事務局:日本豚病研究会
E-mail: tonbyou@ml.affrc.go.jp
日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会は、第12回合同集会を下記の通り開催いたします。なお、参加にあたっては2022年10月14日金曜日10月20日正午までに事前登録をお願いいたします。
記
日 時: 2022年10月21日(金) 10:00~17:00
場 所: つくば国際会議場Leo Esakiメインホール(茨城県つくば市竹園2-20-3)
開催形式: 集合形式およびオンラインウェビナー形式
定 員: 現地参加の定員は225名(先着順)、オンライン参加は定員なし
参 加 費: 無料
事前参加登録:2022年10月14日(金)締切。10月20日正午まで延長!
ご登録はこちらから⇒https://forms.gle/Q4ziQ4f4pjS5ngP56
*10月19日17時までにご登録いただいた方には参加方法を連絡いたしました。
連絡がない方はmiyaan@affrc.go.jpまでご連絡ください。
* 新型コロナウイルス感染症発生状況により、現地参加からオンライン参加に変更をお願いする可能性がありますことをご了承ください。
* 新型コロナウイルス感染症にかかる茨城県イベント開催時感染防止策チェックリストはこちらからご確認ください。⇒■
日 程
開 会 (10:00~10:05)
〇 統一テーマ1「豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)」(10:00~10:05)
座長:矢原 芳博(日清丸紅飼料株式会社)
1. 国内における豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の発生状況と流行株の遺伝型について(10:05~10:35)
農研機構 動物衛生研究部門 髙木 道浩 [豚病研]
2. 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の海外最新知見(10:35~11:05)
株式会社スワイン・エクステンション&コンサルティング 大竹 聡 [JASV]
3. 養豚獣医師への継続したPRRSアンケート調査(11:05~11:35)
有限会社あかばね動物クリニック 水上 佳大 [豚臨研]
統一テーマ1 総合討論(11:35~11:50)
[昼休み 11:50~13:30]
〇 統一テーマ2「豚熱」(13:30~16:00)
座長:深井 克彦 (農研機構 動物衛生研究部門)
1. 豚熱対策の昔と今(13:30~14:00)
明治アニマルヘルス株式会社 津田 知幸 [豚病研]
2. 岐阜県における豚熱ワクチン免疫状況の解析と現状(14:00~14:30)
岐阜県中央家畜保健衛生所 桑田 桂輔、他 [豚病研]
3. 一臨床獣医師が見た豚熱(14:30~15:00)
有限会社サミットベテリナリーサービス 石川 弘道 [JASV]
4. 豚熱の侵入要因と防疫に関する考察(15:00~15:30)
イデアス・スワインクリニック 早川 結子 [豚臨研]
統一テーマ2 総合討論(15:30~16:00)
[休憩 16:00~16:10]
〇 一般口演 (16:10~16:50)
座長:武田 浩輝(㈲アークベテリナリーサービス)
1. 初産豚における貧血と繁殖成績との関連(16:10~16:30)
株式会社 ピグレッツ 渡辺 一夫 [豚臨研]
2. 豚のふん尿で汚れた作業着の清浄化に関する研究(16:30~16:50)
アニマル・バイオセキュリティ・コンサルティング株式会社 三宅 眞佐男 [JASV]
閉 会 (16:50~17:00)
講演要旨
〇 統一テーマ1「豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)」
1. 国内における豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の発生状況と流行株の遺伝型について
