像(15:55-16:55)
スワイン・エクステンション&コンサルティング、 ミネソタ大学豚病撲滅センター 大竹 聡
 豚繁殖呼吸障害症候群(PRRS)は、その経済被害の大きさから現在の世界養豚産業において最も重要視されている疾病である。アメリカではPRRSを克服するための様々な研究と現場検証が行われ結果を出してきている。かたや日本ではPRRSという名前だけが一人歩きしているような状態で必ずしも正しい情報が浸透していないのが現状であり、その認識と対策に非常に大きなギャップを感じる。今回は演者の国内外における知見・経験をもとにPRRSの実態とその対策法について明らかにしたい。アメリカのPRRS対策の取り組みの歴史と今後の展望を垣間見ることで、業界全体としての養豚疾病対策の本来あるべき姿が浮かび上がってくる。

(座長)津田知幸

オーエスキー病防疫対策要領の改正について(16:55-17:25)
農林水産省消費・安全局動物衛生課 荻窪恭明
 オーエスキー病については、平成3年度から「オーエスキー病防疫対策要領」に基づき、発生状況等に応じ、地域区分を設け、清浄化対策を進めてきました。これまでの取組の結果、本病の浸潤の拡大は阻止してきたものの、浸潤地域の清浄化は、一部に止まっている状況にありました。本病の清浄化に向けた更なる対策を図るため、昨年6月にオーエスキー病防疫技術検討会を設置し、本病対策のあり方について検討を行い、本年6月には、この検討結果等を踏まえ、本要領を改正したところです。遅くとも本年11月中までにはオーエスキー病の早期の清浄化に向けた新たな防疫対応を推進していくこととしています。