第96回日本豚病研究会研究集会のお知らせ

日本豚病研究会事務局(動物衛生研究部門内)
Tel/Fax: 029-838-7745
e-mail: tonbyou@ml.affrc.go.jp

 日本豚病研究会は春の研究集会を下記要領で開催しますのでご案内致します。なお、新型コロナの状況によりましては中止する可能性があることを予めご了承ください。開催の最終判断は4月20日の週にHPでお知らせするとともに通知をお送りしますので、しばらくご猶予いただきますようお願いいたします。

日 時: 令和 2年5月22日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター(〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-5)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/kouryucenter/
参加方法:
事前登録は不要です。当日会場で受付してください。
参加費    会員;無料   非会員;1,500円

日 程
1. 定期総会 (13:00~13:30)
2. 特別講演(13:45~14:55)
座長 下地 善弘[農研機構 動物衛生研究部門]
ペスチウイルスの基礎
北海道大学大学院獣医学研究院微生物学教室  迫田 義博 先生

[休 憩 14:55~15:25]

3.  一般口演(15:25~16:55 各講演30分)
座長 吉田 晶徳[群馬県家畜衛生研究所]
1)野生イノシシのCSF(豚熱)対策
農林水産省消費・安全局動物衛生課       菊池 栄作

座長 宮﨑 綾子[農研機構 動物衛生研究部門]
2)千葉県養豚密集地帯で流行したPEDについての一考察
千葉県中央家畜保健衛生所           三浦 良彰他

座長 芝原 友幸[農研機構 動物衛生研究部門]
3)酸化亜鉛が原因となった豚の亜鉛中毒の大規模発生
愛知県中央家畜保健衛生所          小松 徹也他

4. 閉 会(16:55~17:00)

講演要旨

【特別講演】
ペスチウイルスの基礎
迫田義博(北海道大学大学院獣医学研究院微生物学教室)

フラビウイルス科のペスチウイルス属には、豚熱ウイルス、牛ウイルス性下痢ウイルス、ボーダー病ウイルスなどの家畜の重要感染症病原体だけでなく、現在は反芻野生動物、コウモリ、イルカなどからもウイルスが検出されている。もちろん最重要は豚熱ウイルスである。2018年から国内でも豚熱の発生が続いているが、そのウイルスの病原性が中程度であるため現場も行政も混乱した。しかし、日本豚病研究会報 平成13年8月号「英国の豚コレラから学ぶこと」で演者が書いたように、英語で言うところの「moderate」の病原性のウイルスは20年前から周知の事実であった。我々が怠っていたのは、自分も含め研究者による啓蒙、また現場と行政における当時の情報の継承である。これらを払拭すべく、改めて皆さんとペスチウイルスを勉強したい。

【一般口演】

1)野生イノシシのCSF(豚熱)対策
菊池栄作(農林水産省消費安全局動物衛生課)

2018年、26年ぶりに我が国で発生したCSF(豚熱)の野生イノシシ対策として、(1)捕獲の強化、(2)サーベイランス、(3)経口ワクチン散布等を実施。
(1)CSF陽性の野生イノシシが確認されている県及び隣接県等の22都府県において、養豚場の周辺や、イノシシの移動制限に重要な地域を捕獲重点エリアとして設定して捕獲を強化する等、CSFの感染源となりうる野生イノシシの個体数を減らし、ウイルス拡散を防止。
(2)捕獲又は死亡したイノシシから採材し、遺伝子検査等を実施してウイルスの浸潤状況を把握。
(3)2019年9月以降、イノシシに抗体を付与して環境中のウイルス濃度を下げるため、ウイルスの浸潤状況及び野生イノシシの生息状況等を踏まえて散布。また、全国へのウイルス拡散を防止するため、東日本と西日本に、重点的にワクチンを散布する防疫帯(ワクチンベルト)を構築。

2)千葉県養豚密集地帯で流行したPEDについての一考察
○三浦良彰1、畑中ちひろ1、岩間亮祐2、青木ふき乃2 (1千葉県中央家畜保健衛生所 2千葉県北部家畜保健衛生所)

