第100回日本豚病研究会 研究集会のお知らせ(第一報)

令和4年2月8日
日本豚病研究会事務局

日本豚病研究会会員各位

 

第100回日本豚病研究会 研究集会のお知らせ
(第一報)

 
 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 令和4年度日本豚病研究会定期総会及び第100回研究集会を下記の通り開催いたします。

 新型コロナウイルス感染症の発生状況により開催方法がオンラインとなる可能性があります。

 最新情報は逐次HPに掲載しますので、随時確認いただきますよう願い申し上げます。

 

日時:  2022年5月20日(金)13:00~17:00

場所:  文部科学省 研究交流センター(茨城県つくば市竹園2-20-5)

参加費: 会員は無料、非会員は1,500円

* 新型コロナウイルス感染症の発生状況によりオンライン開催となる可能性があります。
* 最新情報は逐次日本豚病研究会ホームページにてお知らせいたします。随時ご確認願います。

 

 以上

日本豚病研究会 第106回研究集会開催のご案内

日本豚病研究会は、令和7年度定期総会および第106回研究集会春の研究集会を下記要領で開催しますのでご案内致します。 

  

日 時: 令和75月23日(金) 13:00~17:00 
場 所: 文部科学省研究交流センター 
     〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-5 
     駐車場は敷地内北側にあります。 

【研究集会終了後、懇親会を予定しております】
時 間: 令和6年5⽉23⽇(⾦)18:00~20:00
場 所: 三浦飲⾷堂
〒305-0031 茨城県つくば市吾妻1丁⽬5
会費:7,000円
参加登録:5⽉19⽇(月)までに下記にてお申し込みください。(先着60名)
① QRコードを読み込んで登録
② お名前及びご所属をtonbyouken@gmail.comに送信

お申し込みフォーム

日 程

 1. 開 会   令和7年度定期総会               (13:00~13:30 

[休 憩 13:30~13:40] 

2. 一般口演                          (13:40~14:30 

座長:宮﨑 綾子 [農研機構 動物衛生研究部門] 

2.1 野生イノシシにおける豚熱及びアフリカ豚熱検査の現状     (13:40~14:05
富永 みその (農林水産省 消費・安全局 動物衛生課)

2.2 豚のアニマルウェルフェアに対応した使用管理技術       (14:05~14:30
竹田 謙一 (信州大学農学部 動物行動管理学研究室)

[休 憩 14:30~14:40 

3. 特別講演 Lesson to learn from FMD 2010           (14:40~16:40)

座長:生澤 充隆 [農研機構 動物衛生研究部門] 

3.1 口蹄疫総論                         (14:40~15:10)
深井 克彦(農研機構 動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域)

3.2 動衛研における近年の口蹄疫研究               (15:10~15:40)
西 達也(農研機構 動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域)

 

座長:舛甚 賢太郎 [農研機構 動物衛生研究部門]

3.3 2025年に欧州及び韓国で発生した口蹄疫と農林水産省の緊急対応について 
山田 匡之(農林水産省 消費・安全局 動物衛生課)       (15:40~16:10)                           
  

3.4 2010年の口蹄疫発生に伴う防疫措置とその後の関係者一体となった防疫体制について 
片山 貴志(宮崎県 農政水産部 畜産局 家畜防疫対策課)    (16:10~16:40)                           

4. 閉 会                           (16:40~17:00) 

 

講演要旨

●一般口演

野生イノシシにおける豚熱及びアフリカ豚熱検査の現状
             富永 みその(農林水産省 消費・安全局 動物衛生課) 

 野生イノシシでの豚熱・アフリカ豚熱サーベイランスの実施は、感染状況の把握や早期発見に必須であり、野生イノシシのみならず飼養豚での感染対策に必要な取組である。特に、発見時に死亡している個体(死亡個体)は、豚熱・アフリカ豚熱に感染している可能性が高く、検査の重要性が高い。しかし、死亡個体の臓器採材は交差汚染リスクが特に高く、また、腐敗進行による検査不適の懸念や作業者への衛生リスク・精神的負担が大きいといった問題もある。本講演では野生イノシシでの豚熱及びアフリカ豚熱サーベイランスに関する経緯とともに、死亡個体で開始した、簡便に採材可能な耳介検体による検査の妥当性及び有用性に関する分析結果を報告する。 

豚のアニマルウェルフェアに対応した使用管理技術
              竹田 謙一(信州大学農学部 動物行動管理学研究室 

世界的にアニマルウェルフェア(AW)に対応した家畜飼育が進められている。AWとは、動物が生活している状況(=日常の飼育環境)や死の状況(=食用目的のと畜や疾病管理目的のための殺処分)に関連した動物の身体的、精神的状態と定義されている。AWは現在、「5つの自由」という5つの視点から総合的に実際の飼育環境等を評価しようとしている。しかし欧米を中心に、「5つの自由」のうちの「正常な行動を発現する自由」に焦点が集まっている。演者らは、これまでに妊娠豚および分娩豚の正常な行動を発現しうる飼育環境下での行動評価や生産性評価を行ってきた。本講演では、その成果の一部や民間企業における取り組みについて紹介する。 

●特別講演 Lesson to learn from FMD 2010 

口蹄疫総論
        深井 克彦(農研機構 動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域) 

口蹄疫は牛や緬山羊および豚などの偶蹄類の急性熱性伝染病であり、その名のとおり、口や鼻および蹄などの水疱形成を特徴とする。本病は強い伝染力を持ち、清浄地にひとたび侵入すれば、瞬く間にまん延する危険性を持っている。また本病は罹患動物に栄養障害や運動障害といった直接的な被害をもたらすとともに、発生国や地域に家畜や畜産物の輸出停止といった経済的被害ももたらす。わが国において本病は、2010年以降、15年間にわたって発生を見ていないが、近隣諸国においては未だ本病の発生が継続しており、依然として本病の侵入リスクは高い。特に隣国韓国においては、本年3月に約2年ぶりに本病が発生し、最大限の警戒が必要である。本講演においては、わが国への侵入リスクが最大限に高まった本病への備えとして、本病の性状について、改めて復習したい。 

動衛研における近年の口蹄疫研究
         西 達也(農研機構 動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域) 

口蹄疫のまん延防止には、迅速な摘発と効果的な防疫対策が不可欠である。農研機構動物衛生研究部門(動衛研)ではこれまで、その基盤を構築し、さらに発展させるため、動物実験を通じたウイルスの病態解析と、それに基づく精度の高い診断法の確立、新規迅速診断法の開発と普及、さらにはまん延防止技術の開発に積極的に取り組んできた。本講演では、これらの研究の概要と主要な成果をご紹介する。  

2025年に欧州及び韓国で発生した口蹄疫と農林水産省の緊急対応について
              山田 匡之(農林水産省 消費・安全局 動物衛生課) 

2025年1月10日、ドイツで1988年以来の口蹄疫発生が報告された。3月7日、ハンガリーで1972年以来の発生が報告され、同月22日にはスロバキアでも1973年以来の発生が報告された。ハンガリー・スロバキアでは、発生地点周辺での続発も確認されており、今後の欧州における口蹄疫の発生拡大について予断を許さない状況が続いている。また、韓国においても、本年3月14日に、2023年5月以来となる口蹄疫発生が同国南部の全羅南道で報告され、発生地点周辺での続発が確認されている。農林水産省動物衛生課での各国当局の発生報告確認から、動物検疫所での動物検疫強化実施までの緊急対応の実態を紹介する。 

2010年の口蹄疫発生に伴う防疫対応とその後の関係者一体となった防疫体制について
           片山 貴志(宮崎県 農政水産部 畜産局 家畜防疫対策課) 

2010年に宮崎県で発生した口蹄疫は、4月20日の牛農場での初発事例以降、国内で初めて豚への感染が確認されるなど、県央部の児湯・西都地域を中心に同時多発かつ面的な感染拡大がみられた。さらに、5月18日には都道府県では初となる「非常事態宣言」を行ったため、畜産業のみならず県内経済や県民生活にも大きな影響を及ぼした。また、発生に伴う農場での殺処分や消毒などの防疫作業は、全国からの動員や自衛隊の協力を得ながら7月4日までに終了したが、計297,808頭の尊い命が犠牲となった。その後、農場内に封じ込めた家畜排せつ物の堆肥化処理を進め、4月の発生確認から130日間が経過した8月27日に終息した。
この口蹄疫を経験した本県は、もう2度と発生させないという強い想いを胸に、家畜防疫を畜産経営の土台と位置づけ、県内の関係者が一体となった防疫体制を構築した上で、口蹄疫からの再生、復興、畜産の新生を力強く進めてきた。
今回は、口蹄疫発生当時の壮絶な防疫対応と、口蹄疫以降に構築した新たな防疫体制による『家畜防疫の4本柱』(「水際防疫」、「地域防疫」、「農場防疫」、「万一の発生に備えた迅速な防疫措置」)の取組について紹介したい。 