髙木 道浩(農研機構 動物衛生研究部門)
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は我が国を含めた世界の養豚産業において経済損害を与える疾病としてあげられる。国内では1980年代後半から問題となり、30年以上が経過しているが、ワクチン接種や飼養衛生管理基準などにより病態や被害が軽減はしているものの、流行ウイルスの遺伝的多様性が認められ、時として甚大な被害をもたらしている。国内の流行ウイルスは5つのクラスターに分けることができるが、2008年に初めてクラスターIVに属するウイルスが分離されて以降、このクラスターに属するウイルス株が増えてきている。今回、これまでに得られているクラスターIVに属するPRRSウイルスの解析を中心とした結果を紹介する。
2. 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の海外最新知見
大竹 聡(株式会社スワイン・エクステンション&コンサルティング)
豚繁殖呼吸障害症候群(PRRS)は、世界の主要な養豚生産国(特にアメリカ)や我が国日本において、経済損失の非常に大きい疾病であることが知られている。特に昨今のアメリカではPRRS強毒株(1-8-4株,1-7-4株, 1-4-4株)が流行・台頭しており、我が国においてもここ最近、同クラスター(IV)に属する類似株によっての被害が確認されている。豚熱(CSF)ウイルスもPRRSウイルスも同じく宿主の免疫系を錯乱させることから、CSF対策におけるPRRS対策の位置付けは非常に重要であると筆者は考える。そのような背景のもと、国内外のPRRS最新知見、特に強毒株とバイオセキュリティについて、今回報告する。
3. 養豚獣医師への継続したPRRSアンケート調査
水上 佳大(有限会社あかばね動物クリニック)
PRRSは日本国内の多くの養豚場で生産成績に影響を与えている。現在までに様々なPRRS対策の方法は提案されているものの、その効果は農場によって異なる。養豚場ごとに規模や施設、ピッグフローなどが異なることが影響していることが考えられる。管理獣医師としては、幅広い農場に対して効果的なPRRS対策を突き止めたいと考えている。
豚病臨床研究会ではPRRSについて数年にわたり様々な情報を収集しており、直近ではPRRS対策のうち効果の高い対策を抽出するために、①清浄化事例の詳細な情報を収集、②清浄化達成事例の共通因子を抽出して、その項目が有効かどうかをアンケート調査し、その結果を検証した。
〇 統一テーマ2「豚熱」
1. 豚熱対策の昔と今
津田 知幸(明治アニマルヘルス株式会社)
2018年に岐阜県で26年ぶりに発生した豚熱は、本年8月1日までに17県で計83事例が発生し約35万頭が処分された。豚熱はまた野生イノシシにもまん延し30都府県で感染イノシシが確認されている。飼養豚に対しては予防的ワクチン接種が行われているものの、接種農場でも発生が起こっている。また、野生イノシシに対しては、捕獲強化と経口ワクチン散布も行われているが、陽性地域は依然として拡大を続けている。日本では過去にはワクチン接種によって豚熱を制圧し、撲滅を達成した歴史があるが、今回の豚熱との戦いは苦戦を強いられている。そこで、この違いの要因と課題を考える。
2. 岐阜県における豚熱ワクチン免疫状況の解析と現状
桑田桂輔1)、迫田義博2)(1)岐阜県中央家畜保健衛生所、2)北海道大学)
2018年、国内26年ぶりの豚熱が発生し、翌年に豚熱ワクチン接種が開始された。しかし、肥育豚のワクチンブレイク及び移行抗体消失による免疫空白が懸念され、全国のワクチン接種地域で散発的な発生が継続した。ワクチンの免疫付与率はELISAだけでは正確に判定できないことから、本県では半年ごとに出荷豚でELISA及び中和試験を実施し、正確な免疫付与率を判定している。現在、母豚の更新が進むことで、抗体分布が低く変化するとともにばらつきが増加することで、ワクチン接種までの間に移行抗体消失による大きな免疫空白が発生してしまう状況となっている。今後は野生イノシシの感染拡大に伴う発生リスクの長期化を想定し、農場のバイオセキュリティ徹底と併せて継続的な免疫状況及び接種適齢期の把握により発生予防に努める必要がある。