2019年1月から8月に千葉県養豚密集地帯で豚流行性下痢(PED)が82件発生した。流行の原因を検討するために、当該密集地帯を対象としたアンケート調査、流行期前の繁殖豚及び肥育豚のPEDウイルス(PEDV)抗体保有調査、PEDVの遺伝子解析を実施した。アンケート調査では、中~大規模、または死亡畜集積所等の施設を共同利用する農場で発生が多い傾向がみられた。抗体調査は3年以上発生のない5農場56頭の繁殖豚を検査し、発生後に生まれた個体で高い抗体価がみられた。肥育豚については2017及び2018年に各20農場100頭を検査し、農場陽性率及び個体陽性率は、2017年は90%及び76%、2018年は 85%及び38%であった。遺伝子解析の結果、2014年株と差異は認められなかった。以上のことから今回の流行は、地域の抗体保有豚が減少し、常在していたPEDVにより発生、施設の共同利用等の交差汚染により感染が拡大した、と推察された。

3)酸化亜鉛が原因となった豚の亜鉛中毒の大規模発生
○小松徹也1、杉江建之介1、犬養尚子1、小山田敏文2、澤田浩3、山中典子3、芝原友幸3,4(1愛知県中央家畜保健衛生所、2北里大学、3農研機構動物衛生研究部門、4大阪府立大学)

亜鉛の多量給与は、近年養豚場で大腸菌症対策として用いられている。2017年、常時多量の酸化亜鉛を給与していた一農場で、誤って通常の4倍量である約8,000ppmを長期間投与された結果、農場の9割の豚に軟便や発育不良が発生した。200~240日齢の豚4頭の剖検したところ、全頭に膵臓の萎縮が見られ、病理組織学的検査で、慢性膵炎と診断された。生化学検査により、肝臓や腎臓に高度な亜鉛の蓄積が認められた。以上より、本症例は亜鉛中毒と診断された。畜産物由来薬剤耐性菌の出現抑制の面から、今後亜鉛の使用頻度の増加が見込まれる。次の中毒発生を防ぐため、亜鉛多量給与の危険性と適正利用について報告する。
〈お知らせ〉
・研究集会終了後、懇親会 (当日受付) を予定しております。ふるってご参加ください。

懇親会について
時 間: 17:30~19:30
場 所: レストラン エスポワール(つくば国際会議場内); 研究集会会場より徒歩 約10分
〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3  TEL:029-850-3266
http://www.epochal.or.jp/floor_guide/food/index.html
会 費: 5,000円

第12回 動物用ワクチン・バイオ医薬品研究会シンポジウムをお知らせいたします。

第12回 動物用ワクチン・バイオ医薬品研究会シンポジウムのお知らせ
「動物用バイオ医薬品の最先端:動物用抗体医薬の現状と未来」
日時 2020年5月21日(木)13:00~17:00
会場 エッサム神田ホール2号館
参加費 無料(非会員の方 一般2,000円、学生1,000円)
講演内容
13:10‐14:10  教育講演  「ヒト抗体医薬の現状と未来」

東北大学大学院医学研究科・抗体創薬分野・教授 加藤 幸成

14:10‐15:10  基調講演  「成長続く動物用医薬品市場」

東レ経営研究所・チーフアナリスト 永井 知美

15:25‐15:55  話題提供1 「新しい犬アトピー性皮膚炎の治療薬:イヌ化抗イヌインターロイキン-31モノクローナル抗体薬「サイトポイント®」

㈱ゾエティス・ジャパン・コンパニオンアニマルビジネス統括部・テクニカルサービス部 橋口 順子

15:55‐16:25  話題提供2 「犬の腫瘍疾患に対する免疫チェックポイント阻害抗体薬の臨床研究」

北海道大学大学院獣医学研究院・先端創薬分野・特任助教 前川 直也

16:25‐16:55  話題提供3 「牛の慢性感染症に対する免疫チェックポイント阻害抗体薬の臨床研究」

北海道大学大学院獣医学研究院・先端創薬分野・特任助教 岡川 朋弘

お問い合わせ
動物用ワクチン-バイオ医薬品研究会 事務局
〒252-0132 神奈川県相模原市緑区橋本台3丁目7番11号
一般財団法人 生物科学安全研究所内
TEL:042-762-2775  FAX:042-762-7979
E-mail: jimukyoku@jsavbr.jp