 

 

第105回日本豚病研究会・2024年度日本豚病臨床研究会・ 令和6年度日本養豚開業獣医師協会 第14回合同集会のお知らせ(終了しました)

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会は、第 14 回合同集会を
下記の通り開催いたします。なお、ご参加にあたっては「【別紙】参加登録要領」をご確認のうえ、2024 年 10 月 17 日(木)までに事前登録をお願いいたします。

日 時: 2024 年 10 月 25 日(金) 10:00~17:00
9:30 より受付
場 所: つくば国際会議場 多目的ホール
茨城県つくば市竹園 2-20-3
開催形式: 集合形式およびオンラインウェビナー形式
参加資格: いずれかの団体の会員であること(賛助会員を含む)
但し、非会員の方は、日本豚病研究会の会員へご登録いただくことにより参加可能です。詳細は「参加登録サイト」にてご確認ください。
定 員: 現地参加 300 名(先着順)
オンライン参加 定員なし
参 加 費: 集会 無料
懇親会 8,800 円(希望者)
締 切: 2024 年 10 月 17 日(木)

以上

日 程

開 会(10:00~10:05)
〇 統一テーマ「豚熱」(10:05~15:10)

座長:深井 克彦(農研機構 動物衛生研究部門)

1. 野生イノシシにおける豚熱サーベイランスの概要と疫学解析事例 (10:05~10:45)

農研機構 動物衛生研究部門 早山 陽子[豚病研]

2. クロバエによる豚熱ウイルスの伝播リスク評価 (10:45~11:25)

栃木県県央家畜保健衛生所 小笠原 悠[豚病研]

座長:小池 郁子(エス・エム・シー㈱)

3. 豚熱ウイルス E2 抗原によるブースター効果の検証(11:25~12:05)

㈱微生物化学研究所 原田 ひかる[JASV]

[昼休み(各自昼食をお取りください)12:05~13:30]

座長:小池 郁子(エス・エム・シー㈱)

4. 豚熱発生農場の近隣農場における緊急対応と防疫指導の実例 (13:30~14:10)

グローバルピッグファーム㈱ 石関 史哉[豚臨研]

5. HogStop の紹介と今後の日本での可能性(14:10~14:50)

㈱バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌[JASV]

座長:深井 克彦(農研機構 動物衛生研究部門)

座長:小池 郁子(エス・エム・シー㈱)

6.総合討論 (14:50~15:35)

[休憩 15:35~15:45]

〇 一般口演 (15:45~16:45)

座長:新井 暢夫(農研機構 動物衛生研究部門)

1. 新規豚丹毒生ワクチンと抗体検査法の開発について (15:45~16:05)

農研機構 動物衛生研究部門 西川 明芳[豚病研]

座長:石川 弘道(㈲サミットベテリナリーサービス)

2. 母豚の淘汰指標として直近 3 産の分娩データを用いた成績改善効果 (16:05~16:25)

NOSAI 宮崎 辻 厚史[豚臨研]

3. IPVS2024 レポート (16:25~16:45)

㈲サミットベテリナリーサービス 石井 宏治[JASV]

閉 会 (16:45~16:55)

講演要旨

○ 統一テーマ「豚熱」
1. 野生イノシシにおける豚熱サーベイランスの概要と疫学解析事例

早山 陽子(農研機構 動物衛生研究部門)

2018 年 9 月、国内で 26 年ぶりに豚熱の発生が確認され、豚熱の感染は飼養豚のみならず、野生イノシシにも広がった。野生イノシシ集団内での感染のコントロールは難しく、イノシシでの感染は拡大・継続し、現在では東北地方から九州北部にかけて感染が確認されている。豚熱の発生以降、死亡した個体や捕獲された個体の検体を用いたイノシシのサーベイランスが全国的に行われている。本講演では、現在行われているイノシシの豚熱サーベイランスの概要を報告し、感染状況や免疫保有状況の地理的・時間的なトレンドを紹介する。また、イノシシにおける豚熱の疫学解析事例として、感染イノシシから飼養豚への感染リスクの推定や豚熱ウイルスのフルゲノム解析による伝播経路の推定等について紹介する。

2. クロバエによる豚熱ウイルスの伝播リスク評価

小笠原 悠(栃木県県央家畜保健衛生所)

近年、国内の養豚農場において、甚大な被害をもたらしてきた豚熱は、野生の豚熱感染イノシシが感染源であることが知られているものの、イノシシからどのようにして農場の豚にウイルスが持ち込まれているかという感染経路はいまだ解明されていない。一方で、PRRS ウイルスや豚サーコウイルスといった豚の病原体においてハエの伝播を指摘する報告があるほか、鶏においても野生のオオクロバエから高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出された報告もあり、ハエは伝染病の媒介者として注目されてきた。
今回、ハエによる豚熱ウイルス(CSFV)の伝播リスクを評価すべく、①野生のハエにおける CSFV保有状況調査、②ハエ体内における CSFV 保有期間調査、③農場におけるハエの分布調査を実施したところ、クロバエが豚熱の感染経路になりうる知見が得られたので、その概要を報告する。

3. 豚熱ウイルス E2 抗原によるブースター効果の検証

原田 ひかる(㈱微生物化学研究所)

豚熱対策の一つとして、母豚および子豚に対する生ワクチン接種が行われているが、豚熱ウイルスに対する免疫がない状態で生ワクチンを接種した第1世代の母豚と比較して、第 2 世代以降の母豚の抗体価は幅広く分布し、またその値が低い個体の割合が多いことが判明している。これにより子豚の移行抗体価にもばらつきが発生し、生ワクチン接種適期が揃わず、ウイルスに対して易感染となる期間が生じやすいことが考えられる。そこで、母豚の抗体分布のばらつきを解消し、生ワクチンの本来の効果を補助するために、豚熱生ワクチン接種済の豚に豚熱ウイルス国内流行株由来の E2 抗原を追加接種することによるブースター効果について検証した。

4. 豚熱発生農場の近隣農場における緊急対応と防疫指導の実例

石関 史哉(グローバルピッグファーム㈱)

2018 年 9 月、岐阜県で 26 年ぶりに豚熱が発生し、2023 年 8 月 30 日には九州で初めての発生が佐賀県で確認され、その翌日には続発が報告された。当時、九州は豚熱ワクチン未接種エリアであったため、すべての豚が感染リスクにさらされていた。また、野生イノシシへの感染がすでに拡大している可能性があり、農場でのさらなる豚熱続発が想定された。この状況を受け、弊社では防疫対策チームを立ち上げ、佐賀県にある弊社グループの複数の農場へ獣医師を派遣し、緊急対応を行った。今回は、防疫対策チームによる対応の詳細と、私が担当した農場での防疫指導の実例を紹介する。さらに、移動制限区域内の農場に対して実施した地域防疫勉強会の概要についても報告する。

5. HogStop の紹介と今後の日本での可能性

呉 克昌(㈱バリューファーム・コンサルティング)

HogStop はアメリカで開発され、2021 年 6 月からテキサス州などで販売されている家畜の飼料に一般的に含まれる原料を混合した野生豚の避妊用ベイト剤である。その有効成分は綿実油で、雄の野生豚の生殖能力を低下させる作用があるとされている。(一社)日本養豚開業獣医師協会(JASV)は本製品が国内の野生イノシシの個体数制御のツールとして利用可能性があると考え、その販売会社と守秘義務契約を結び、情報を収集し、国内の関係者に提供してきた。ここでは、本製品の概要を説明するとともに、国内での利用可能性を検討するための研究の必要性や今後の国内での可能性について検討する。

○ 一般口演
1. 新規豚丹毒生ワクチンと抗体検査法の開発について

西川 明芳(農研機構 動物衛生研究部門)

一般的に、細菌感染症に対する安全な生ワクチンの開発のためには、原因菌の病原遺伝子を同定しこれを除去するか、当該遺伝子に変異を導入することで弱毒化させる。しかし、病原遺伝子の同定には多大な労力を要する。我々は豚丹毒の原因菌である豚丹毒菌がゲノム収縮を起こしている点に着目し、ゲノム上に保存されているアミノ酸の合成遺伝子は本菌の生存や病原性に重要であるという仮説の基に実験を行った。その結果、短期間で病原遺伝子の同定とワクチン候補株の作製に成功した。本成果は、一部のアミノ酸合成遺伝子を欠く豚丹毒菌以外の細菌にも応用が期待できるのでその内容と、抗豚丹毒抗体検出 ELISA に使用する新規抗原の開発について紹介する。

2. 母豚の淘汰指標として直近 3 産の分娩データを用いた成績改善効果

辻 厚史(NOSAI 宮崎 生産獣医療センター)

