第95回日本豚病研究会・2019年度日本豚病臨床研究会・ 令和元年度日本養豚開業獣医師協会 第10回合同集会のお知らせ

事務局:日本豚病臨床研究会事務局
(Meiji Seikaファルマ株式会社内)
Tel:03-3273-3436
Fax:03-3271-1460
E-mail:rumi.takamiya@meiji.com

日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会は、第10回合同集会を開催いたします。詳細につきまして、下記の通りご案内申し上げます。

日時: 2019年10月11日(金) 10:00~17:00(受付 9:15~)
場所: 明治ホールディングス株式会社 本社ビル 地下1階講堂
〒104-0031 東京都中央区京橋2丁目4番 16号
Tel:03-3273-3436

<お知らせ>
・ 合同集会終了後、懇親会を予定しております。奮ってご参加ください。
・ 集会への参加申し込みは不要です。当日直接会場までお越しください。
・ 懇親会のみ事前登録が必要となります。下記の「懇親会について」をご覧いただきお申し込みください。

日 程

開 会 (10:00~10:05)

統一テーマ「豚コレラ2018の既知と未知」         (10:05~15:45)

統一テーマ司会:末吉 益雄(宮崎大学)

1.趣旨説明                        (10:05~10:25)
宮崎大学 末吉 益雄[豚臨研]

座長:山田 学(農研機構 動物衛生研究部門)
2.豚コレラの疫学調査に係る中間取まとめ         (10:25~11:10)
農林水産省 消費・安全局 動物衛生課 室賀 紀彦[豚病研]

座長:石川 弘道((有)サミットベテリナリーサービス)
3.飼養衛生管理基準再点検および岐阜県の指導から学ぶバイオセキュリティ (11:10~11:40)
(一社)日本養豚開業獣医師協会  呉 克昌[JASV]

4.EUにおけるイノシシの豚コレラ対策                (11:40~12:10)
エクシュタイン・スワイン・サービス  宮下 マリ[JASV]

[休憩 12:10~14:00](日本豚病研究会 幹事会)

座長:武田 浩輝(アークベテリナリーサービス)
5.豚コレラ発生農場と地域の実情                 (14:00~14:40)
(有)あかばね動物クリニック  水上 佳大・伊藤 貢[豚臨研]

6.経験者が語る過去の豚コレラワクチンの効果について       (14:40~15:00)
長野県農業共済組合  中川 巳津英[豚臨研]

7.総合討論                           (15:00~15:45)

[休憩 15:45~15:55]

一般口演                             (15:55~16:55)
座長:矢原 芳博(日清丸紅飼料(株))

1.旅客携帯品として海外から持ち込まれた豚肉加工品からのアフリカ豚コレラウイルス(ASFV)の分離について
農研機構 動物衛生研究部門  舛甚 賢太郎[豚病研]         (15:55~16:15)

2.国内の豚から検出されたPCV2の遺伝学的変化             (16:15~16:35)
エス・エム・シー(株)  小池 郁子[JASV]

3.豚流行性下痢(PED)流行地域における非発生農場の侵入防止に向けたリスク評価に基づく防疫対策とモニタリング検査結果
南州農場(株)  高野 晃一[豚臨研] (16:35~16:55)

閉 会 (16:55~17:00)

懇親会について
日時: 2019年10月11日(金) 17:30~19:30
場所: アンジェリオン オ プラザ 東京
東京都中央区京橋3-7-1 相互館110タワー 11階
(合同集会会場のすぐ近くです。下図参照)
https://tokyo.anjelion.jp/
会費: 5,500円(会費は当日受付で申し受けます。)

懇親会参加人数把握のため、参加可能な方は、9月27日(金)までに、
以下の連絡先へメールにてご連絡ください。
なお、当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けいたします。
懇親会参加者連絡先:日本豚病臨床研究会事務局
E-mail:rumi.takamiya@meiji.com
※メールの件名は「三団体懇親会申込」にてお送りください。