アフリカ豚熱(ASF)国際シンポジウム~世界のASFの現状を知り、これからの対策を考える~の開催について(農林水産省より)

<農林水産省よりのお知らせ>

令和2年2月25日(火曜日)、ASFの現状を情報提供するため、
「アフリカ豚熱(ASF)国際シンポジウム(THE INTERNATIONAL SYMPOSIUM FOR AFRICAN SWINE FEVER)
~世界のASFの現状を知り、これからの対策を考える~」を開催いたします。

本シンポジウムは公開であり、
・ASF発生国での対策
・ワクチンの研究開発
など、最新の状況を英語、日本語で情報提供させていただく予定です。
傍聴をご希望の場合は、上記「アフリカ豚熱(ASF)国際シンポジウム(THE INTERNATIONAL SYMPOSIUM FOR AFRICAN SWINE FEVER)より事前登録となります。
なお、締め切りは2月11日(火・祝)17:00必着となっておりますが、会場の関係から
先着150名程度とさせて頂いておりますので、お早めのご登録をお願いします。

 

第95回日本豚病研究会・2019年度日本豚病臨床研究会・ 令和元年度日本養豚開業獣医師協会 第10回合同集会は終了いたしました。

第95回日本豚病研究会・2019年度日本豚病臨床研究会・令和元年度日本養豚開業獣医師協会第10回合同集会(事務局:日本豚病臨床研究会)を令和元年10月11日(金)明治ホールディングス株式会社本社地下一階講堂にて開催いたしました。会員他、多数の皆様のご参加に感謝申し上げます。

会報74号を発行いたしました。

会報74号をHPに掲載いたしました。
HPにて新規会員登録済の会員様は最新号会報もダウンロードが可能です。
(非会員又は、会員様でもHP新規会員未登録の方は最新2年分はダウンロードできません。)
是非ご利用ください。

第95回日本豚病研究会・2019年度日本豚病臨床研究会・ 令和元年度日本養豚開業獣医師協会 第10回合同集会のお知らせ

事務局:日本豚病臨床研究会事務局
(Meiji Seikaファルマ株式会社内)
Tel:03-3273-3436
Fax:03-3271-1460
E-mail:rumi.takamiya@meiji.com

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会は、第10回合同集会を開催いたします。詳細につきまして、下記の通りご案内申し上げます。

日時: 2019年10月11日(金) 10:00~17:00(受付 9:15~)
場所: 明治ホールディングス株式会社 本社ビル 地下1階講堂
〒104-0031 東京都中央区京橋2丁目4番 16号
Tel:03-3273-3436

<お知らせ>
・ 合同集会終了後、懇親会を予定しております。奮ってご参加ください。
・ 集会への参加申し込みは不要です。当日直接会場までお越しください。
・ 懇親会のみ事前登録が必要となります。下記の「懇親会について」をご覧いただきお申し込みください。

日 程

開 会 (10:00~10:05)

統一テーマ「豚コレラ2018の既知と未知」         (10:05~15:45)

統一テーマ司会:末吉 益雄(宮崎大学)

1.趣旨説明                        (10:05~10:25)
宮崎大学 末吉 益雄[豚臨研]

座長:山田 学(農研機構 動物衛生研究部門)
2.豚コレラの疫学調査に係る中間取まとめ         (10:25~11:10)
農林水産省 消費・安全局 動物衛生課 室賀 紀彦[豚病研]

座長:石川 弘道((有)サミットベテリナリーサービス)
3.飼養衛生管理基準再点検および岐阜県の指導から学ぶバイオセキュリティ (11:10~11:40)
(一社)日本養豚開業獣医師協会  呉 克昌[JASV]

4.EUにおけるイノシシの豚コレラ対策                (11:40~12:10)
エクシュタイン・スワイン・サービス  宮下 マリ[JASV]

[休憩 12:10~14:00](日本豚病研究会 幹事会)