養豚において生産性向上を図るためには、母豚群全体を繁殖性の高い群構成にすることが求められ、適切な母豚の淘汰更新は不可欠である。育種改良による多産系母豚の能力を生かすために、離乳頭数が多い母豚群に導く客観的な淘汰指標が必要である。本研究では母豚の淘汰基準として、哺育開始頭数と離乳頭数の 2 項目について、母豚ごとに直近 3 産の合計頭数を算出し、下位 10~20%となる頭数を淘汰基準とした。2 項目の数値のどちらかが基準に満たない母豚を優先的に淘汰更新したところ、1 年間で哺育開始頭数、離乳頭数ともに 0.4~0.9 頭向上した。直近 3 産の分娩データ 2 項目の合計を用いた淘汰基準は、簡便かつ確実に離乳頭数が向上する方法と考えられた。

3. IPVS2024 レポート

石井 宏治(㈲サミットベテリナリーサービス)

2024 年 6 月 4~7 日までの 4 日間、ドイツ・ライプツィヒのライプツィヒ会議センター(CongressCenter Leipzig)において、第 27 回世界養豚獣医学会(International Pig Veterinary Society :IPVS)と第 15 回 欧州養豚健康管理シンポジウム(European Symposium of Porcine HealthManagement:ESPHM)の合同集会が開催された。IPVS は、世界の養豚獣医師間の情交流を目的として、1967 年イギリスのケンブリッジで初めて開催され、ESPHM は、欧州の健康的で福祉的な養豚生産の発展および養豚従事者の能力向上を目的に活動している欧州養豚健康管理協会が 2009年から主催している。COVID-19 の影響で開催できなかった 2020 年を除いて、IPVS は 2 年ごと、ESPHM は毎年開催されており、両会が合同で開催されるのは今回が初めての試みであった。弊社か
らも 5 人の獣医師が参加し、新しい知見や疾病防御に対する意識の持ち方など、多くの成果を得たため、ここに概要を報告する。

【別紙】参加登録要領
■第 14 回合同集会 参加登録サイト
●会場参加・懇親会参加
登録期限:10 月 17 日(木)
https://forms.gle/FCvQ16XjZnbZ8WRQ8

●Web 参加
下記 URL よりご自身にてご登録をお願い申し上げます。
https://x.gd/hpx1J

■ご登録にあたっての注意事項
① 会場参加・懇親会参加の場合、「参加登録サイト」へのご登録完了後、事務局より数日
以内にご登録確認メールを送信いたします
② 懇親会参加ご希望の方は、①の登録確認メールに記載された口座へ、参加費(8,800 円
/1 名様)を期限内にお振込みください(※振込手数料はご負担ください)
やむを得ずキャンセルの場合も返金はいたしかねます
振込期限:10 月 24 日(木)
なお、「参加登録サイト」より領収書ご希望の旨ご登録いただいた方は、当日、会場に
てお渡しいたします
懇親会会場 つくば国際会議場 大会議室 101
茨城県つくば市竹園 2-20-3
③ Web 参加の場合、登録終了後ご指定のメールアドレスに自動送信される、登録完了メ
ールをご確認ください。届かない場合は、JASV 事務局までお問い合わせください。開
催前日、当日開始1時間前にリマインドメールが届きます。
④ 複数名でお申込みの際も、おひとりずつご登録が必要です
■お問い合わせ先
【第 14 回合同集会について】
一般社団法人日本養豚開業獣医師協会(JASV) 事務局
メールアドレス:pig.jasv@r7.dion.ne.jp
電話:029-875-9090
【日本豚病研究会入会について】
日本豚病研究会 事務局
(国研)農研機構 動物衛生研究部門内 日本豚病研究会 事務局
メールアドレス:tonbyou@ml.affrc.go.jp

国際シンポジウム「アフリカ豚熱の最前線」開催をお知らせします

令和6年10月17日と18日に農研機構が主催する国際シンポジウム「アフリカ豚熱の最前線」がつくば国際会議場にて開催されます。

詳細は農研機構のウェブサイトに掲載されておりますので、ご確認ください。

国際シンポジウム ーアフリカ豚熱研究の最前線ーThe Cutting Edge of African Swine Fever Research Symposium(2024年10月開催)
https://www.naro.go.jp/event/list/2024/09/165707.html

参加を希望される方は上記の農研機構ウェブサイトの6.参加申し込みの「参加登録フォーム」からご登録ください。

参加登録の受付期間は 「9/13(金)9:00 ~ 10/7(月)12:00」、定員は「各日150名」となっておりますので、参加をご希望の方は早めのご登録をお願いいたします。

日本豚病研究会 第104回研究集会開催のご案内(終了しました)

 ⽇本豚病研究会事務局(農研機構動物衛⽣研究部⾨内)
Tel/Fax: 029-838-7745
e-mail: tonbyou@ml.affrc.go.jp

⽇本豚病研究会は、令和6 年度定期総会および第104 回研究集会春の研究集会を下記要で開催しますのでご案内致します。

⽇ 時:令和6年5⽉17⽇(⾦)13:00〜17:00
場 所: ⽂部科学省研究交流センター
〒305-0032 茨城県つくば市⽵園2-20-5
駐⾞場は敷地内北側にあります。
参加費: 会員無料、⾮会員は1,500円



⽇ 程

1  開 会 令和6年度定期総会(13:00〜13:30)

2  第25回⽇本豚病研究会藤﨑優次郎賞受賞記念講演(13:30〜14:10)

座⻑:⽮原 芳博[⽇本養豚事業協同組合]

 養豚管理獣医師としての地域防疫構築への取組

                       志賀 明 (シガスワインクリニック)

[休 憩 14:10〜14:20]

3  ⼀般⼝演(14:20〜14:45)

座⻑:⾼⽊ 道浩 [農研機構 動物衛⽣研究部⾨]

 ウイルス含有エアロゾルの液相捕集によるPRRSV とPCV2 の流⾏動態評価

安浦 雅⼈ (産業技術総合研究所 エレクトロニクス・製造領域)

[休 憩 14:45〜14:50]

4  特別講演 アフリカ豚熱の研究と対策(14:50〜16:50)

座⻑:⾇甚 賢太郎 [農研機構 動物衛⽣研究部⾨]

 4.1 アフリカ豚熱ワクチンの開発研究について

北村 知也(農研機構 動物衛⽣研究部⾨ 越境性感染症研究領域)

 4.2  海外ASF ワクチン事情

國保 健浩(農研機構 動物衛⽣研究部⾨ 越境性感染症研究領域)

座⻑:深井 克彦 [農研機構 動物衛⽣研究部⾨]

 4.3  欧州におけるASF 対策について

⼤快 峻輝(農林⽔産省 消費・安全局 動物衛⽣課)

 4.4 アフターコロナにおける⽔際検疫の実態

栗栖 輝光(農林⽔産省 動物検疫所 検疫部管理指導課)

5  閉 会(16:50〜17:00)

【研究集会終了後、懇親会を予定しております】

時 間: 令和6年5⽉17⽇(⾦)18:00~20:00
場 所: 三浦飲⾷堂
〒305-0031 茨城県つくば市吾妻1丁⽬5
会費:7,000円
参加登録:5⽉13⽇(月)までに下記にてお申し込みください。(先着60名)

お名前及びご所属をtonbyouken@gmail.comに送信

講演要旨

● 第25回⽇本豚病研究会 藤﨑優次郞賞 受賞記念講演

養豚管理獣医師としての地域防疫構築への取組

志賀 明(シガスワインクリニック)

筆者の養豚管理獣医師として活動は45年余の歳⽉が経過した。この間、豚⾚痢や豚流⾏性下痢、オーエスキー病など種々の伝染病に悩まされてきたが、これまでの養豚管理獣医師⽣活の中で⼀番⼤きな出来事は2010年の⼝蹄疫発⽣である。筆者の主要活動地域である宮崎県児湯地域での発⽣で、その地域にある全顧客農場が感染後またはワクチン接種後に殺処分された。今回は⼝蹄疫発⽣後の約2か⽉間、多くの仲間の⺠間獣医師とともに殺処分などの防疫措置に加わった経緯やその中で⽬の当たりにした状況や諸問題、また終息後の発⽣地域での復興への道筋や地域の⽣産者、関係獣医師、⾏政などとの地域ぐるみの防疫体制構築の推進などについて報告する。

● ⼀般⼝演
ウイルス含有エアロゾルの液相捕集によるPRRSV とPCV2 の流⾏動態評価

安浦 雅⼈(産業技術総合研究所 エレクトロニクス・製造領域)

ウイルス感染症の流⾏動態の把握は切実な問題であるが、集団から⼀部個体を抜き取って検査する場合、確率的な⾒逃しは避けられない。そこで本研究では、サイクロン式捕集器によるバイオエアロゾルの液相捕集法を⽤いて、豚舎内に漂うウイルス含有エアロゾルを捕集・検出し、流⾏動態評価への適⽤を試みた。PRRSV感染が確認された農場で5つの豚群を対象に5か⽉間の追跡調査を⾏い、PCRによるPRRSVとPCV2のウイルス核酸検出の陽性率を、抜き取り検査での⾎中ウイルス陽性率と⽐較した。その結果、共通の傾向が確認され、我々が提案する流⾏動態評価法が、抜き取り検査と同等(またはそれ以上)に有効であることを確認できた。