講演要旨
統一テーマ「豚コレラ2018の既知と未知」

1.趣旨説明
宮崎大学  末吉 益雄
2018年に再発生した豚コレラについて分かったこと、分からないこと、今後の防疫のためには何を確認しなければならないのか?豚コレラの拡大防止、清浄化に資する機会としたい。分かったことは、流行ウイルス株は「Mongolian/2014」、「Chinese/2015」に近縁(一部変異)、その病原性は比較的弱く、初期の臨床診断は困難、扁桃の蛍光抗体法検査で陰性例がある、豚用ワクチンは100万ドーズ備蓄、ドイツではイノシシ用経口ワクチンの成功経験がある。分かっていないことは、豚とイノシシへの病原性(病態と免疫動態、特に感染2週以後)、現行飼養衛生管理基準の盲点、in vivoにおける現有ワクチン効果、国内での野生イノシシへの経口ワクチンの効果、豚への予防ワクチンのシミュレーション、ワクチンの増産計画/緊急輸入計画など、がある。

2.豚コレラの疫学調査に係る中間取りまとめ
農林水産省 消費・安全局 動物衛生課  室賀 紀彦
2018年9月、岐阜県岐阜市の養豚農家において、我が国で26年ぶりに豚コレラが発生した。その後、2019年7月31日までに、愛知県、三重県、福井県でも発生が確認されている。また、岐阜県及び愛知県北部地域を中心に6県では、野生イノシシについても感染が確認されている。
農林水産省では、豚コレラの発生直後に、科学的な分析・評価により感染経路の究明等を行うため、ウイルス学、疫学、野生動物等の専門家で構成される「拡大豚コレラ疫学調査チーム」を設置し、今般の発生及び感染拡大の要因についての情報の収集・分析を進めてきた。本講演では、その分析結果を取りまとめた「豚コレラの疫学調査に係る中間取りまとめ」について、概要を紹介する。

3. 飼養衛生管理基準再点検および岐阜県の指導から学ぶバイオセキュリティ
(一社)日本養豚開業獣医師協会  呉 克昌
2018年9月に岐阜県で26年ぶりに発生した豚コレラは、その後も続発しており、野生イノシシにおける感染地域も拡大している。この中で、(一社)日本養豚開業獣医師協会(JASV)は2019年2~3月に国からの要請を受け国・岐阜県・JASVの獣医師によるチームで岐阜県内の豚コレラ陰性農場の飼養衛生管理基準の再点検に同行し、衛生指導を行った。また、岐阜県からの要請を受けて、2019年8~9月にも陰性農場の衛生指導を行っている。この訪問の中で、特にリスクが高いと思われる農場バイオセキュリティの課題が明らかとなったので、報告したい。

4.EUにおけるイノシシの豚コレラ対策
エクシュタイン・スワイン・サービス  宮下 マリ
1990年にすべてのEU加盟国で豚への豚コレラワクチンの接種が中止された。しかし、その後、オランダ、ドイツ、スペイン等、養豚主要国で相次いで豚コレラ(CSF)が発生した。その主な原因として、野生イノシシでのCSF感染と常在化が示唆されたため、野生イノシシにおけるCSFの対策が必要とされた。複数の国や地域で経口弱毒生ワクチンの散布や狩猟の強化、イノシシのサーベイランスを実行し、その経験と教訓を踏まえ、現在、欧州委員会は専門家により作成された野生イノシシにおけるCSFの制御と清浄化に関するガイドラインを提供している。このガイドラインの内容及びイノシシでCSFの清浄化に成功した事例を紹介する。

5.豚コレラ発生農場と地域の実情
(有)あかばね動物クリニック  水上 佳大・伊藤 貢
2018年9月9日に岐阜県で豚コレラが確認されて以降、養豚場および野生イノシシでの発生は拡大している。2019年2月5日には愛知県に飛び火した。
豚コレラはもともと特徴的な臨床症状が乏しい疾病である。更に、今回の株は、病原性が低いため、農場内での類症診断が難しい場合も多い。
発生が確認された地域を中心に、農場防疫の意識は高まった。しかしながら、疑われる感染経路は多岐にわたる。制限区域の設定も長期に及んだため、地域の多くの農場が精神的にも経済的にも窮状に立たされた。再開に向けて、取り組みを行っている。