座長:武田 浩輝(アークベテリナリーサービス)
5.豚コレラ発生農場と地域の実情                 (14:00~14:40)
(有)あかばね動物クリニック  水上 佳大・伊藤 貢[豚臨研]

6.経験者が語る過去の豚コレラワクチンの効果について       (14:40~15:00)
長野県農業共済組合  中川 巳津英[豚臨研]

7.総合討論                           (15:00~15:45)

[休憩 15:45~15:55]

一般口演                             (15:55~16:55)
座長:矢原 芳博(日清丸紅飼料(株))

1.旅客携帯品として海外から持ち込まれた豚肉加工品からのアフリカ豚コレラウイルス(ASFV)の分離について
農研機構 動物衛生研究部門  舛甚 賢太郎[豚病研]         (15:55~16:15)

2.国内の豚から検出されたPCV2の遺伝学的変化             (16:15~16:35)
エス・エム・シー(株)  小池 郁子[JASV]

3.豚流行性下痢(PED)流行地域における非発生農場の侵入防止に向けたリスク評価に基づく防疫対策とモニタリング検査結果
南州農場(株)  高野 晃一[豚臨研] (16:35~16:55)

閉 会 (16:55~17:00)

懇親会について
日時: 2019年10月11日(金) 17:30~19:30
場所: アンジェリオン オ プラザ 東京
東京都中央区京橋3-7-1 相互館110タワー 11階
(合同集会会場のすぐ近くです。下図参照)
https://tokyo.anjelion.jp/
会費: 5,500円(会費は当日受付で申し受けます。)

懇親会参加人数把握のため、参加可能な方は、9月27日(金)までに、
以下の連絡先へメールにてご連絡ください。
なお、当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けいたします。
懇親会参加者連絡先:日本豚病臨床研究会事務局
E-mail:rumi.takamiya@meiji.com
※メールの件名は「三団体懇親会申込」にてお送りください。

講演要旨
統一テーマ「豚コレラ2018の既知と未知」

1.趣旨説明
宮崎大学  末吉 益雄
2018年に再発生した豚コレラについて分かったこと、分からないこと、今後の防疫のためには何を確認しなければならないのか?豚コレラの拡大防止、清浄化に資する機会としたい。分かったことは、流行ウイルス株は「Mongolian/2014」、「Chinese/2015」に近縁(一部変異)、その病原性は比較的弱く、初期の臨床診断は困難、扁桃の蛍光抗体法検査で陰性例がある、豚用ワクチンは100万ドーズ備蓄、ドイツではイノシシ用経口ワクチンの成功経験がある。分かっていないことは、豚とイノシシへの病原性(病態と免疫動態、特に感染2週以後)、現行飼養衛生管理基準の盲点、in vivoにおける現有ワクチン効果、国内での野生イノシシへの経口ワクチンの効果、豚への予防ワクチンのシミュレーション、ワクチンの増産計画/緊急輸入計画など、がある。

2.豚コレラの疫学調査に係る中間取りまとめ
農林水産省 消費・安全局 動物衛生課  室賀 紀彦
2018年9月、岐阜県岐阜市の養豚農家において、我が国で26年ぶりに豚コレラが発生した。その後、2019年7月31日までに、愛知県、三重県、福井県でも発生が確認されている。また、岐阜県及び愛知県北部地域を中心に6県では、野生イノシシについても感染が確認されている。
農林水産省では、豚コレラの発生直後に、科学的な分析・評価により感染経路の究明等を行うため、ウイルス学、疫学、野生動物等の専門家で構成される「拡大豚コレラ疫学調査チーム」を設置し、今般の発生及び感染拡大の要因についての情報の収集・分析を進めてきた。本講演では、その分析結果を取りまとめた「豚コレラの疫学調査に係る中間取りまとめ」について、概要を紹介する。