● 特別講演
アフリカ豚熱研究について

北村 知也(農研機構 動物衛⽣研究部⾨ 越境性感染症研究領域)

アフリカ豚熱(ASF)はアフリカ豚熱ウイルス(ASFV)を原因とする豚やイノシシの熱性感染症である。近年、ASFVは⽇本、台湾およびスリランカを除くすべてのアジア諸国に浸淫している。本年には、我が国にもっとも隣接する韓国・釜⼭の野⽣イノシシにおいてASF発⽣の続発が認められるなど我が国へのASF侵⼊リスクは増加の⼀途を辿っており、その防疫対策は喫緊の課題となっている。⽬下に迫るASFに対抗すべく、我々はASFワクチンの開発を進めている。本発表では、我々のASFワクチンの開発研究の取り組みを海外のASFワクチン開発の現状と課題を交えながら紹介する。

海外ASF ワクチン事情

國保 健浩(農研機構 動物衛⽣研究部⾨ 越境性感染症研究領域)

アフリカ豚熱(ASF)はASFウイルス(ASFV)によるイノシシ科動物の熱性感染症である。
Sus属の所謂豚やいのししが罹患すると激しい症状を呈して短期間に致死的な転帰をとることから、養豚業界では最⼤の脅威と⾒做されている。研究者の⻑年の努⼒にも拘わらず、本病に有効なワクチンはこれまで実⽤に⾄っていないが、近年のASFの⼤規模な流⾏に推され現在世界では苛烈な開発競争が繰り広げられており、その中から⽶国農務省が開発した2種のワクチンがベトナム国で野外利⽤を許可されたことは記憶に新しい。本講演ではこれら“第⼀世代”のワクチン製品を中⼼に、世界でのASFワクチンの開発状況を概観するとともに、実⽤・普及に向けた課題について議論したい。

欧州におけるASF 対策について

⼤快 峻輝(農林⽔産省 消費・安全局 動物衛⽣課)

欧州では、アフリカ豚熱(ASF)が2007 年にジョージアに侵⼊して以降、現在までに27 の国と地域に拡⼤している。ASF の侵⼊・拡⼤を受け、欧州各国はそれぞれリスク管理措置を講じており、これらの経験は未発⽣国である⽇本にとっても参考となるものと考えられる。本題では、EU におけるASF 対策について、EU 全体の枠組みに加え、野⽣イノシシの管理が効果的に講じられているものと考えられるハンガリーや清浄化を達成したベルギーを始めとするいくつかのEU加盟国がそれぞれ独⾃に講じている措置についても紹介する。

アフターコロナにおける⽔際検疫の実態

栗栖 輝光(農林⽔産省 動物検疫所 検疫部管理指導課)

新型コロナウイルス感染症が5類に移⾏し、国境を越えたビジネス活動や観光が活発化しており、訪⽇外客数はコロナ前の対2019年⽐で約8割まで回復し、⼀部の国からの訪⽇客はコロナ前を⼤きく上回ってきている。このような海外からの旅客の増加、また、アジア地域、特に韓国釜⼭広域市で野⽣いのししにおけるアフリカ豚熱の発⽣等を受け、動物検疫所では増頭した検疫探知⽝の有効活⽤や違反者への厳格な対応の他、航空会社の協⼒による機内アナウンスの実施やSNS等のインターネットメディアを通じた広報・注意喚起など、⽇本に違法な畜産物を持ってこさせない取り組みを加えた⽔際対応の強化を⾏っている。今回は、アフターコロナにおけるこれら⽔際の最前線である空海港にスポットを当てつつ検疫の実態について紹介する。

動物⽤ワクチン-バイオ医薬品研究会 2024 年度シンポジウムをお知らせします

動物⽤ワクチン-バイオ医薬品研究会 2024 年度シンポジウムのご案内
「動物⽤ワクチン新技術の展開と応⽤〜イノベーション研究の最前線〜」

⽇時:2024 年 5 ⽉ 16 ⽇ 13:00〜17:00
開催⽅法:対⾯形式(基調講演1はアメリカより on-line 講演)
対⾯開催会場:エッサム本社ビル 3 階グリーンホール
東京都千代⽥区神⽥須⽥町1-26-3 TEL 03-3254-8787

内容:
13:00〜14:00 基調講演 1
14:00〜15:00 基調講演 2
15:30〜17:00 ⼀般演題⼝演会

基調講演 1:Next Generation saRNA vaccines for rapid response to infectious disease outbreaks

Joel Harris 先⽣(Co-founder and CEO, Genvax Technologies, USA)

基調講演 2:蛋⽩質の⽴体構造を利⽤したワクチンデザインの可能性〜Alphafold2 の利⽤を中⼼に〜

前⽥ 美紀先⽣(農研機構・遺伝資源研究センター)

⼀般演題 1:⿂類免疫学と⽔産⽤ワクチン〜ユニークな免疫機構を利⽤した新たなワクチン開発への挑戦〜

加藤 豪司先⽣(東京海洋⼤学)

⼀般演題 2:パピローマウイルス様粒⼦の家畜⽤ワクチンへの応⽤

渡邉 聡⼦先⽣(農研機構・動物衛⽣研究部⾨)

⼀般演題 3:豚熱ウイルス E2 抗原によるブースター効果の検証

原⽥ ひかる先⽣(株式会社 微⽣物化学研究所)

参加費:正会員、学⽣会員及び賛助会員は無料(年会費:正会員 1,500 円、学⽣会員 1,000 円)
⾮会員は 1,500 円(学⽣⾮会員は 1,000 円)
参加申込:Google Forms より参加申込(詳細はホームページをご参照ください)
参加申込の締切:2024 年 5 ⽉ 2 ⽇(会場定員に達し次第早期の締切あり)
お問合せ:動物⽤ワクチン-バイオ医薬品研究会(jimukyoku@jsavbr.jp)

・当⽇は、同会場で 11 時から 12 時 00 分の予定で動物⽤ワクチン-バイオ医薬品研究会の定時総会
を開催いたしますので、会員の⽅はご出席ください。
・また、シンポジウム終了後に情報交換会(有料)を予定しています。
・更新情報のご案内については随時ホームページをご確認ください。

第103回日本豚病研究会・2023年度日本豚病臨床研究会 令和5年度日本養豚開業獣医師協会 第13回合同集会のお知らせ(終了しました)

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会は、第13回合同集会を下記の通り開催いたします。なお、ご参加にあたっては最終ページの「【別紙】参加登録要領」をご確認のうえ、2023年10月5日(木)までに事前登録をお願いいたします。

日時: 2023年10月13日(金) 10:00~17:00
9:30より受付

場所: つくば国際会議場 中ホール300
茨城県つくば市竹園2-20-3

開催形式: 集合形式およびオンラインウェビナー形式

参加資格: いずれかの団体の会員であること(賛助会員を含む)
但し、非会員の方は、日本豚病研究会の会員へご登録いただくことにより参加可能です。詳細は「参加登録サイト」にてご確認ください。

定員: 現地参加 300名(先着順)
オンライン参加 定員なし

参 加 費: 集会 無料
懇親会 8,000円(希望者)

締切: 2023年10月5日(木)

*新型コロナウイルス感染症の発生状況により、オンライン開催のみへ
変更する場合があります

以上

 

 

日 程

開 会    (10:00~10:05)

〇 統一テーマ「豚熱」   (10:05~15:10)

 座長:舛甚 賢太郎(農研機構 動物衛生研究部門)

1. 現在の流行豚熱ウイルスの感染・発症防御に必要な移行抗体価の検証
農研機構 動物衛生研究部門 深井 克彦[豚病研]
(10:05~10:45)

2. 野生イノシシにおける豚熱・アフリカ豚熱対策の現状と課題
農林水産省 消費・安全局 動物衛生課 永田 知史[豚病研]
(10:45~11:25)

座長:伊藤 貢(㈲あかばね動物クリニック)

3. CSFワクチン接種後の免疫の推移とPRRS感染による免疫付与抑制について
香川家畜診療所 香川 光生[JASV]
(11:25~12:05)

[昼休み(各自昼食をお取りください)12:05~13:30]

座長:伊藤 貢(㈲あかばね動物クリニック)

4. 豚熱(CSF)生マーカーワクチンを使用している韓国の状況について
Jeong Hyunkyu(Dodram養豚農協)[豚臨研]
(13:30~14:10)

座長:芝原 友幸(農研機構 動物衛生研究部門)

伊藤 貢(㈲あかばね動物クリニック)

5.総合討論 (14:10~15:10)

[休憩 15:10~15:25]