6.経験者が語る過去の豚コレラワクチンの効果について
長野県農業共済組合  中川 巳津英
約40年前の昭和55年埼玉県西部の入間、狭山に発生した豚コレラを回想してみると、古いことで記憶も定かでないが、豚コレラワクチンの有効性を思い起こす。豚コレラ生ワクチンが開発される前、クリスタルバイオレットを応用した不活化ワクチンを使用していたが、このワクチンの効果は不十分であり毎年のように発生を繰り返していた。その後、豚コレラ生ワクチンが開発され使用されるようになり豚コレラの発症は激減した。ある発生農場では、ワクチンが接種されていた3豚房の肉豚は、豚コレラ症状を示すことなく健康な状態であったが、ワクチン未接種だった奥の3豚房では、全ての肉豚が動かなく寝ている状態であった。家畜保健衛生所の病性鑑定時には奥3豚房の肉豚では死亡あるいは全身チアノーゼの状態であった。

一般口演

1.旅客携帯品として海外から持ち込まれた豚肉加工品からのアフリカ豚コレラウイルス(ASFV)の分離について
農研機構  動物衛生研究部門  舛甚 賢太郎
舛甚賢太郎1)、山添麗子1)、亀山健一郎1)、藤澤希2,3)、小林芳史2)、岩田啓2,4)、
仙波裕信2)、山田学1)、遠藤明仁2)、國保健浩1)、柳澤成江2,5)、山川睦1)
1)農研機構 動物衛生研究部門 海外病拠点、2)農林水産省 動物検疫所精密検査部病理・理化学検査課、3)現農林水産省 動物検疫所精密検査部微生物検査課、4)現農林水産省 消費・安全局動物衛生課、5)現農林水産省 動物検疫所関西空港支所検疫第2課)
アフリカ豚コレラ(ASF)は、ASFウイルス(ASFV)によって引き起こされる豚及びイノシシの致死的な熱性感染症であり、現在世界的に最も恐れられている越境性動物疾病のひとつである。日本では未発生だが、昨年10月に国内の空港にて国際旅客の携帯品として収去された豚肉加工品からASFVの遺伝子が初めて検出され、以後も同様の事案が継続している。これまで旅客携帯品から直接ASFVを分離したという報告はないが、過去の発生例を鑑みると海外から不法に持ち込まれる豚の生肉や加工品によるウイルス持ち込みの危険性を強調してもし過ぎることはない。
そこで我々はASFの侵入阻止に資するため、動物検疫所にて収去したASFV遺伝子検査陽性の豚肉加工品からASFV分離を試み、これに成功したので報告する。

2.国内の豚から検出されたPCV2の遺伝学的変化
エス・エム・シー(株)  小池 郁子
世界各地で国境を越え様々な病気が広がっている中、日本国内でも豚流行性下痢ウイルス(PED)や豚コレラウイルス(CSF)の侵入が相次いで発生している。発生の都度侵入経路の調査やその対策についての検討などが行われている。一方で慢性疾病については、感染が当たり前となっており外部から新しく入ったとしても気が付かれないままとなっているケースがほとんどであると考える。しかし農場内外のバイオセキュリティを検討するうえで、慢性疾病をモニタリングすることもリスク評価の一つとなると考える。
我々は、慢性疾病であるPCV2の遺伝学的な変化を調査することで、国内の疾病の侵入およびその広がりについて確認したので報告する。

3.豚流行性下痢(PED)流行地域における非発生農場の侵入防止に向けたリスク評価に基づく防疫対策とモニタリング検査結果
南州農場(株)  高野 晃一
N農場は、PEDの平成25年シーズンに169農場が陽性となった鹿児島県に位置し、これまで発生を免れている。平成26年の農林水産省のPED疫学調査によると非発生農場の駐車場などにおける拭き取り検査の結果、PEDvがPCR陽性であった事が示された。農場入口まで従業員と来場者がウイルスを持ち込んでいる危険性がある事から「農場入場回数」と「他農場との交叉」でリスク評価と防疫対策を行った。リスクが高いと評価されたのは従業員・飼料車両・出荷車両だった。来場する業者は47社にも及んだ。鹿児島県で17農場が陽性となった平成27年シーズンの平成27年11月~平成28年3月まで月1回モニタリング検査を行い、採材日に訪れた計29業者と従業員等に対して拭き取り検査を行った。その結果全ての検体でPEDvがPCR陰性であり、N農場で行われた防疫対策が有効であると考えられた。