日本豚病研究会は、令和7年度定期総会および第106回研究集会春の研究集会を下記要領で開催しますのでご案内致します。
記
日 時: 令和7年5月23日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター
〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-5
駐車場は敷地内北側にあります。
【研究集会終了後、懇親会を予定しております】
時 間: 令和6年5⽉23⽇(⾦)18:00~20:00
場 所: 三浦飲⾷堂
〒305-0031 茨城県つくば市吾妻1丁⽬5
会費:7,000円
参加登録:5⽉19⽇(月)までに下記にてお申し込みください。(先着60名)
① QRコードを読み込んで登録
② お名前及びご所属をtonbyouken@gmail.comに送信
お申し込みフォーム
日 程
1. 開 会 令和7年度定期総会 (13:00~13:30)
[休 憩 13:30~13:40]
2. 一般口演 (13:40~14:30)
座長:宮﨑 綾子 [農研機構 動物衛生研究部門]
2.1 野生イノシシにおける豚熱及びアフリカ豚熱検査の現状 (13:40~14:05)
富永 みその (農林水産省 消費・安全局 動物衛生課)
2.2 豚のアニマルウェルフェアに対応した使用管理技術 (14:05~14:30)
竹田 謙一 (信州大学農学部 動物行動管理学研究室)
[休 憩 14:30~14:40]
3. 特別講演 Lesson to learn from FMD 2010 (14:40~16:40)
座長:生澤 充隆 [農研機構 動物衛生研究部門]
3.1 口蹄疫総論 (14:40~15:10)
深井 克彦(農研機構 動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域)
3.2 動衛研における近年の口蹄疫研究 (15:10~15:40)
西 達也(農研機構 動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域)
座長:舛甚 賢太郎 [農研機構 動物衛生研究部門]
3.3 2025年に欧州及び韓国で発生した口蹄疫と農林水産省の緊急対応について
山田 匡之(農林水産省 消費・安全局 動物衛生課) (15:40~16:10)
3.4 2010年の口蹄疫発生に伴う防疫措置とその後の関係者一体となった防疫体制について
片山 貴志(宮崎県 農政水産部 畜産局 家畜防疫対策課) (16:10~16:40)
4. 閉 会 (16:40~17:00)
講演要旨
●一般口演
野生イノシシにおける豚熱及びアフリカ豚熱検査の現状
富永 みその(農林水産省 消費・安全局 動物衛生課)
野生イノシシでの豚熱・アフリカ豚熱サーベイランスの実施は、感染状況の把握や早期発見に必須であり、野生イノシシのみならず飼養豚での感染対策に必要な取組である。特に、発見時に死亡している個体(死亡個体)は、豚熱・アフリカ豚熱に感染している可能性が高く、検査の重要性が高い。しかし、死亡個体の臓器採材は交差汚染リスクが特に高く、また、腐敗進行による検査不適の懸念や作業者への衛生リスク・精神的負担が大きいといった問題もある。本講演では野生イノシシでの豚熱及びアフリカ豚熱サーベイランスに関する経緯とともに、死亡個体で開始した、簡便に採材可能な耳介検体による検査の妥当性及び有用性に関する分析結果を報告する。
豚のアニマルウェルフェアに対応した使用管理技術
竹田 謙一(信州大学農学部 動物行動管理学研究室)
世界的にアニマルウェルフェア(AW)に対応した家畜飼育が進められている。AWとは、動物が生活している状況(=日常の飼育環境)や死の状況(=食用目的のと畜や疾病管理目的のための殺処分)に関連した動物の身体的、精神的状態と定義されている。AWは現在、「5つの自由」という5つの視点から総合的に実際の飼育環境等を評価しようとしている。しかし欧米を中心に、「5つの自由」のうちの「正常な行動を発現する自由」に焦点が集まっている。演者らは、これまでに妊娠豚および分娩豚の正常な行動を発現しうる飼育環境下での行動評価や生産性評価を行ってきた。本講演では、その成果の一部や民間企業における取り組みについて紹介する。
