日本豚病研究会 第107回研究集会開催のご案内

日本豚病研究会は、令和8年度定期総会および第107回研究集会を下記の要領で開催いたしますのでご案内致します

 

日 時: 令和85月22日(金) 13:00~17:00 
場 所: 文部科学省研究交流センター 
〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-5 
駐車場は敷地内北側にあります。 
https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/kouryucenter/
参加費: 会員無料、非会員は1,500円

【研究集会終了後、懇親会を予定しております】
時 間: 令和年5月2金)18:00~20:00 
場 所: Beer & Café Engi(文科省研究交流センターより徒歩15分程度)
305-0031 茨城県つくば市吾妻1丁目10−1 つくばセンタービル 1階 
会費:5,000 
参加登録:5月19日(火)までに下記のいずれかの方法にてお申し込みください。 

1.以下のリンク先から登録
https://forms.gle/6wxKYYeShHYD6Kfx7
2.お名前及びご所属をtonbyouken@gmail.com(事務局)に送信 

 

日 程 

1.開 会   令和8年度定期総会                (13:00~13:30)

[休 憩 13:30~13:40] 

2. 第26回藤﨑優次郞賞受賞記念講演               (13:40~14:30

 座長:小泉 舜史郎 [埼玉県中央家畜保健衛生所] 

豚熱およびアフリカ豚熱の迅速識別診断法の開発と社会実装を通じた地域防疫の強化 
國保健浩、西達也、深井克彦(農研機構 動物衛生研究部門 越境性家畜感染症研究領域) 

[休 憩 14:30~14:40 

3. 退任記念講演                        (14:40~15:00) 

座長:佐藤 真澄 [日生研株式会社] 

日本豚病研究会に思うこと 

津田 知幸(日本豚病研究会 会長) 

[休 憩 15:00~15:10 

4. 特別講演 PRRS制御の新時代:新たなウイルス系統分類とPRRS耐性ブタ開発の最前線                             (15:10~1650) 

座長:宮﨑 綾子 [農研機構動物衛生研究部門 

4-1 日本国内におけるPRRSウイルスの遺伝的遷移と系統分類の再定義:ClusterからLineage                            (15:10~15:50) 

平 修(日本生物科学研究所 

 座長:呉 克昌 [バリューファーム・コンサルティング] 

4-2 Advancing PRRS Control: The Biology, Application, and Impact of Disease-Resistant Pigs                            (15:50~16:50) 

Lucina Galina Pantoja (Pig Improvement Company)  

5. 閉会(16:50~1700) 

 

講演要旨 

●第26回藤﨑優次郎賞 受賞記念講演 

豚熱およびアフリカ豚熱の迅速識別診断法の開発と社会実装を通じた地域防疫の強化 

國保 健浩、西 達也、深井 克彦(農研機構 動物衛生研究部門 越境性家畜感染症研究領域) 

2018年、日本の養豚界は突如アフリカ豚熱と豚熱という二つの家畜伝染病の脅威に晒されることになった。両疾病は原因ウイルスこそ異なるものの症状や感染様式に共通点が多く判定には遺伝子検査が不可欠なため、長らく家畜防疫員により疾病ごとに異なる煩雑で時間を要する遺伝子検査が実施されてきた。我々はこの検査体系の抜本的見直しを図るため国内企業と共同で新たな検査法の開発に着手し、2021年11月、従来法と一線を画する核酸精製を必要としない迅速・高精度な識別検査法―ダイレクトマルチプレックスリアルタイムPCR法―を構築、上市した。今般、この検査系の開発と普及にかかる我々の取り組みを高くご評価頂き、栄誉ある藤崎優次郎賞にご推挙賜ったことに対してご関係の各位に深く感謝申し上げたい。 

●退任記念講演 

日本豚病研究会に思うこと 

津田 知幸(日本豚病研究会 会長) 

 昭和55年(1980年)に農林水産省家畜衛生試験場(家衛試)に入った翌年、研究第2部の藤﨑優次郎先生の下に配属となり、豚病研究会の運営にかかわるようになった。先生が立ち上げられた勉強会を前身とする本会は、しばしば鶏病研究会と比較されるが、養鶏会の要望を受けて行政指導によって成立した鶏病研究会とは生い立ちが異なる制約の少ない集まりである。発足当時から本会には全国の家畜保健衛生所やワクチン製造会社の皆さんが多数参加されており、豚病に関する研究に加えて、他分野で用いられている新技術など様々な話題を取り上げて熱心な議論が展開されていた。現在の豚病研究会の会員構成も、都道府県の家畜衛生担当者や民間の飼料、医薬品の製造販売関係者の割合が高いことからも、本会の活動基盤は変わっていないと思われる。豚病研究会の歴史を見ると発足当初は豚コレラやオーエスキー病などの話題があったものの、国内的には急性伝染病の話題は少なかった。しかし、この四半世紀で状況は大きく変化し、FMDに始まりPRRSやPCV2、ASFに豚熱といった様々な病気が国内外を問わず大きな問題となっている。豚病研究会でこうした病気を話題として取り上げるには、単に学術的な部分のみならず、社会経済的な側面も踏まえた行政的対応や防疫手法等も議論に加え、会員の皆さんの業務にも資するような運営に心がけてきた。本講演ではこれまでの経緯とともに私の思いを伝えたい。 