〇 一般口演 (15:25~16:55)

座長:下地 善弘(農研機構 動物衛生研究部門)

1. 獣医学教育改革と獣医師の将来 (15:25~15:55)
NPO法人 獣医学教育支援機構 高井 伸二[豚病研]

座長:石井 宏治(㈲サミットベテリナリーサービス)

2. 投薬指示による抗菌剤使用と慢性疾病へのアプローチ (15:55~16:25)
宮崎県農業共済組合 遠矢 良平[豚臨研]

3. APVS2023レポート (16:25~16:55)
㈱スワイン・エクステンション&コンサルティング 大竹 聡[JASV]

閉 会 (16:55~17:00)

講演要旨

○ 統一テーマ「豚熱」
1. 現在の流行豚熱ウイルスの感染・発症防御に必要な移行抗体価の検証
深井 克彦(農研機構 動物衛生研究部門)

2018年9月にわが国で26年ぶりに発生した豚熱に対する防疫対策の一環として、2019年10月から飼養豚へGPE-生ワクチンが接種されている。当該ワクチンは、子豚の移行抗体価が高い時期に接種すると、ワクチンブレイクが起こる。一方、移行抗体価が十分に下がった時期にワクチンを接種した場合、ワクチン効果が発揮されるまでの期間、子豚は野外ウイルスの感染リスクに曝される。そのため、移行抗体がワクチン効果を阻害せず、かつ子豚が野外ウイルスの感染リスクから守られることが期待出来る時期にワクチンを接種することが望ましい。そこで今回、様々な移行抗体価を保有した子豚を用いて、現在の流行豚熱ウイルスの感染・発症防御に必要な移行抗体価を検証したので、その概要を報告する。なお、本検証の概要は、本年6月30日にウェブ会議にて報告したが、その後さらに検証を進めたので、今回は新たに得られた検証成績を中心に報告する。

2. 野生イノシシにおける豚熱・アフリカ豚熱対策の現状と課題
永田 知史(農林水産省 消費・安全局 動物衛生課)

平成30年9月、我が国で26年ぶりに豚熱が飼養豚で発生し、野生イノシシでも感染が確認された。その後、野生イノシシで感染が拡大し、これは飼養豚での発生リスクと大きく関連しているとされる。このため、野生イノシシ対策が極めて重要となっている。また、我が国への侵入リスクが極めて高まっているアフリカ豚熱は、水際対策の強化とともに、国内侵入に備えた対策が求められている。
本講演では、野生イノシシ対策として、①サーベイランス、②捕獲強化、③豚熱経口ワクチンの散布及び④関係者・市民への周知を主とするリスクコミュニケーションの推進、さらに現在進めている⑤アフリカ豚熱の防疫対策の具体化について、現状と課題を述べる。

3. CSFワクチン接種後の免疫の推移とPRRS感染による免疫付与抑制について
香川 光生(香川家畜診療所)

2019年にCSFワクチン接種がスタートして、現在に至るまで接種が継続されているが、初回接種においては全く免疫を持っていない真っ白な豚にワクチンを接種しているため、接種後の抗体陽性率は100%に近い状態に転じた。その後、ワクチン接種した母豚から子豚が生まれ、移行抗体を享受された子豚にワクチンを接種していったが、接種時の移行抗体量に応じて、免疫付与状況にばらつきが目立つようになった。そのため子豚への適正なワクチン接種時期を把握するために、群馬県及び埼玉県の13養豚農場を対象に、同じ個体を継続的にモニタリングし、ワクチン接種後の抗体推移調査を実施した。
その中でワクチン接種はしっかり実施しているにも関わらず、ワクチン抗体上昇が極めて悪い農場があった。抗体上昇の悪かった農場では豚繁殖呼吸障害症候群(PRRS)の感染も認められたことから、PRRSの感染状況がワクチン接種後の免疫付与にどのように作用するか、各農場を比較することで考察することにした。

4. 豚熱(CSF)生マーカーワクチンを使用している韓国の状況について
Jeong Hyunkyu(Dodrum養豚農協)

韓国では、従来CSFウイルスLOM株を用いた弱毒生ワクチンが使用されてきたが、2010年から韓国国内でマーカーワクチンの研究開発を進め、実用化に至っている。2020年からは、このCSF生マーカーワクチンが国内で販売開始され、豚への接種が始まった。また野生イノシシでのCSF感染拡大を防ぐ目的で、イノシシ用のCSF経口生マーカーワクチンも開発され、やはり2020年から使用が始まっている。世界に先駆けてCSF生マーカーワクチンを使用している韓国において、直近のCSFの感染状況やマーカーワクチンの効果等について報告する。
○ 一般口演

1. 獣医学教育改革と獣医師の将来
高井 伸二(NPO法人 獣医学教育支援機構)

「国際水準の獣医学教育の提供」と「高度な実践力を備えた獣医師の養成」を目標として纏めた文部科学省「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」報告書(平成23年)には、具体的な5つの改革の方針、①教育研究体制整備、②モデルコアカリキュラム、③分野別第三者評価、④共用試験と参加型臨床実習、⑤附属家畜病院の改善が期限付きで提示された。その後10年間で共同教育課程・共同学部の設置、モデルコアカリキュラム・共通テキスト、共用試験と参加型実習等が具現化されている。教育改革と獣医師の需給を振り返り、我が国の人口縮小社会における獣医師の将来について考察したい。

2. 投薬指示による抗菌剤使用と慢性疾病へのアプローチ
遠矢 良平(宮崎県農業共済組合)

日本の養豚分野は抗菌剤使用の割合が高い。ワンヘルスの視点を持ち薬剤耐性問題を考慮した獣医療が求められている。宮崎県の臨床現場で実施している「投薬指示による経口投与」は9割を占めるが、これを整理すると、まずは獣医師が「群治療(Metaphylaxis)」と「予防(Prophylaxis)」を区別することが重要かもしれない。その上で、生産者の投薬アドヒアランスを下げる可能性がある「慢性疾病」の発症要因を生産者と協議し、投薬の継続性について検討した。結果として一貫経営8農場で抗菌剤使用が減少し、生産性も向上した。今回は母豚規模300頭以下での検証であり、今後は従業員の多い大規模農場での対応が課題となる。

3. APVS2023レポート
大竹 聡(㈱スワイン・エクステンション&コンサルティング)

7月30日~8月2日の5日間にわたり、第10回アジア養豚獣医学会(APVS2023)が台湾・台北市にて開催された。台湾での開催は当初2021年に予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延を受け一旦延期が決定され、今年2023年開催に延期されていた。今回はアジアを中心とした37の国と地域から1,173名が参加し、アジア各国における養豚疾病、最新の飼養管理システムなどに関する知見を共有し、活発な議論が行われた。本口演ではその概要を報告する。

 

【別紙】参加登録要領

第13回合同集会 参加登録サイト  https://questant.jp/q/20231013
登録期限:10月5日(木)

■ご登録にあたっての注意事項
① 「参加登録サイト」へのご登録完了後、「【自動配信】三団体合同集会「参加ご登録控え」および「懇親会参加費振込先ご案内」」が順次送信されます

② 懇親会参加ご希望の方は、①の自動配信メールへ記載された口座へ、参加費(8,000円/1名様)を期限内にお振込みください(※振込手数料はご負担ください)
やむを得ずキャンセルの場合も返金はいたしかねます
振込期限:10月6日(金)

なお、「参加登録サイト」より領収書ご希望の旨ご登録いただいた方は、当日、会場にてお渡しいたします

懇親会会場 ホテル日航つくば 昴東中の間(18時より)
つくば市吾妻1-1364-1
https://www.nikko-tsukuba.com/access/

③ ウェビナーのURLは10月10日(火)頃ご案内予定です

④ 複数名でお申込みの際も、おひとりずつご登録が必要です

■お問い合わせ先
【第13回合同集会について】
日本豚病臨床研究会 事務局
明治アニマルヘルス(株)内 ※必ず2名とも宛先へお含みください
永末 nagasue-ma@vet.meiji.com
高宮 takamiya-ru@vet.meiji.com

【日本豚病研究会入会について】
日本豚病研究会 事務局
(国研)農研機構 動物衛生研究部門内 日本豚病研究会事務局
tonbyou@ml.affrc.go.jp

第 62 回獣医疫学会学術集会(オンラインシンポジウム)をお知らせします

シンポジウム:動物感染症に関するワクチンの話題
・日時:
2023 9 16 日(土) 14001700
・開催方法:オンライン開催(
Webex 使用)
・事前登録制(下記参照)

・参加費:獣医疫学会会員は無料、非会員は
1,000


・プログラム

1.鳥インフルエンザへのワクチン適用に関する世界の対応

磯田典和先生(北海道大学大学院獣医学研究院)

