第91回日本豚病研究会・2017年度日本豚病臨床研究会・
平成29年度日本養豚開業獣医師協会
第8回合同集会のお知らせ
事務局:一般社団法人日本養豚開業獣医師協会(JASV)
Tel:046-290-5630
Fax:046-290-5631
E-mail:pig.jasv@r7.dion.ne.jp
日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、日本養豚開業獣医師協会は、第8回合同集会を開催することとなりました。下記の通り、ご案内申し上げます。
記
日時:2017年10月13日(金) 10:00~17:00(受付 9:15~)
場所:明治ホールディングス株式会社 本社ビル 地下1階講堂
〒104-0031 東京都中央区京橋2丁目4番 16号
Tel:03-3273-3436
日 程
開 会 (10:00~10:10)
メインテーマ「日本養豚と抗菌剤使用」 (10:10~12:10)
座長:呉 克昌(㈱バリューファーム・コンサルティング)
1. 豚における薬剤耐性菌の動向-国内及び海外における取り組み- (10:10~10:40)
農林水産省 動物医薬品検査所 木島まゆみ[豚病研]
2. 養豚場における抗菌剤およびワクチンの使用実態調査 (10:40~11:10)
㈲あかばね動物クリニック 伊藤 貢[JASV]
3. 児湯地域養豚場4件における口蹄疫発生前後の抗生剤使用量調査 (11:10~11:40)
NOSAIみやざき 吉原啓介[豚臨研]
4. 総合討論 (11:40~12:10)
[昼休み(豚病研究会 幹事会)12:10~14:00]
一般口演 (14:00~16:15)
座長:川嶌健司(農研機構 動物衛生研究部門)
1. PEDウイルスに対する消毒効果に関する研究 (14:00~14:20)
農研機構 動物衛生研究部門 鈴木 亨[豚病研]
2. 茨城県における豚由来病原性大腸菌の薬剤耐性獲得状況:主要血清型O116の解析
(14:20~14:40)
茨城県県北家畜保健衛生所 藤井勇紀[豚病研]
3. 肥育豚の難治性出血性下痢 (14:40~15:00)
㈱沖縄県食肉センター 大城 守[豚臨研]
[休憩 15:00~15:15]
座長:矢原芳博(日清丸紅飼料㈱)
4. 肥育期のAPPの発生要因を抗体検査から読み解けるか (15:15~15:35)
フォーピッグ那須 福山 聡[豚臨研]
5. 第2回OIE・FAO主催アジア豚病ワークショップ参加報告 (15:35~15:55)
㈱バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌[JASV]
6. 肥育農場におけるPRRSの清浄化と農場防疫について (15:55~16:15)
㈲サミットベテリナリーサービス 渡部佑悟[JASV]
閉 会 (16:15~16:30)
<お知らせ>
・ 合同集会当日はこの抄録をご持参いただきますようお願いいたします。
・ 合同集会終了後、懇親会を予定しております。ふるってご参加ください。
・ 集会への参加申し込みは不要です。当日直接会場までお越しください。懇親会のみ事前登録が必要となりますので、下記に従ってお申し込みをお願い申し上げます。
<懇親会について>
日時: 2017年10月13日(金) 17:30~19:30
場所: アンジェリオン オ プラザ 東京
東京都中央区京橋3-7-1 相互館110タワー 11階
(合同集会会場のすぐ近くです。)
http://tokyo.anjelion.jp/
会費: 5,500円(会費は当日受付で申し受けます。)
懇親会参加人数把握のため、参加可能な方は、9月29日(金)までに、下記の連絡
先にメールにてご連絡ください。
なお、当日でも人数に余裕があれば、参加をお受けします。
懇親会参加者連絡先:一般社団法人日本養豚開業獣医師協会(JASV)事務局
E-mail:pig.jasv@r7.dion.ne.jp
講演要旨
メインテーマ「日本養豚と抗菌剤使用」