 

●特別講演 PRRS制御の新時代:新たなウイルス系統分類とPRRS耐性ブタ開発の最前線 

日本国内におけるPRRSウイルスの遺伝的遷移と系統分類の再定義:ClusterからLineage 

平 修(日本生物科学研究所) 

PRRSは経済損失が大きく、制御には飼養衛生管理・ワクチン介入と流行株の遺伝的同定が不可欠である。本講演ではPRRSV-2 ORF5に基づく分類手法の変遷(RFLP、国内Cluster、国際Lineage)を概説し、データ拡張とMLVの系統多様化に伴うトポロジー不安定性からCluster単独運用の限界を整理する。続いてWebツールによる分類(デモ)と標準化枠組みを紹介する。さらに19932023年の疫学的変遷、Lineage 1台頭・地域差、NADC34-like株の検出を再解釈し、WGS普及と組換えを踏まえた今後の監視体制と分類更新を論じる。 

 

Advancing PRRS Control: The Biology, Application, and Impact of Disease-Resistant Pigs 

Lucina Galina Pantoja (Pig Improvement Company) 

 Over the past decades, multiple host receptors have been proposed as essential for infection with Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus (PRRSV). More recent evidence has converged on a single indispensable receptor: CD163. Expression of CD163 confers susceptibility to PRRSV, and its introduction into non-permissive cell types renders them susceptible to infection. Conversely, gene-editing and knock-out studies have demonstrated that removal of CD163 in monocytes and macrophages—or specifically deletion of its scavenger receptor cysteine-rich domain 5 (SRCR5)—prevents viral genome release, thereby conferring resistance to PRRSV in vivo. 

 These findings have enabled the development of PRRSV-resistant pigs through precise targeting of the CD163 receptor using CRISPR-Cas9 technology. The generation of a founder population carrying a targeted deletion in exon 7 (CD163∆E7) is described. Resulting genotypes include homozygous pigs lacking domain 5 (CD163∆E7/∆E7), expected to be resistant to PRRSV, and heterozygous (CD163∆E7/+) or wild-type (CD163+/+) pigs, which remain susceptible. Stable Mendelian inheritance of this trait across generations has been demonstrated. 

 Comprehensive performance data comparing CD163 genotypes from birth through maturity are presented, including growth, reproductive performance, carcass characteristics, and meat quality. Resistance is evaluated against diverse PRRSV strains, including type 1 and type 2 field isolates and vaccine-derived viruses.  

 The broader implications of PRRSV-resistant pigs are considered, including potential reductions in antimicrobial use, decreased mortality, mitigation of the economic burden of PRRS, and improvements in environmental sustainability. Global consumer perspectives on gene-editing technologies in food animals are also discussed. 

 Collectively, these findings demonstrate that targeted gene editing of CD163 provides a robust and scalable approach to controlling PRRSV, offering a transformative opportunity to improve animal health, welfare, and production efficiency without compromising product quality. 

(和訳:過去数十年にわたり、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の感染に不可欠な宿主受容体として、複数の候補が提唱されてきた。しかし、近年の知見は、CD163という単一の不可欠な受容体に焦点が絞られている。CD163の発現はPRRSVに対する感受性を与え、本来は非感受性である細胞種にCD163を導入すると、それらの細胞も感受性を示すようになる。逆に、遺伝子編集およびノックアウト研究により、単球やマクロファージにおけるCD163の除去、あるいは具体的にはそのスカベンジャー受容体システインリッチドメイン5(SRCR5)の欠失が、ウイルスゲノムの放出を阻止し、それによって生体内でのPRRSVに対する抵抗性を付与することが実証されている。 

これらの知見により、CRISPR-Cas9技術を用いてCD163受容体を正確に標的とすることで、PRRSV耐性豚の開発が可能となった。本稿では、エクソン7の標的欠失(CD163∆E7)を有する原種群の作出について述べる。その結果得られた遺伝子型には、ドメイン5を欠くホモ接合体(CD163∆E7/∆E7)—PRRSVに対する抵抗性が期待される—、およびヘテロ接合体(CD163∆E7/+)または野生型(CD163+/+)のブタが含まれ、後者は依然としてPRRSVに対する感受性を維持している。この形質の世代を超えた安定したメンデル的遺伝が実証された。 

出生から成熟期に至るまでのCD163遺伝子型を比較した包括的な生産成績データが提示されており、これには成長、繁殖成績、枝肉特性、および食肉品質が含まれる。PRRSV耐性は、1型および2型の野外分離株やワクチン由来ウイルスを含む多様なPRRSV株に対して評価されている。 

PRRSV耐性豚のより広範な意義についても考察されており、これには抗菌薬使用量の削減、死亡率の低下、PRRSによる経済的負担の軽減、および環境持続可能性の向上が含まれる。また、食用動物における遺伝子編集技術に対する世界的な消費者の見解についても論じられている。 

総じて、これらの知見は、CD163の標的遺伝子編集がPRRSVを制御するための強力かつ実用的なアプローチであることを示しており、製品の品質を損なうことなく、動物の健康、福祉、および生産効率を向上させる画期的な機会を提供するものである。