2.ベトナムにおけるアフリカ豚熱の現状とワクチン接種政策の効果

Drs Lam Thanh Nguyen and Kien Trung Le
(カントー大学(ベトナム)
※逐次通訳つきです

3.
FMD のワクチンと DIVA
森岡一樹先生(農研機構動物衛生研究部門)

4.総合討論


・ご参加申込み(非会員にあっては申込・参加費振込)の締切:
2023 8 31 日(木)
獣医疫学会ホームページの専用フォームよりお申込みください。

・集会のリンクは、お申込み(会員)、お申込み・お振込み(非会員)を完了した方に
9/14
(木)目途にお送りいたします。

・更新情報は随時ホームページにてご案内してまいります。

・お問合せ:獣医疫学会事務局(
jsve-soc@umin.ac.jp

日本豚病研究会 第102回研究集会開催のご案内(令和5年5月18日)

日本豚病研究会事務局(動物衛生研究部門内)
Tel/Fax: 029-838-7745
e-mail: tonbyou@ml.affrc.go.jp

日本豚病研究会は令和5年度定期総会と第102回研究集会を下記要領で開催しますのでご案内致します。

日 時  : 令和 5年 5月18日(木)*  13:00~17:00 *2023年4月11日修正

場 所  :文部科学省研究交流センター(〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-5)

開催方法 :現地対面開催

参加方法 :登録不要、当日受付のみ

参加費     :会員は無料、非会員は1500円

 



日程

1.定期総会    (13:00~13:30)

2.第102回研究集会

〇 第24回日本豚病研究会藤﨑優次郎賞 受賞記念講演 (13:30~14:10)

                座長:細川 みえ[山形県最上家畜保健衛生所]

豚の常在型損耗性疾病の診断法の確立と普及
川嶌 健司、勝田 賢 (農研機構 動物衛生研究部門)
恒光 裕(Farm Animal Health Support)

[休 憩 14:10~14:20]

〇 一般口演 (14:20~15:20)

座長:宮澤 光太郎[農研機構 動物衛生研究部門]

日本で独自に進化したブタインフルエンザウイルスの現状
峯 淳貴 (農研機構 動物衛生研究部門)

座長:森元 美紗子[日生研株式会社]

豚丹毒に関する近年の知見
下地 善弘(農研機構 動物衛生研究部門)

[休 憩 15:20~15:30]

〇 第100回研究集会記念講演  (15:30~16:50)

座長 勝田 賢 [農研機構 動物衛生研究部門]

家畜防疫史、行政から見た豚病の課題とこれからの対策
小倉 弘明((一社)全国肉用牛振興基金協会専務理事)

日本豚病研究会の歩みと話題となった豚病
津田 知幸 (日本豚病研究会 会長)

〇 閉 会(16:50~17:00)


講演要旨

〇 第24回日本豚病研究会 藤﨑優次郎賞 受賞記念講演

豚の常在型損耗性疾病の診断法の確立と普及
川嶌 健司、勝田 賢 (農研機構 動物衛生研究部門)
恒光 裕(Farm Animal Health Support)

受賞者となるお三方は、家畜衛生試験場七戸研究施設において、東北各県の家畜保健衛生所職員と共同して豚の常在型損耗性疾病、特に、豚の新興感染症として当時世界各地で甚大な被害をもたらした豚サーコウイルス2型(PCV2)感染が関与する豚離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)について、検査方法の確立と動物試験による病態解明に取り組まれました。確立した検査法を基に農水省の事業による全国規模の調査を実施し、個体診断ならびに農場診断のガイドラインを加味したPMWSの診断基準の構築と普及に取り組まれました。確立した検査法や診断基準は家畜保健衛生所における常在型損耗性疾病の対策や民間企業でのPCV2ワクチンの開発に活用され、国内養豚産業の生産性向上に大きく貢献されました。お三方の研究活動を通じた我が国の豚病対策における功績は極めて大きいことから、第24回藤﨑優次郎賞を授賞されました。本講演ではこれらの取組みについてご紹介いただきます。

 〇 一般口演

日本で独自に進化したブタインフルエンザウイルスの現状
峯 淳貴(農研機構 動物衛生研究部門)

ブタインフルエンザはブタの急性呼吸器感染症で、感染したブタでは発熱、せき、くしゃみ、食欲不振などヒトのインフルエンザに似た症状を示し、多くの場合一週間程度で回復する。致死性は低いものの増体率の減少などによる経済的損失を招き、さらに他の呼吸器感染症との重複感染により症状を重篤化させる。我々のグループでは、2015年以降日本でブタインフルエンザサーベイランスによるウイルスの収集を行っており、500株を超えるIAV-Sについて遺伝子を解読している。本発表では、分離されたウイルスについて系統学的な解析を行った結果を示し、日本での現状と今後の展望について情報を共有したい。

 豚丹毒に関する近年の知見
下地 善弘(農研機構・動物衛生研究部門)

 豚丹毒の原因菌である豚丹毒菌 Erysipelothrix rhusiopathiae はグラム陽性の桿菌でFirmicutes門(ゲノムDNAのGC含量が低いグラム陽性細菌の総称)に属する。この門には、クロストリジウム属菌、連鎖球菌、ブドウ球菌などの病原細菌のほか、ラクトバチルス、ラクトコッカスなどの有用細菌が含まれるが、豚丹毒菌はこれらの菌と異なった以下のような特徴を有する。
1)  他のFirmicutes門菌と系統学的に離れた位置にあり、マイコプラズマに近縁である
2)  マイコプラズマと同様に、進化の過程でゲノムサイズが収縮しており、その結果、脂肪酸、ビタミン類、補酵素、アミノ酸等、必須栄養素の合成に関わる遺伝子群が欠失している。
3)  限られたサイズのゲノム上に抗酸化酵素、フォスフォリパーゼ酵素等の食細胞内に寄生する上で有利な酵素遺伝子を極めて多く保有している。
上に示したゲノム情報から、豚丹毒菌は自然界では自律的増殖ができず、増殖に必要な栄養素は寄生する動物に依存すること、また、細胞内寄生菌として食細胞内環境に適応するために進化をしてきたことがわかる。このことは、本菌の病原性と本症の疫学を理解する上で重要である。
豚丹毒菌は宿主域が広く、様々な哺乳類や鳥類から分離される。国内では、野生イノシシのほとんどは本菌に対する抗体を保有している。これまで、豚丹毒を起こすErysipelothrix 属菌種としてE. rhusiopathiae が重要であり、豚の扁桃から高頻度で分離される E. tonsillarum は、実験的には豚をはじめ鶏に病原性を示さないと報告されている。しかし、新しく報告された新菌種については、これまでに我々が得ている成績と近年の国内外での分離状況から、少なくとも3菌種が豚に病原性を示すことが明らかになっている。
本発表では,これらのErysipelothrix 属新菌種について、自然界における分布状況、従来の血清型との関連やワクチン抗原として重要なSpaA蛋白の遺伝子保有状況など、また、豚丹毒菌の細胞内寄生戦略について概説する。

〇 第100回日本豚病研究会研究集会記念講演
-養豚における疾病、防疫、研究の歴史を振り返る―

家畜防疫史、行政から見た豚病の課題とこれからの対策
小倉 弘明((一社)全国肉用牛振興基金協会専務理事)

昭和の終わりから現在まで、オーエスキー病、PRRS、PED、PMWS、そして口蹄疫が国内に侵入、発生し、豚熱も再発した。豚病以外では国民食生活にも影響を与えたBSEや高病原性鳥インフルエンザが発生し、海外ではアフリカ豚熱の発生も拡大している。飼養規模も大型化、人、物、情報の動きもスピードを増して周辺事情は大きく変化しているが、今後の対策の検討の基盤として、各種疾病の侵入、発生、初動の要因、背景を、かつての豚コレラ撲滅対策で成功の条件といわれた、①生産者の組織化・合意作り、②国・地域・生産者段階でのバイオセキュリティ、③届出・診断・防疫体制、④これを担保する支援策といった視点も踏まえて振り返る。

日本豚病研究会の歩みと話題となった豚病
津田知幸(日本豚病研究会 会長 )

日本豚病研究会は昨年に記念すべき第100回研究集会を迎えましたが、COVID-19によって大人数の集会は制限され、研究集会は中止かリモート開催を余儀なくされたため、通常の研究集会として開催されたところです。この度、こうした制限が撤廃されたことから、第102回集会に合わせて改めて100回記念を対面で実施することになりました。そこで、記念講演として豚病研究会のこれまでの歩みと研究集会で話題となった豚病についてお話ししたいと思います。
豚病研究会は農水省家畜衛生試験場(家衛試)で発足した豚病問題懇談会を前身として、家衛試のつくば移転を契機に1982年に研究会として発足しました。初代会長の藤﨑優次郎先生はこの新しい研究会を、既存の会とは異なり、学際的な観点から疾病をとらえることをモットーされてきました。学際的あるいは様々な観点から疾病をとらえることは、常に変化する産業構造の中で疾病対策を進めるうえで欠かせないものです。その観点から、これまでわが国で問題となった豚病についても紹介します。


第101回日本豚病研究会研究集会・2022年度日本豚病臨床研究会・令和4年度日本養豚開業獣医師協会 第12回合同集会(終了しました)

 

事務局:日本豚病研究会
E-mail: tonbyou@ml.affrc.go.jp

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会は、第12回合同集会を下記の通り開催いたします。なお、参加にあたっては2022年10月14日金曜日10月20日正午までに事前登録をお願いいたします。

 

日  時: 2022年10月21日(金) 10:00~17:00

場  所: つくば国際会議場Leo Esakiメインホール(茨城県つくば市竹園2-20-3)

開催形式: 集合形式およびオンラインウェビナー形式

定  員: 現地参加の定員は225名(先着順)、オンライン参加は定員なし

参 加 費: 無料

事前参加登録:2022年10月14日(金)締切。10月20日正午まで延長!

