日 時:平成16年5月21日(金) 13:00~17:00
場 所:筑波農林ホール(つくば市農林研究団地内)
定期総会
日本豚病研究会第12回藤崎優次郎賞 授賞式
受賞記念講演
演題
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オーエスキー病の清浄化に関する海外事例の紹介
村上洋介(動物衛生研究所 海外病研究部)
わが国におけるオーエスキー病の対策は、1981年の侵入当初は摘発淘汰を基本とし、全国的な蔓延の兆しを受けた1991年以降は、新防疫対策要領に基づき清浄化という明確な目標を持った施策に仕切直しされて現在に至っている。しかし、北米や欧州の養豚国が次々に清浄化を達成しつつあるのに対して、初発から四半世紀が過ぎようとしているにもかかわらず、わが国では本病の清浄化の目途はみえず、ワクチン接種や侵入防止等の防疫に係る累積経費は巨額に及んでいる。本病の清浄化に必要な技術論はすでに確立されていることから、海外における清浄化事例を紹介し本病の清浄化推進のための話題提供とする。
オーエスキー病対策の今後
小倉弘明(農林水産省消費・安全局衛生管理課)
本病については、平成3年度、発生状況等に応じて地域を区分し、清浄化を推進する防疫対策要領が制定され、以来、多額の補助金を投入しつつ防疫対策が続けられている。本病は、主要養豚地帯に浸潤しているものの、浸潤の拡大はみられず、また、発生も少数に止まっている。一方で、当初の目的である清浄化への進展の兆しはなく、補助金の面からは、その事業効果が問われている。養豚分野では、豚コレラ撲滅事業を経験し、生産者のコンセンサスつくりの難しさを経験した。豚コレラより技術的に難度が高く、関係者一体となった取組みが必要といわれる本病の清浄化について、今後どのような方向に進むべきか、議論を尽くすべき時がきている。
デンマークにおける成長促進剤としての抗菌性飼料添加物中止の影響について
小林秀樹(動物衛生研究所 臨床疫学研究室)
わが国においても一部の養豚家が無薬あるいはそれに近い条件で養豚を試みていると聞く。国をあげて無薬(無抗菌剤)養豚を目指しているのが北欧の国々である。スウェーデンやフィンランドなどは1980年代後半から抗菌性成長促進物質(AGP)を中止し、抗菌剤は治療目的としてのみ使用している。デンマークはそれに遅れること10年、1998年から鶏の、1999年からは豚のAGPを中止した。今年で6年目をむかえる。デンマークでの特徴は、AGPを中止するにあたり、その影響を莫大なデータをもって多角的に解析したことである。北欧と日本とは自然環境、養豚環境、国家の規模、畜産業に対する国民意識そしてEUの動物福祉法の遵守など相違点が多い。もし日本でも追従するなら前もって種々の検証が必要であろう。しかしながら、デンマークでの試みから得られた知見はわが国の養豚の将来に参考となるものもあると感じ紹介することにした。
第1回アジア養豚獣医学会参加報告
石川 弘道(サミット動物病院)
1990年代後半から、口蹄疫、ニパウイルス感染症など、アジア地域を震源とする重要な家畜の伝染病が大きな問題となってきている。最近ではトリインフルエンザが猛威をふるい、深刻な状態が続いている。このように畜産経営を脅かす疾病は国境を関係なく広がっており、地域の伝染性疾病をコントロールするためには、アジアという地域での情報交換が重要との認識の下、アジア養豚獣医学会(APVS)が設立された。第1回APVSは2003年9月21日から23日の3日間、韓国のソウルで開催された。参加国は日本、韓国、タイ、フィリピン、中国、ベトナム、台湾、マレーシア、シンガポールのアジア諸国以外に、アメリカやフランス、ベルギー、ロシアなどヨーロッパ諸国からの参加も得られ、盛大な学会となった。主な発表演題はサーコウイルス、PRRS、PRDC、豚コレラ、口蹄疫、ニパウイルスなど多岐にわたった。なお本学会は隔年で開催されることが決まっており、次回は2005年2月にフィリピンでの開催が、2007年には中国での開催がそれぞれ決定している。