1.豚における薬剤耐性菌の動向 -国内及び海外における取り組み-
農林水産省 動物医薬品検査所 木島まゆみ
2016年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が取りまとめられ、動物分野では、2020年に向けて大腸菌のテトラサイクリンの耐性率を33%以下に低下させることの他、いくつかの成果指標が設定された。現在、これらの目標に向けた取組が進められているが、国内の豚由来細菌における耐性率の推移とともに、諸外国の薬剤耐性対策について、豚肉の輸出国であるデンマークにおける取組みを中心に紹介する。また、豚の細菌性下痢症の治療薬であり、飼料添加物としても指定されているコリスチンについて、今年1月に食品安全委員会による食品健康影響評価が「中等度」とされたことを受けて、農林水産省で実施を予定しているリスク管理措置について紹介する。
2. 養豚場における抗菌剤およびワクチンの使用実態調査
㈲あかばね動物クリニック 伊藤 貢
2016年G7伊勢志摩サミットにおいて薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが策定され、今後この実現に向けた取り組みを進めていかなければならない。AMRの問題は地球規模での対応が必要であり、人、動物、環境を含めたワンヘルスの考えが重要である。農林水産省が公表した平成27年動物用医薬品医薬部外品及び医療機器製造販売高年報によると、抗生物質、合成抗菌剤の原末換算量は計784t、この内豚での使用が503tであり、使用量のシェアが64%に及ぶことが分かる。一般社団法人日本養豚開業獣医師協会(JASV)では設立当初から抗菌剤の適正使用を進めてきた。今回、指示書データを基に農場で使用している抗菌剤及びワクチンについて調査したので報告する。
3. 児湯地域養豚場4軒における口蹄疫発生前後の抗生剤使用量調査
NOSAIみやざき 吉原啓介
児湯地域における養豚農家は2010年4月の口蹄疫後、再開するにあたり豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)陰性の豚を導入するというルールを地域独自に策定し一部の農家を除きPRRS陰性の地域となった。今回、児湯地域4軒の農場において抗生剤の使用量という観点からPRRSフリーの効果を検証してみたところ、発生前と比較して使用量が増加した結果となった。各農場担当獣医師より抗生剤の使用量が増加した要因について聞き取り調査を行ったところ豚サーコウイルス2型(PCV2)をはじめ、浮腫病、豚胸膜肺炎(APP)等の感染症が判明した。本調査ではPRRSの陰性維持だけではなく、他疾病コントロールの重要性が抗生剤の使用量軽減につながるものと考えられた。
一般口演
1. PEDウイルスに対する消毒効果に関する研究
農研機構 動物衛生研究部門 鈴木 亨、大橋誠一
2013年10月から現在に至るまで養豚産業に深刻な被害をもたらしたPEDウイルスであるが、ここまで被害が拡大した理由の一つに、本ウイルスの物理化学的性状に関して不明な点が多かったことが挙げられる。そこで、本研究ではPEDウイルスの物理化学的性状に関する知見を集約するため、実験室内において、PEDウイルスに対する消毒効果の検証を含めた各種不活化試験を実施した。その結果、消毒薬は定められた有効指示濃度に従って適正に用いることが改めて明らかとなった。さらに、消毒薬の有効性を高めるには、初めに有機物をできるだけ除去し、消毒も一度だけではなく、繰り返し実施することが重要であることが明らかとなった。本研究を通じて得られたデータは今後の PED 防疫対策あるいはマニュアルの見直しに積極的に活用していただきたい。
2. 茨城県における豚由来病原性大腸菌の薬剤耐性獲得状況:主要血清型O116の解析
茨城県県北家畜保健衛生所 藤井勇紀