3. 飼養衛生管理基準再点検および岐阜県の指導から学ぶバイオセキュリティ
(一社)日本養豚開業獣医師協会  呉 克昌
2018年9月に岐阜県で26年ぶりに発生した豚コレラは、その後も続発しており、野生イノシシにおける感染地域も拡大している。この中で、(一社)日本養豚開業獣医師協会(JASV)は2019年2~3月に国からの要請を受け国・岐阜県・JASVの獣医師によるチームで岐阜県内の豚コレラ陰性農場の飼養衛生管理基準の再点検に同行し、衛生指導を行った。また、岐阜県からの要請を受けて、2019年8~9月にも陰性農場の衛生指導を行っている。この訪問の中で、特にリスクが高いと思われる農場バイオセキュリティの課題が明らかとなったので、報告したい。

4.EUにおけるイノシシの豚コレラ対策
エクシュタイン・スワイン・サービス  宮下 マリ
1990年にすべてのEU加盟国で豚への豚コレラワクチンの接種が中止された。しかし、その後、オランダ、ドイツ、スペイン等、養豚主要国で相次いで豚コレラ(CSF)が発生した。その主な原因として、野生イノシシでのCSF感染と常在化が示唆されたため、野生イノシシにおけるCSFの対策が必要とされた。複数の国や地域で経口弱毒生ワクチンの散布や狩猟の強化、イノシシのサーベイランスを実行し、その経験と教訓を踏まえ、現在、欧州委員会は専門家により作成された野生イノシシにおけるCSFの制御と清浄化に関するガイドラインを提供している。このガイドラインの内容及びイノシシでCSFの清浄化に成功した事例を紹介する。

5.豚コレラ発生農場と地域の実情
(有)あかばね動物クリニック  水上 佳大・伊藤 貢
2018年9月9日に岐阜県で豚コレラが確認されて以降、養豚場および野生イノシシでの発生は拡大している。2019年2月5日には愛知県に飛び火した。
豚コレラはもともと特徴的な臨床症状が乏しい疾病である。更に、今回の株は、病原性が低いため、農場内での類症診断が難しい場合も多い。
発生が確認された地域を中心に、農場防疫の意識は高まった。しかしながら、疑われる感染経路は多岐にわたる。制限区域の設定も長期に及んだため、地域の多くの農場が精神的にも経済的にも窮状に立たされた。再開に向けて、取り組みを行っている。

6.経験者が語る過去の豚コレラワクチンの効果について
長野県農業共済組合  中川 巳津英
約40年前の昭和55年埼玉県西部の入間、狭山に発生した豚コレラを回想してみると、古いことで記憶も定かでないが、豚コレラワクチンの有効性を思い起こす。豚コレラ生ワクチンが開発される前、クリスタルバイオレットを応用した不活化ワクチンを使用していたが、このワクチンの効果は不十分であり毎年のように発生を繰り返していた。その後、豚コレラ生ワクチンが開発され使用されるようになり豚コレラの発症は激減した。ある発生農場では、ワクチンが接種されていた3豚房の肉豚は、豚コレラ症状を示すことなく健康な状態であったが、ワクチン未接種だった奥の3豚房では、全ての肉豚が動かなく寝ている状態であった。家畜保健衛生所の病性鑑定時には奥3豚房の肉豚では死亡あるいは全身チアノーゼの状態であった。

一般口演

1.旅客携帯品として海外から持ち込まれた豚肉加工品からのアフリカ豚コレラウイルス(ASFV)の分離について
農研機構  動物衛生研究部門  舛甚 賢太郎
舛甚賢太郎1)、山添麗子1)、亀山健一郎1)、藤澤希2,3)、小林芳史2)、岩田啓2,4)、
仙波裕信2)、山田学1)、遠藤明仁2)、國保健浩1)、柳澤成江2,5)、山川睦1)
1)農研機構 動物衛生研究部門 海外病拠点、2)農林水産省 動物検疫所精密検査部病理・理化学検査課、3)現農林水産省 動物検疫所精密検査部微生物検査課、4)現農林水産省 消費・安全局動物衛生課、5)現農林水産省 動物検疫所関西空港支所検疫第2課)
アフリカ豚コレラ(ASF)は、ASFウイルス(ASFV)によって引き起こされる豚及びイノシシの致死的な熱性感染症であり、現在世界的に最も恐れられている越境性動物疾病のひとつである。日本では未発生だが、昨年10月に国内の空港にて国際旅客の携帯品として収去された豚肉加工品からASFVの遺伝子が初めて検出され、以後も同様の事案が継続している。これまで旅客携帯品から直接ASFVを分離したという報告はないが、過去の発生例を鑑みると海外から不法に持ち込まれる豚の生肉や加工品によるウイルス持ち込みの危険性を強調してもし過ぎることはない。
そこで我々はASFの侵入阻止に資するため、動物検疫所にて収去したASFV遺伝子検査陽性の豚肉加工品からASFV分離を試み、これに成功したので報告する。

