第71回日本豚病研究会研究集会

第71回日本豚病研究会研究集会のお知らせ

日本豚病研究会事務局
(動物衛生研究所内)
tel./fax. : 029-838-7745

陽春の候,会員の皆様には益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて,春の研究集会を下記の要領で開催しますのでご案内いたします。

日 時: 平成19年5月21日(月) 13:00~17:00
場 所: 研究交流センター
 (つくば市竹園2丁目20-5)
 [交通案内 (研究交流センター)
  ※交流センターの建物の北側に駐車場があります。]
 tel. 029-851-1331
1.定期総会
2.演 題
(座長)小林秀樹

養豚場におけるサルモネラ汚染状況
動物衛生研究所  木嶋眞人
 豚のサルモネラ感染症は、豚の生産性を阻害するだけでなく、人畜共通感染症として公衆衛生上も重要な疾病である。本症は、1)敗血症型、2)下痢症型、3)無症状型、の3つに大別されるが、無症状型であっても公衆衛生上の重要性は、敗血症型や下痢症型と同様である。そのためデンマークをはじめとして、EU各国では農場のサルモネラ低減化を目指した息の長い取り組みがなされている。しかしながら、わが国では、養豚場の汚染実態さえ明らかにされていないことから、以下の調査を実施した。
 (1) 市販のELISAキットを用いて、1999年から2002年において、27カ所の養豚場で飼育されている821頭の豚の血清を採取して検査した結果、127頭(15.5%)が抗体陽性であり、24農場(88.9%)で飼育されている豚の1頭以上が抗体を保有していた。また、10頭の子豚について、分娩1週後から31週後の間に血清を採取して抗体産生状況を調べた。分娩後1週目に採取した血清中には移行抗体が存在していたが、3週目には消失した。分娩後10週目から15週目頃には感染抗体が徐々に上昇し、27週目には殆どの豚が抗体陽性となった。
 (2) 2003年から2005年にかけて、5,393頭の豚の糞便を培養した結果、169頭から172株のサルモネラを分離した。分離株について特徴的であったのは、型別不能なO4,12:d,-が50株(29.1%)と最も多数を占めていたことである。  以上の成績から、わが国における養豚場のサルモネラ汚染は、EUよりも軽微であると考えられたが、今後更に抗体保有率と排菌率の関係等の基礎的調査を継続する必要があると思われる。

食肉処理場と農場において摘発されている豚サルモネラ症
群馬県中部家畜保健衛生所  高橋泰幸
 食肉処理場(と畜場)において、Salmonella Choleraesuis (SC)による豚サルモネラ症の摘発件数が激増。農場では出荷した豚に臨床症状は認められていない。と畜場で分離された14農場25株と病性鑑定により分離された13農場18株の性状を比較したところ、全ての株が薬剤感受性試験でOTC、SM、SDMXに耐性を示し、50kbの血清型特異病原性プラスミドを保有。薬剤感受性、プラスミドプロファイルおよびXbaⅠとBlnⅠを用いたPFGEのRFLPはほぼ同一で、と畜場由来株と発生農場由来株に違いは認められなかった。と畜場でSCが分離されたA農場133検体と、病性鑑定によりSCが分離された管内4農場203検体の抗体検査をELISA法で実施したところ、A農場では180日齢のみ、4農場ではSCの分離日齢である60~120日齢を中心に抗体陽性豚が認められ、農場における臨床症状発現の有無は感染時期の違いによるものと示唆された。食肉衛生検査所との連携の強化と農場でのSC浸潤状況と感染時期を総合的に判断し、状況に応じた農場の衛生対策を模索している。

健康豚ふん便からのサルモネラの分離と薬剤感受性
麻布大学 獣医学部  福安嗣昭・二川慶子
 1998~99年に2,980頭及び2004~05年に3,791頭の豚ふん便からサルモネラを67株及び126株を分離し、血清型、薬剤感受性、SPV及びDT104について検討した。’98年と’04年の農場別及び個体別の分離率は、いずれとも’04年の方が若干高率であった。分離菌の血清型は18種類で、Typhimuriumが27.5%と最も高率で、Anatum、Infantisの順であった。一方、16薬剤の単一又は複数に対し11種類の血清型菌が耐性で、それらの耐性率はTC系を除き04年の方が有意に高率であった。Typhimurium 53菌株(10農場)のうち27菌株(6農場)がDT104であり、49菌株がSPVを保有した。

(座長)鮫島俊哉

肥育農場で発生した豚サルモネラ症の衛生対策
青森県十和田家畜保健衛生所  児玉能法・二唐 崇
 平成16年9月、豚肥育農場でSalmonella Typhimurium(以下ST)による下痢症発生。発病豚は早期隔離・治療。全豚房のサルモネラ検査を実施し、陰性群は臨床的に健康であれば出荷。陽性群は個体毎に隔離し、陰性になるまで抗生剤投与と検査を反復。オールアウト後、豚舎消毒し次ロットを導入。定期検査を実施し、再度ST保菌豚を確認。初発群と次ロットの分離STの疫学マーカーによる型別が一致。消毒後の豚舎環境におけるST残存を示唆。消毒方法変更、空舎期間延長、生菌剤・有機酸投与及び導入頭数縮少した結果、ST清浄化達成。

一貫生産農場におけるサルモネラ・ティフィミリウムの清浄化事例報告
(有)バリューファーム・コンサルティング  呉 克昌
 筆者は2000年と2005年に、それまで発生経験の無かった二つの大規模農場でサルモネラ・ティフィミリウム(ST)による疾病発生を経験し、清浄化を試み成功したので、その事例を報告する。清浄化のための重要管理点はオールイン・オールアウト飼育と飼育設備の洗浄・消毒の徹底、人や物の出入りの厳重なコントロールだったが、清浄化達成までにはそれぞれ11ヶ月と14ヶ月を要した。その過程でいくつかの失敗も経験したので、具体的な対策を説明するとともに、成功と失敗のポイントを明らかにする。また、ST清浄化対策により肥育成績も大きく改善されたので報告する。

3.APVS2007(中国・武漢)の報告
               志賀 明・石川弘道