3. 一臨床獣医師が見た豚熱
石川 弘道(㈲サミットベテリナリーサービス)
豚熱は、養豚産業に大きな被害をもたらす豚の急性・熱性伝染病であり、死亡率が高く恐れられている。日本では2006年にワクチン接種を全面的に中止し2007年に清浄国となった。しかし2018年9月に岐阜県で26年ぶりに発生し、2019年9月に群馬県での初発生を経験した後、2022年6月まで群馬県内で8例の発生を経験している。我々の契約農場においても2021年4月および10月に2農場において発生が認められた。
最近の豚熱に関する情報は、抗体検査結果やワクチン接種プログラム、農場防疫などに関するものが主で、豚熱本来の症状に関する記載が少ないように感じる。今回豚熱発生を経験した一養豚獣医師の立場から豚熱の症状について述べることにする。
4. 豚熱の侵入要因と防疫に関する考察
早川 結子(イデアス・スワインクリニック)
国内の豚熱発生は初発から4年が経過した現在も継続している。沖縄県を除くほぼすべての発生事例が、野生イノシシの豚熱感染が確認されている地域に由来しており、主要な感染源が野生イノシシであることに疑いの余地はない。しかし、野生イノシシから飼養豚へウイルスが伝搬される要因の完全な解明には未だ至っていない。このたび、筆者が所属する日本豚病臨床研究会会員の中の豚熱発生事例経験者から、2例の発生農場について詳細な情報を得た。この情報を元に、第一に臨床現場からみた侵入要因を考察する。第二に、その要因を前提に、豚熱発生予防に有効な防疫について考察する。
〇 一般口演
1. 初産豚における貧血と繁殖成績との関連
渡辺 一夫(株式会社 ピグレッツ)
分娩直前と離乳直前の末梢血中Hb値が10.3g/dl以上を健康値群、10.3g/dl未満を貧血群とし、貧血と繁殖成績との関連について検討した。離乳頭数において健康値群(63頭)10.9±1.2頭、貧血群(43頭)11.5±1.2頭であり、貧血群が有意(p<0.05)に多かった。一日増体量は健康値群221.8±21.2g、貧血群220.4±22.3gと両群に差は認められなかった。離乳後14日以内で発情回帰し交配できたものは健康値群で52/63頭(82.5%)、貧血群で42/43頭(97.7%)と有意(p<0.05)に貧血群の交配率が高かった。しかし、この交配での受胎率は健康値群で42/52頭、80.8%、貧血群で35/42頭、83.3%と差は認められなかった。したがって、授乳中に貧血になる個体は泌乳能力や繁殖能力が高いことが推察され、貧血予防に努めることが繁殖成績や連産性性向上に繋がると思われた。
2. 豚のふん尿で汚れた作業着の清浄化に関する研究
三宅 眞佐男(アニマル・バイオセキュリティ・コンサルティング株式会社)
豚のふん尿に汚れた衣類は洗濯しても余りきれいにならず防疫上懸念がある。多くの洗剤は陰イオン性で、例えばこれに陽イオン性の逆性石けん液を混合するとイオン拮抗する。除菌と洗濯工程を分けても前工程で充分な水洗が必要で手間がかかる。そこで、汚れ落としと除菌を一工程で行う方法を研究した。除菌効果は一般生菌と大腸菌群数を比較した。供試した洗剤6種類の中で、汚れ落としの効果は粉末洗剤Texが良かったが、 除菌効果は認めなかった。逆性石けん液L 0.2%液は単独でも、Tex0.1%を加えても殆ど汚れを落さなかったが、いずれも一定の除菌効果を認めた。複合塩素剤VS 0.2%液は単独でも、Tex0.1%を加えても十分ではないが汚れを落とし、一定の除菌効果も認めた。過酢酸製剤V 0.33%にTex0.1%を添加すると除菌効果は高いが、汚れ落しは不十分だった。しかし、これに防錆剤KL*を1.0%添加すると汚れ落としと除菌効果が共に高かった。(利益相反:*KLは演者の開発・製造販売品)