2.国内の豚から検出されたPCV2の遺伝学的変化
エス・エム・シー(株)  小池 郁子
世界各地で国境を越え様々な病気が広がっている中、日本国内でも豚流行性下痢ウイルス(PED)や豚コレラウイルス(CSF)の侵入が相次いで発生している。発生の都度侵入経路の調査やその対策についての検討などが行われている。一方で慢性疾病については、感染が当たり前となっており外部から新しく入ったとしても気が付かれないままとなっているケースがほとんどであると考える。しかし農場内外のバイオセキュリティを検討するうえで、慢性疾病をモニタリングすることもリスク評価の一つとなると考える。
我々は、慢性疾病であるPCV2の遺伝学的な変化を調査することで、国内の疾病の侵入およびその広がりについて確認したので報告する。

3.豚流行性下痢(PED)流行地域における非発生農場の侵入防止に向けたリスク評価に基づく防疫対策とモニタリング検査結果
南州農場(株)  高野 晃一
N農場は、PEDの平成25年シーズンに169農場が陽性となった鹿児島県に位置し、これまで発生を免れている。平成26年の農林水産省のPED疫学調査によると非発生農場の駐車場などにおける拭き取り検査の結果、PEDvがPCR陽性であった事が示された。農場入口まで従業員と来場者がウイルスを持ち込んでいる危険性がある事から「農場入場回数」と「他農場との交叉」でリスク評価と防疫対策を行った。リスクが高いと評価されたのは従業員・飼料車両・出荷車両だった。来場する業者は47社にも及んだ。鹿児島県で17農場が陽性となった平成27年シーズンの平成27年11月~平成28年3月まで月1回モニタリング検査を行い、採材日に訪れた計29業者と従業員等に対して拭き取り検査を行った。その結果全ての検体でPEDvがPCR陰性であり、N農場で行われた防疫対策が有効であると考えられた。

アフリカ豚コレラに関する早期公開論文(編集・出版前の最終版論文)をお知らせします。

現在の家畜衛生状況を考慮し、特別に早期公開いたします。(日本豚病研究会編集委員会)
日本豚病研究会ホームページ会報74号2019年08月(予定)に
アフリカ豚コレラに関する早期公開論文
原著論文:旅客携帯品として海外から持ち込まれた輸入禁止の豚肉加工品からのアフリカ豚コレラウイルス(ASFV)の分離

舛甚賢太郎、山添麗子、亀山健一郎、藤澤希、小林芳史、岩田啓、仙波裕信、山田学、遠藤明仁、國保健浩、柳澤成江、山川睦
を掲載いたしました。会報74号(予定)の欄をクリックしてください。

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第94回日本豚病研究会研究集会は終了いたしました。

第94回日本豚病研究会は令和元年(2019年)5月24日(金)文部科学省研究交流センター(つくば市)にて開催いたしました。会員他、多数の皆様のご参加に感謝申し上げます。

第94回日本豚病研究会研究集会

日本豚病研究会事務局(農研機構  動物衛生研究部門内)
Tel/Fax: 029-838-7745
e-mail: tonbyou@ml.affrc.go.jp

日本豚病研究会は春の研究集会を下記要領で開催しますのでご案内致します。

日 時: 令和元年5月24日(金) 13:00~17:00
場 所: 文部科学省研究交流センター(〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-5)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/kouryucenter/
参加方法:
事前登録は不要です。当日会場で受付してください。
参加費    会員;無料   非会員;1,500円