平成18~26年度に茨城県で分離された豚由来病原性大腸菌108株の比較解析を実施した。主なO群血清型はO116 (34.3%)、O139 (11.3%)、O149(9.3%)であった。O116の平均耐性薬剤数は23薬剤中14.9剤で、フルオロキノロン(FQ)系抗菌剤に対しては全株が耐性を示した。パルスフィールドゲル電気泳動解析の結果、O116 の多くは疫学的に近縁ではなく、またO116による豚大腸菌症発生農場における聞き取り調査の結果、FQ系抗菌剤の使用歴との関係は認められなかった。O116は家畜生産の脅威となり得る多剤耐性を示すことから、抗菌剤の慎重使用と衛生管理の徹底に加え、発生農場における疫学調査等も併せて実施する必要がある。
3. 肥育豚の難治性出血性下痢
㈱沖縄県食肉センター 大城 守
当社関連の預託農場では長年肥育期における難治性出血性下痢に悩まされていた。臨床所見ならびに検査成績に基づき、①豚舎消毒の徹底、②使用薬剤の変更、③生菌剤添加、④飼養環境の改善、⑤クランブルからマッシュ飼料への切替、⑥衛生プログラム変更、などを試みたが改善はみられなかった。2017年1月、給餌口の管理不備に着目し、マシンガンフィーダー「不断給餌法」から「時間制限給餌法」に変更したところ、給餌口の残餌状況の改善に伴い短期間のうちに下痢及び出血性下痢が大幅に減少し、豚の活力が向上した。本例の主たる原因は給餌管理不備に起因する消化管粘膜上皮バリア機能低下の可能性が考えられ、適正な飼養管理により易感染状態にしないことの重要性を再認識した。
4. 肥育期のAPPの発生要因を抗体検査から読み解けるか
フォーピッグ那須 福山 聡
体重30㎏以上の肥育期での肺炎による死亡事故は養豚現場で最もよく見られる症例である。肺炎による死亡事故の原因はActinobacillus pleuropneumoniae (APP)によるものが多い。筆者の経験ではAPPの発生要因は必ずしも豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)や季節的要因だけではないように感じる。またAPPに対してワクチンや感受性のある抗生剤を継続的に使用しても顕著な効果が出ないことが多い。今回、ある農場において豚呼吸器病症候群(PRDC)に対する検査を毎月実施することによってAPPの発生要因の糸口がつかめないか探求したのでその途中結果を報告する。
5. 第2回OIE・FAO主催アジア豚病ワークショップ参加報告
㈱バリューファーム・コンサルティング 呉 克昌
2017年6月27日から3日間、北京で開催された第2回アジア豚病ワークショップに一般社団法人日本養豚開業獣医師協会(JASV)を代表して外部スピーカーとして参加した。国際獣疫事務所(OIE)は動物衛生向上を目的とした政府間機関だが、今回のワークショップには日本の動物検疫所と農水省動物衛生課からの2名を含む15カ国21名が参加し、その他OIE・国際連合食糧農業機関(FAO)関係者、主催国中国関係者、外部スピーカーなど合計約50名が参加した。その目的はアジア地域の豚病及び各国対応方法の情報交換を通じ、今後の越境性悪性伝染病や新興病発生時の対応に備えることだったが、アフリカ豚コレラのアジア地域への侵入リスクが非常に増大しており、発生時を想定した危機管理と対応方法の演習も実施された。それらの概要と外部スピーカーとしての発表内容、そしてワークショップ参加で感じた意義などを報告する。
6. 肥育農場におけるPRRSの清浄化と農場防疫について
㈲サミットベテリナリーサービス 渡部佑悟、石関紗代子、数野由布子、石川弘道
豚繁殖・呼吸障害症候群(Porcine reproductive and respiratory syndrome:PRRS)は、妊娠豚の死流産や虚弱子分娩などの繁殖障害と育成豚の呼吸障害を主徴とする疾病である。今回、PRRSウイルス陰性であった肥育オガ粉農場において、PRRSウイルスの侵入を経験した。その後オールアウトと徹底した洗浄、消毒、乾燥によりPRRSの清浄化を達成し、農場へのPRRSウイルス再侵入を防ぐ目的で、出荷デポの設置などの農場防疫の強化を行ったので、その概要について報告する。