ご登録はこちらから⇒https://forms.gle/Q4ziQ4f4pjS5ngP56

*10月19日17時までにご登録いただいた方には参加方法を連絡いたしました。
 連絡がない方はmiyaan@affrc.go.jpまでご連絡ください。

 * 新型コロナウイルス感染症発生状況により、現地参加からオンライン参加に変更をお願いする可能性がありますことをご了承ください。

* 新型コロナウイルス感染症にかかる茨城県イベント開催時感染防止策チェックリストはこちらからご確認ください。⇒■

 

 


 

日 程

開 会 (10:00~10:05)

〇 統一テーマ1「豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)」(10:00~10:05)
                                                                        座長:矢原 芳博(日清丸紅飼料株式会社)

1. 国内における豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の発生状況と流行株の遺伝型について(10:05~10:35)
農研機構 動物衛生研究部門 髙木 道浩 [豚病研]

2. 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の海外最新知見(10:35~11:05)
株式会社スワイン・エクステンション&コンサルティング 大竹 聡 [JASV]

3. 養豚獣医師への継続したPRRSアンケート調査(11:05~11:35)
有限会社あかばね動物クリニック 水上 佳大 [豚臨研]

統一テーマ1 総合討論(11:35~11:50)

[昼休み 11:50~13:30]


〇 統一テーマ2「豚熱」(13:30~16:00)
                                                      座長:深井 克彦 (農研機構 動物衛生研究部門)

1. 豚熱対策の昔と今(13:30~14:00)
明治アニマルヘルス株式会社 津田 知幸 [豚病研]

2. 岐阜県における豚熱ワクチン免疫状況の解析と現状(14:00~14:30)
岐阜県中央家畜保健衛生所 桑田 桂輔、他 [豚病研]

3. 一臨床獣医師が見た豚熱(14:30~15:00)
有限会社サミットベテリナリーサービス 石川 弘道 [JASV]

4. 豚熱の侵入要因と防疫に関する考察(15:00~15:30)
イデアス・スワインクリニック 早川 結子 [豚臨研]

統一テーマ2 総合討論(15:30~16:00)

[休憩 16:00~16:10]


〇 一般口演 (16:10~16:50)
                                                    座長:武田 浩輝(㈲アークベテリナリーサービス)

1. 初産豚における貧血と繁殖成績との関連(16:10~16:30)
株式会社 ピグレッツ 渡辺 一夫 [豚臨研]

2. 豚のふん尿で汚れた作業着の清浄化に関する研究(16:30~16:50)
アニマル・バイオセキュリティ・コンサルティング株式会社 三宅 眞佐男 [JASV]

 

閉 会 (16:50~17:00)

 


講演要旨

 

〇 統一テーマ1「豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)」

1. 国内における豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の発生状況と流行株の遺伝型について
    髙木 道浩(農研機構 動物衛生研究部門)

 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は我が国を含めた世界の養豚産業において経済損害を与える疾病としてあげられる。国内では1980年代後半から問題となり、30年以上が経過しているが、ワクチン接種や飼養衛生管理基準などにより病態や被害が軽減はしているものの、流行ウイルスの遺伝的多様性が認められ、時として甚大な被害をもたらしている。国内の流行ウイルスは5つのクラスターに分けることができるが、2008年に初めてクラスターIVに属するウイルスが分離されて以降、このクラスターに属するウイルス株が増えてきている。今回、これまでに得られているクラスターIVに属するPRRSウイルスの解析を中心とした結果を紹介する。

2. 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の海外最新知見
  大竹 聡(株式会社スワイン・エクステンション&コンサルティング)

 豚繁殖呼吸障害症候群(PRRS)は、世界の主要な養豚生産国(特にアメリカ)や我が国日本において、経済損失の非常に大きい疾病であることが知られている。特に昨今のアメリカではPRRS強毒株(1-8-4株,1-7-4株, 1-4-4株)が流行・台頭しており、我が国においてもここ最近、同クラスター(IV)に属する類似株によっての被害が確認されている。豚熱(CSF)ウイルスもPRRSウイルスも同じく宿主の免疫系を錯乱させることから、CSF対策におけるPRRS対策の位置付けは非常に重要であると筆者は考える。そのような背景のもと、国内外のPRRS最新知見、特に強毒株とバイオセキュリティについて、今回報告する。

3. 養豚獣医師への継続したPRRSアンケート調査
    水上 佳大(有限会社あかばね動物クリニック)

 PRRSは日本国内の多くの養豚場で生産成績に影響を与えている。現在までに様々なPRRS対策の方法は提案されているものの、その効果は農場によって異なる。養豚場ごとに規模や施設、ピッグフローなどが異なることが影響していることが考えられる。管理獣医師としては、幅広い農場に対して効果的なPRRS対策を突き止めたいと考えている。
豚病臨床研究会ではPRRSについて数年にわたり様々な情報を収集しており、直近ではPRRS対策のうち効果の高い対策を抽出するために、①清浄化事例の詳細な情報を収集、②清浄化達成事例の共通因子を抽出して、その項目が有効かどうかをアンケート調査し、その結果を検証した。

〇 統一テーマ2「豚熱」

1. 豚熱対策の昔と今
    津田 知幸(明治アニマルヘルス株式会社)

 2018年に岐阜県で26年ぶりに発生した豚熱は、本年8月1日までに17県で計83事例が発生し約35万頭が処分された。豚熱はまた野生イノシシにもまん延し30都府県で感染イノシシが確認されている。飼養豚に対しては予防的ワクチン接種が行われているものの、接種農場でも発生が起こっている。また、野生イノシシに対しては、捕獲強化と経口ワクチン散布も行われているが、陽性地域は依然として拡大を続けている。日本では過去にはワクチン接種によって豚熱を制圧し、撲滅を達成した歴史があるが、今回の豚熱との戦いは苦戦を強いられている。そこで、この違いの要因と課題を考える。

2. 岐阜県における豚熱ワクチン免疫状況の解析と現状
  桑田桂輔1)、迫田義博2)1)岐阜県中央家畜保健衛生所、2)北海道大学)

 2018年、国内26年ぶりの豚熱が発生し、翌年に豚熱ワクチン接種が開始された。しかし、肥育豚のワクチンブレイク及び移行抗体消失による免疫空白が懸念され、全国のワクチン接種地域で散発的な発生が継続した。ワクチンの免疫付与率はELISAだけでは正確に判定できないことから、本県では半年ごとに出荷豚でELISA及び中和試験を実施し、正確な免疫付与率を判定している。現在、母豚の更新が進むことで、抗体分布が低く変化するとともにばらつきが増加することで、ワクチン接種までの間に移行抗体消失による大きな免疫空白が発生してしまう状況となっている。今後は野生イノシシの感染拡大に伴う発生リスクの長期化を想定し、農場のバイオセキュリティ徹底と併せて継続的な免疫状況及び接種適齢期の把握により発生予防に努める必要がある。

3. 一臨床獣医師が見た豚熱
    石川 弘道(㈲サミットベテリナリーサービス)

 豚熱は、養豚産業に大きな被害をもたらす豚の急性・熱性伝染病であり、死亡率が高く恐れられている。日本では2006年にワクチン接種を全面的に中止し2007年に清浄国となった。しかし2018年9月に岐阜県で26年ぶりに発生し、2019年9月に群馬県での初発生を経験した後、2022年6月まで群馬県内で8例の発生を経験している。我々の契約農場においても2021年4月および10月に2農場において発生が認められた。
最近の豚熱に関する情報は、抗体検査結果やワクチン接種プログラム、農場防疫などに関するものが主で、豚熱本来の症状に関する記載が少ないように感じる。今回豚熱発生を経験した一養豚獣医師の立場から豚熱の症状について述べることにする。

4. 豚熱の侵入要因と防疫に関する考察
    早川 結子(イデアス・スワインクリニック)