日 程
1. 定期総会 (13:00~13:30)

2.  第22回日本豚病研究会藤﨑優次郎賞受賞記念講演(13:40~14:20)
座長 下地 善弘[農研機構 動物衛生研究部門]

一般財団法人日本生物科学研究所      長井 伸也 先生
日生研株式会社

3. 特別講演(14:25~15:35)
座長 小渕 裕子[群馬県西部家畜保健衛生所]

野生イノシシの基礎生態
宇都宮大学 雑草と里山の科学教育研究センター 小寺 祐二 先生

[休 憩 15:35~15:50]

4.  野生イノシシと家畜疾病(15:50~16:15)
座長 山本 健久[農研機構 動物衛生研究部門]

野生イノシシにおける家畜疾病の全国調査
農研機構 動物衛生研究部門          大﨑 慎人 先生

5.豚コレラについて(16:15~16:55)
座長 山川 睦 [農研機構 動物衛生研究部門]

2018~2019年にわが国で発生した豚コレラの原因ウイルスの性状
農研機構 動物衛生研究部門          深井 克彦 先生

6. 閉 会(16:55~17:00)

講演要旨

野生イノシシの基礎生態

小寺祐二(宇都宮大学雑草と里山の科学教育研究センター)

イノシシ(Sus scrofa)といえば、一昔前までは西日本を中心に生息する野生動物であり、その肉は高い商品価値を持つことから、重要な狩猟獣でもあった。しかし、その様相は近年著しく変化している。関東、中国、北九州地方などでの分布域回復を皮切りに、現在の分布は東北、北陸地方にまで達している。また、その分布域では農作物被害や人身事故が発生し、社会的な問題となっている。さらに昨年9月には、野生イノシシでの豚コレラ発症が確認され、その感染拡大が懸念されている。その一方で、イノシシの生態学的特徴については、社会一般に正しく理解されているとは言えず、本種に関わる様々な対策の実施時に、不適切な手法が用いられる場合が散見される。そこで本講演ではイノシシの生態学的特徴について解説し、豚コレラ防疫に際して注意すべき事項などについて考察したい。

野生イノシシにおける家畜疾病の全国調査

大﨑慎人(農研機構・動物衛生研究部門)

人類の生活圏の拡大と交易活動の拡大に伴い各種感染症のリスクも増大する中、感染症の伝播リスクを考えるためには、環境を含めた監視を行うことが重要である。特に家畜の疾病は、野生環境に生息する感受性動物がレゼルボアとなることも多く、畜産物の流通がグローバル化する時代において、国家の疾病ステータスを評価する上で野生動物における家畜疾病の情報はこれまで以上に重視されてきている。イノシシは豚の疾病のほとんどに感受性を持つが、我が国の野生イノシシにおける疾病浸潤状況についてはこれまで全国的な調査は行われていなかった。本発表では我々が平成26年度から農林水産省事業で実施した野生イノシシの全国サーベイランス(旋毛虫症、オーエスキー病、PRRS、PED、豚丹毒、ブルセラ病)の内容について紹介したい。

2018~2019年にわが国で発生した豚コレラの原因ウイルスの性状

深井克彦(農研機構 動物衛生研究部門)

2018年9月9日にわが国では26年ぶりに豚コレラの発生が確認された。2019年3月15日現在で、11事例32農場2と畜場で発生が確認され、殺処分頭数は約49,000頭に及んでいる。また、228頭の野生イノシシにおいて豚コレラウイルスが検出されている。
本発生の原因ウイルスは、ゲノムの塩基配列解析により、東アジア諸国で流行している遺伝子型2.1d型であることが確認された。この遺伝子型のウイルスは国内で確認されたことがなく、原因ウイルスの海外からの侵入が示唆された。
原因ウイルスを用いた感染試験において、ウイルス接種豚では発熱や白血球減少が確認されたが、約2週間の試験期間中生残した。また、同居豚も感染し、接種豚と同様の臨床症状を示した。ウイルス遺伝子は、接種豚および同居豚の唾液、鼻汁および糞便から感染後最低2週間検出されるとともに、抗体は2週間以降に検出された。

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