平成17年度日本豚病研究会総会
及び 第67回研究集会の概要
日 時:平成17年5月20日(金) 13:00~17:00
場 所:筑波農林ホール(つくば市農林研究団地内)
定期総会
日本豚病研究会第13回藤崎優次郎賞 授賞式
受賞記念講演
演題
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鹿児島県で確認された豚コレラ疑似患畜事例
北野良夫1)、轟木淳一2)、山下静馬3)
(1)鹿児島県農政部畜産課、2)肝属家畜保健衛生所、3)北薩家畜保健衛生所)
2004年3月~9月、5事例の「豚コレラ疑似患畜」が確認され、約3,800頭が法に基づき殺処分された。
発生原因は、分離ウイルスの性状等から未承認豚コレラワクチンの接種に起因するものとされた。一連の発生事例では、動物用医薬品の適正な使用、まん延防止対策、地域ぐるみの自衛防疫の推進、適切な飼養衛生管理の実施などの課題がみられた。また、豚コレラワクチンの使用による抗体陽性豚の存在は、清浄性確認検査など、防疫上大きな障害となった。
そのため、今後の家畜防疫の推進に資するため、専門家からなる「豚コレラ疑似患畜確認事例検討チーム」を設置し、一連の発生事例について検証を行い、2005年3月、その報告書がとりまとめられた。
インフルエンザウイルスの生態
喜田 宏(北海道大学大学院獣医学研究科)
家禽、ブタ、ウマそしてヒトの新型インフルエンザは、何れもインフルエンザAウイルス感染症である。家禽、家畜、野生鳥獣とヒトのインフルエンザAウイルスの遺伝子は、そのすべてがカモの腸内ウイルスに由来する。すなわち、インフルエンザは典型的な人獣共通感染症である。したがって、当面、インフルエンザを根絶することはできない。家禽とブタの感染を早期に摘発し、的確に対応することにより、被害を最小限にくい止めるとともに、ヒトの健康と食の安全を守ることがインフルエンザ対策の基本である。ヒトの新型インフルエンザもまた、グローバルサーベイランスを軸とする先回り戦略によって、はじめて克服することができる。
種雌豚の深部腟内電気抵抗性(VER)を指標とした繁殖機能の判定と利用技術
伊東正吾(麻布大学獣医学部内科学第一研究室)
豚は牛や馬と異なり、卵巣所見を掌握して繁殖機能を判定する臨床的機会は少ない。市販の簡易な機器を利用し、生産現場で利用できる技術としてVER測定による卵巣機能を診断する方法を検討し、発情周期の動態、授精適期や妊娠診断における有用性、ならびに発情異常の鑑定への応用について若干の成果を得ている。
(1) 発情周期におけるVERは、周排卵期では一時的に低下し、発情開始の前日または2日前に最低値を示すことを認めた。(2) 授精時期の判定では、Day2における受胎率(83.3%)が対照区(85.7%)とほぼ同等であり、他の区(77.8%、 71.4%)は低下する傾向であった。(3) VER値を指標とした妊娠鑑定は、妊娠日齢19日で有意に判定できることを認めた。(4) 鈍性発情もしくは発情徴候不明瞭豚において、VERの測定により卵巣機能を推定できた。また、2頭の母豚で授精時期を判断し授精したところ、2頭とも分娩に至り、産子数は10頭と9頭であった。