第70回日本豚病研究会研究集会の概要
日 時: 平成18年10月23日(月) 13:00~17:00
場 所: 研究交流センター
(つくば市竹園2丁目20-5) [交通案内 (研究交流センター)]
tel. 029-851-1331
演 題:
(座長)小林秀樹
豚のレプトスピラ症の現状と対策
菊池直哉 (酪農学園大学獣医学部)
レプトスピラ症は病原性レプトスピラの感染により、発熱、出血、黄疸、血色素尿を主徴とする人獣共通感染症である。多くの哺乳動物に感染し、その宿主域は広い。病原性レプトスピラはネズミなどの保菌動物の腎臓に長期にわたって保菌され、尿中に排菌される。尿で汚染された水や土壌などから経皮的あるいは経口的に感染する。
豚のレプトスピラ症は、不顕性感染にとどまることが多く、発症することは少ないので認知されることが少ない。しかし、妊娠豚が感染した場合は流死産を起こし、経済的損出が大きい。本講演では本症の現状とその対策について述べる。
(座長) 志村亀夫
国内の養豚場におけるIsospora suisの浸潤状況
斉藤康秀 (麻布大学獣医学部寄生虫学研究室)
Isospora suisは単独感染でも激しい下痢を引き起こす事および感染の中心が哺乳豚にあることから感染が起これば、豚の生育に大きな影響を与えることが考えられる。しかしながら、本原虫に十分な注意が払われているとは言い難い現状に有る。今回は、本原虫の浸潤状況を知るために行った糞便検査の結果および本原虫一般について触れる。
(座長) 志賀 明
九州における最近の養豚事情
岡田宗典 (全国農業協同組合連合会福岡畜産生産事業所)
九州地方は国内でも有数の豚の産地であり、豚の飼養頭数および飼養戸数はそれぞれ全国の約3割を占めている。一方で1戸あたりの飼養頭数は必ずしも多いとはいえず飼養母豚数が1000頭を超える大規模養豚場が存在する一方で母豚100頭前後の家族経営による小規模な養豚場も多く存在することを示している。
暑熱対策が必要な気候条件やPRRSに関連したサルモネラ症、グレーサー病、多発性漿膜炎、溶レン菌症の発生あるいは近年の下痢を伴う浮腫病の発生は生産性の低下につながっており、これらの感染症は離乳後から70日齢で発生することから特に子豚の事故率が高く(10~30%)なる傾向が認められる。特に小規模な養豚場では正確な統計はないものの演者の印象では1母豚あたり17頭前後の年間出荷頭数と考えており、生産性の低さに加え、大消費地に遠いという地理的条件による販売面のデメリットもあり経営的にも不安定な状況である。
生産性の向上のために母豚規模100頭前後を対象にしたスリー・セブンあるいはツー・テンと呼ばれるグループ管理システムそして大規模養豚場を対象にしたソーティングシステムが導入されつつあり、今回これらの生産方式の試みについても紹介したい。
(座長) 津田知幸
豚コレラ撲滅対策の10年
小倉弘明 (消費・安全局動物衛生課)
平成8年度、5年間の計画で豚コレラ撲滅対策を開始。対策は、清浄性を監視しつつ、ワクチン接種徹底、都道府県ごとの接種中止と進められたが、接種継続を求める強い要望があり、平成12年10月、ワクチンを原則中止、輸入規制強化を行ったが、知事の許可の下での限定的なワクチン接種は可能とした。その後、接種農場も漸減、平成18年3月末にワクチン接種の全面中止を前提とした防疫指針を公表し、予防的なワクチンは全面中止とした。撲滅対策の10年は、永年の家畜衛生関係者の取組みの成果を結実させるものとなる一方で、養豚経営が専業化、多様化する中、関係者のコンセンサス作りが家畜衛生の推進上いかに重要かを再認識する10年ともなった。
*研究集会終了後に懇親会を予定しています。当日受付までお申し出下さい。