 国内の豚熱発生は初発から4年が経過した現在も継続している。沖縄県を除くほぼすべての発生事例が、野生イノシシの豚熱感染が確認されている地域に由来しており、主要な感染源が野生イノシシであることに疑いの余地はない。しかし、野生イノシシから飼養豚へウイルスが伝搬される要因の完全な解明には未だ至っていない。このたび、筆者が所属する日本豚病臨床研究会会員の中の豚熱発生事例経験者から、2例の発生農場について詳細な情報を得た。この情報を元に、第一に臨床現場からみた侵入要因を考察する。第二に、その要因を前提に、豚熱発生予防に有効な防疫について考察する。

〇 一般口演

1. 初産豚における貧血と繁殖成績との関連
    渡辺 一夫(株式会社 ピグレッツ)

 分娩直前と離乳直前の末梢血中Hb値が10.3g/dl以上を健康値群、10.3g/dl未満を貧血群とし、貧血と繁殖成績との関連について検討した。離乳頭数において健康値群(63頭)10.9±1.2頭、貧血群(43頭)11.5±1.2頭であり、貧血群が有意(p<0.05)に多かった。一日増体量は健康値群221.8±21.2g、貧血群220.4±22.3gと両群に差は認められなかった。離乳後14日以内で発情回帰し交配できたものは健康値群で52/63頭(82.5%)、貧血群で42/43頭(97.7%)と有意(p<0.05)に貧血群の交配率が高かった。しかし、この交配での受胎率は健康値群で42/52頭、80.8%、貧血群で35/42頭、83.3%と差は認められなかった。したがって、授乳中に貧血になる個体は泌乳能力や繁殖能力が高いことが推察され、貧血予防に努めることが繁殖成績や連産性性向上に繋がると思われた。

2. 豚のふん尿で汚れた作業着の清浄化に関する研究
    三宅 眞佐男(アニマル・バイオセキュリティ・コンサルティング株式会社)

 豚のふん尿に汚れた衣類は洗濯しても余りきれいにならず防疫上懸念がある。多くの洗剤は陰イオン性で、例えばこれに陽イオン性の逆性石けん液を混合するとイオン拮抗する。除菌と洗濯工程を分けても前工程で充分な水洗が必要で手間がかかる。そこで、汚れ落としと除菌を一工程で行う方法を研究した。除菌効果は一般生菌と大腸菌群数を比較した。供試した洗剤6種類の中で、汚れ落としの効果は粉末洗剤Texが良かったが、 除菌効果は認めなかった。逆性石けん液L 0.2%液は単独でも、Tex0.1%を加えても殆ど汚れを落さなかったが、いずれも一定の除菌効果を認めた。複合塩素剤VS 0.2%液は単独でも、Tex0.1%を加えても十分ではないが汚れを落とし、一定の除菌効果も認めた。過酢酸製剤V 0.33%にTex0.1%を添加すると除菌効果は高いが、汚れ落しは不十分だった。しかし、これに防錆剤KL*を1.0%添加すると汚れ落としと除菌効果が共に高かった。(利益相反:*KLは演者の開発・製造販売品)

 


第100回日本豚病研究会 研究集会開催のお知らせ(終了しました)

日本豚病研究会事務局(動物衛生研究部門内)
Tel/Fax: 029-838-7745
e-mail: tonbyou@ml.affrc.go.jp

日本豚病研究会は定期総会と第100回研究集会を下記要領で開催しますのでご案内致します。
なお、今回は研究集会参加にあたり事前登録が必要です(5月10日締切5月18日まで延長のでご留意願います。

1.定期総会

令和 4年 5月23日~6月6日まで日本豚病研究会ホームページ(https://tonbyo.com/wp/)の会員専用ページに総会議案書を掲載する形式にて開催いたします。

2.第100回研究集会

日 時  : 令和 4年 5月20日(金) 13:00~17:00

場 所  :文部科学省研究交流センター(〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-5)

開催方法 :現地参加(定員制限あり)またはオンライン配信(定員500名)

参加費     :会員は無料、非会員は1500円

参加方法 :会員・非会員ともに事前登録制(5/10締切)

*参加登録はこちらから→第100回研究集会参加登録

*新規入会者はこちらから会員登録した後、参加登録してください。

*非会員で参加希望の方は参加登録後、5月15日まで5月18日までに参加費をお振込みください。振込情報はこちら→参加費の振込

*ご登録後、5月18日までに連絡がない場合事務局にご連絡ください。



日程

〇 開会挨拶 (13:00~13:10)          日本豚病研究会 会長  津田 知幸

 

〇 一般講演 テーマ 「薬剤耐性(AMR)の対策と現状」

                 座長 勝田 賢 [農研機構 動物衛生研究部門]

1.薬剤耐性対策アクションプランの取組と成果、今後の課題について
農林水産省 消費・安全局 畜水産安全管理課 福永 陽子、川西 路子
(13:10~13:50)

2.豚由来病原性大腸菌の薬剤耐性
農研機構 動物衛生研究部門 楠本 正博
(14:00~14:50)

座長 小林 創太 [農研機構 動物衛生研究部門]

3.抗菌剤の使用及び使用中止が豚由来大腸菌の耐性率へ与える影響の解明
農研機構 動物衛生研究部門 玉村 雪乃
(15:00~15:40)

4.養豚場の汚水処理過程における抗菌剤や薬剤耐性菌の残存実態と動態
農研機構 動物衛生研究部門 渡部 真文、グルゲ キールティ シリ
(15:50~16:30)

〇 閉 会(16:30~17:00)


講演要旨

薬剤耐性対策アクションプランの取組と成果、今後の課題について
福永 陽子、川西 路子(農林水産省 消費・安全局 畜水産安全管理課)

 “抗菌剤が効かない薬剤耐性菌”の対策はワンヘルスのアプローチで取り組むべき課題の一つであり、我が国では、平成28年4月に関係閣僚会議において策定された「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(以下「アクションプラン」という。)」に基づき、関係省庁、関係機関等が対策を進めているところです。アクションプランは、①普及啓発・教育、②動向調査・監視、③感染予防・管理、④抗菌剤等の適正使用、⑤研究開発・創薬、⑥国際協力の各分野について、それぞれ目標と戦略、具体的な取組を記載しています。今回、これまでアクションプランに基づき実施した主な取組と成果、今後の課題について養豚分野を中心に紹介致します。

豚由来病原性大腸菌の薬剤耐性
楠本正博(農研機構 動物衛生研究部門)

抗菌剤が効かない薬剤耐性菌のまん延が世界中で進行している。国内で流通する抗菌剤の約6割は動物に使用され、中でも使用量が最も多い豚は薬剤耐性菌の発生や拡散に関して重要な家畜と考えられている。また、病原性大腸菌は豚の疾病(下痢、浮腫病、敗血症など)の重要な原因菌であるが、近年の研究により、健康豚由来大腸菌(非病原性大腸菌)に比べて多剤耐性傾向にあることが知られている。本講演では、1991年から2019年にかけて国内で豚から分離された病原性大腸菌について、O群血清型、遺伝学的系統、病原遺伝子保有状況、薬剤感受性などを調査した結果について紹介する。一部の菌群は高度な多剤耐性を示すことから、農場における浸潤状況に注意する必要がある。

抗菌剤の使用及び使用中止が豚由来大腸菌の耐性率へ与える影響の解明
玉村 雪乃(農研機構・動物衛生研究部門)

近年、薬剤耐性菌が世界的に問題となっており、獣医畜産領域においてもその対策が喫緊の課題となっている。薬剤耐性菌は抗菌剤存在下において出現して選択されると考えられていることから、薬剤耐性菌対策として抗菌剤の使用量低減が有効とされている。しかしながら、農場における抗菌剤使用状況と薬剤耐性菌分布率との関連性については十分に解明されていない。我々は国内の10カ所の養豚場を訪問し、抗菌剤使用状況及び薬剤耐性菌分布状況を調査し、それらの関連について解析した。さらにこのうち2カ所の農場で一部の抗菌剤の使用を中止し、薬剤耐性菌分布状況の変化を観察した。これらの調査により得られた知見を紹介したい。

養豚場の汚水処理過程における抗菌剤や薬剤耐性菌の残存実態と動態
渡部真文、グルゲ キールティ シリ(農研機構・動物衛生研究部門)

 ワンヘルスアプローチによる薬剤耐性問題への対応では、家畜排泄物及びその処理物経由での抗菌剤や薬剤耐性菌の環境負荷低減が求められている。特に、抗菌剤の使用量から養豚業への注目は高く、中でも、他の畜種に比べ発生量の大きい汚水の処理は関心を集めているが、国内での調査・研究例は限られている。このようなことから、演者らの研究グループは、農水省RS事業「動物用抗菌剤の使用によるリスクを低減するための研究」(2017~2021年度, JP J008617.17935699)において、養豚場の汚水処理過程における抗菌剤と薬剤耐性大腸菌の残存実態や動態を解明してきた。本講演では、その成果を紹介する。