●特別講演 Lesson to learn from FMD 2010
口蹄疫総論
深井 克彦(農研機構 動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域)
口蹄疫は牛や緬山羊および豚などの偶蹄類の急性熱性伝染病であり、その名のとおり、口や鼻および蹄などの水疱形成を特徴とする。本病は強い伝染力を持ち、清浄地にひとたび侵入すれば、瞬く間にまん延する危険性を持っている。また本病は罹患動物に栄養障害や運動障害といった直接的な被害をもたらすとともに、発生国や地域に家畜や畜産物の輸出停止といった経済的被害ももたらす。わが国において本病は、2010年以降、15年間にわたって発生を見ていないが、近隣諸国においては未だ本病の発生が継続しており、依然として本病の侵入リスクは高い。特に隣国韓国においては、本年3月に約2年ぶりに本病が発生し、最大限の警戒が必要である。本講演においては、わが国への侵入リスクが最大限に高まった本病への備えとして、本病の性状について、改めて復習したい。
動衛研における近年の口蹄疫研究
西 達也(農研機構 動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域)
口蹄疫のまん延防止には、迅速な摘発と効果的な防疫対策が不可欠である。農研機構動物衛生研究部門(動衛研)ではこれまで、その基盤を構築し、さらに発展させるため、動物実験を通じたウイルスの病態解析と、それに基づく精度の高い診断法の確立、新規迅速診断法の開発と普及、さらにはまん延防止技術の開発に積極的に取り組んできた。本講演では、これらの研究の概要と主要な成果をご紹介する。
2025年に欧州及び韓国で発生した口蹄疫と農林水産省の緊急対応について
山田 匡之(農林水産省 消費・安全局 動物衛生課)
2025年1月10日、ドイツで1988年以来の口蹄疫発生が報告された。3月7日、ハンガリーで1972年以来の発生が報告され、同月22日にはスロバキアでも1973年以来の発生が報告された。ハンガリー・スロバキアでは、発生地点周辺での続発も確認されており、今後の欧州における口蹄疫の発生拡大について予断を許さない状況が続いている。また、韓国においても、本年3月14日に、2023年5月以来となる口蹄疫発生が同国南部の全羅南道で報告され、発生地点周辺での続発が確認されている。農林水産省動物衛生課での各国当局の発生報告確認から、動物検疫所での動物検疫強化実施までの緊急対応の実態を紹介する。
2010年の口蹄疫発生に伴う防疫対応とその後の関係者一体となった防疫体制について
片山 貴志(宮崎県 農政水産部 畜産局 家畜防疫対策課)
2010年に宮崎県で発生した口蹄疫は、4月20日の牛農場での初発事例以降、国内で初めて豚への感染が確認されるなど、県央部の児湯・西都地域を中心に同時多発かつ面的な感染拡大がみられた。さらに、5月18日には都道府県では初となる「非常事態宣言」を行ったため、畜産業のみならず県内経済や県民生活にも大きな影響を及ぼした。また、発生に伴う農場での殺処分や消毒などの防疫作業は、全国からの動員や自衛隊の協力を得ながら7月4日までに終了したが、計297,808頭の尊い命が犠牲となった。その後、農場内に封じ込めた家畜排せつ物の堆肥化処理を進め、4月の発生確認から130日間が経過した8月27日に終息した。
この口蹄疫を経験した本県は、もう2度と発生させないという強い想いを胸に、家畜防疫を畜産経営の土台と位置づけ、県内の関係者が一体となった防疫体制を構築した上で、口蹄疫からの再生、復興、畜産の新生を力強く進めてきた。
今回は、口蹄疫発生当時の壮絶な防疫対応と、口蹄疫以降に構築した新たな防疫体制による『家畜防疫の4本柱』(「水際防疫」、「地域防疫」、「農場防疫」、「万一の発生に備えた迅速な防疫措置」)の取組について紹介したい。